MET ONE センサーの過酸化水素ガス(VHP)耐性

パーティクルカウンター資料集

はじめに

製薬企業の無菌生産環境においては、微生物と製品の潜在的汚染を最少にすることが要求されます。一般的な殺菌方法の一つとして、強い酸化剤である過酸化水素ガス殺菌(Vaporous Hydrogen Peroxide:VHP)があります。VHPの一般的なクリーンルームの殺菌サイクルは、3%のVHP を45分間噴霧して行いますが、このような殺菌が光学式パーティクルカウンター(OPC)に損傷を与える懸念があります。

OPC 内部へのVHPの浸潤により、センサー内部の表面に色褪せや、装着しているミラーの腐食が起こり、センサー内で光学反射を増加させ、誤カウントの原因に繋がります。

MET ONE のリモート式OPC のセンサーへのVHPの影響をより検証するために、ベックマン・コールターではセンサー本体、パーツ、そしてミラーのテストを以下の様に行いました。

内部センサーの表面

  • ベックマン・コールターの特許である光学的な黒いコーティングがセンサー本体と内部の光学部品に施されている。
  • 殺菌容器は、30%の過酸化水素水と純水の水溶液で部分的に満たし、この水溶液により濃度5~6%の過酸化水素ガスを発生させた。VHP濃度はガス検知管で測定した。

センサーの検証方法

  • センサーは殺菌容器の外側に配置し、水溶液の表面から6 mmの所に設置した等速吸引プローブにチューブで接続した。VHPは、真空ポンプを使ってセンサーに暴露した。
  • 殺菌容器は、30%の過酸化水素水と純水の水溶液で部分的に満たし、VHP濃度はガス検知管を使用して5~6%になっていることを確認し、真空ポンプを使ってセンサーに暴露した。
  • センサーは殺菌容器の外側に配置し、水溶液の表面から6 mmの所に設置した等速吸引プローブにチューブで接続した。
  • 72時間連続でVHPに暴露した後、Particle Measuring Systems社(PMS)で比較検証を行った。
  • VHPに暴露したセンサーは、最終評価前にさらに744時間VHPに暴露した。この条件は、VHP殺菌では、45分間、1,090回の殺菌サイクルを行ったことに等しい。

ミラーの検証方法

  • 上記のVHPテストに加え、ミラーを30%の過酸化水素水に浸した。
  • ミラーは、25分間(600時間)この溶液に浸した。
  • 25分後、ミラーを溶液から取り出し、視覚的に調べた。
  • 目視試験の後、校正の変化を確認するため、センサー内に再度ミラーを取り付けた。

結果

センサー

検証前後の比較において0.3 μmと0.5 μmのサイズの粒子をカウントするセンサー性能に違いは確認されなかった。このことは、表1の校正電圧とノイズの測定値が一貫していることから明らかである。

ミラー

  • 図1および図2は、30%過酸化水素液に25分間(600時間)直接浸漬した後のミラーである。
  • ミラーの反射面にはごく僅かな劣化が見られた。
  • 多くの劣化は側面に見られ、反射面に性能へ影響する劣化は見られなかった。

PMSとの比較検証

表2に示す通り、ベックマン・コールターでは、PMS社より厳しい過酸化水素への暴露条件を設定した。

考察

Met ONE 4500,4800,4900,5800,5900,2300 の重要なセンサー部品は、VHPへの耐性があるが、殺菌処理中は、機器の吸入口にキャップを付けることを推奨する。また、米国FDAおよびEUのGMPは、殺菌中のサンプリングを義務付けていない。

注意事項

  • MET ONE 2300は、VHPなどの過酸化水素への耐性を確認していないポンプやフィルター、その他の部品を含んでおり、またこれらの部品は劣化する恐れがあります。
  • すべての機器は電気部品を使用しており、それらはVHPのような酸化剤に暴露すると腐食などのダメージを受ける事があります。機器へのダメージを最小にするため、パーティクルカウンターはクリーンルームの外に設置し、延長チューブで壁を通過させ、クリーンルームに接続するなどの対策を取ってください。
  • すべてのMET ONEリモート式の気中パーティクルカウンターには1年保証が付いており、モデル4500のみ2年保証が付いています。VHPまたは他の酸化剤環境下で使用した場合は、センサー保証は1年に限られます。酸化力のある化学薬品への暴露による電子部品の腐食は、すべての気中パーティクルカウンターにおいて保証の対象外となります。
日付 校正電圧(V) ノイズ 0.3 μmピーク電圧 0.5 μmピーク電圧
21-APR-2006
1.000 17 34.65 mV
335.26 mV
25-APR-2006 0.998 17 34.65 mV 334.52 mV
1-MAY-2006 0.950 17 34.40 mV 337.45 mV
31-MAY-2006 0.952 17 34.65 mV 335.01 mV

図1

図1

 

図2

図2

表2

    ベックマン・コールター PMS
センサー
一般的なVHP殺菌サイクル
1,090回
96回
ミラー
30%過酸化水素水への浸漬
25日
2.67日

 

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