新機種Avanti J-15遠心機の短時間減速プロファイルによるワークフロー効率の向上

Content Type: Application Note
Author: Julia P Luciano-Chadee | Beckman Coulter, Inc., Indianapolis, IN 46268

遠心分離において、時間、温度、および速度は基本要素である。プロテオミクスを利用した生物学的製剤の研究がますます進歩している一方で、タンパク質サンプルの精製および調製には依然として時間を要し、複数の手間の多い工程を必要とする。研究者は、高品質のサンプルを迅速かつ効率的に調製するために努力している。一方で、多くの研究室では、マルチユーザー環境において使用効率を最大限に高めることのできる装置が見つからず課題を抱えている。ベックマン・コールターの新機種Avanti J-15シリーズの遠心機は、サンプルの品質を損なうことなく、研究者が求める効率性に対応するよう設計されている。Ultra Harmonic Technologyを搭載したAvanti J-15シリーズは、何度も遠心を必要とするワークフローにおいて理想的な遠心機となっている。1回のワークフロー実施における装置使用時間を最大10%短縮可能であり、この時間節約によって研究室の資源を最大限活用できる。

卓上遠心機はほとんどの研究室で使われており、対象となるアプリケーションの範囲は非常に広い。細胞などの回収やペレット形成といった初歩的なもの、厳密さを必要とするタンパク質濃縮等に至るまで、遠心機は研究室の日々の業務において頻繁に使用されている。ほとんどの時間、遠心機は2人以上で使用されることに加え、複数のプロトコルが使われることが多いため、マルチユーザーでも利用しやすい装置が求められている。従来の卓上遠心機は、主に時間、温度、および速度を設計の柱としてきたが、ベックマン・コールターは、Ultra Harmonic Technologyを搭載することで加速・減速効率を最大限に高めるという、新たな設計思想に基づいたAvanti J-15シリーズ遠心機で市場に革命を起こしている。

Ultra Harmonic Technologyは、加速および減速プロファイルをより高速なものにすることで、サンプルの質を損なうことなく、遠心にかかる時間を最適化している。遠心機が回転している状態からブレーキをかけて完全に停止するまでの時間は、ワークフロー全体の時間に加算されることになる。何度も遠心を繰り返す必要のあるプロトコルでは、各サイクルの時間短縮により、ワークフローを大幅に効率化できる場合もある。ここでは、新機種であるAvanti J-15遠心機の相対的な時間効率を、従来機であるAllegra 14R遠心機と比較するための実験を行った。

BSA(カタログ番号A7906-10G)はSigma-Aldrichより購入した。Amicon Ultra-4 10K MWCO遠心式フィルタデバイスはMilliporeより購入した。

Avanti J-15R(製品番号B99517、B99516、B99515、B99514)とこの遠心機に装着したJS-4.750ロータ(製品番号B77580)、およびAllegra 14R(製品番号A99465)とこの遠心機に装着したSX4750ロータ(製品番号392806)は、いずれもベックマン・コールターが提供した。

1xPBSを用いて総量100 mL の1 mg/mL BSAを調整した。タンパク質濃度を確認するため、光路長10mmのベックマン・コールター製DU730紫外可視分光解析システムを用いて、遠心前の溶液の吸光度(OD280)を測定した。

各装置について4,000 × g、10分間の遠心を設定し、最大の加速および減速プロファイルで合計10回の運転を行った。各遠心機には、サンプルを入れたAmiconフィルタを1つずつセットした。各遠心の開始時には、遠心後のインサートに溶液4 mLを加えて混合していき、それぞれの遠心機で合計40 mLのBSA溶液を濃縮した。各運転における設定時間および実際の運転時間を記録した。遠心ステップがすべて終了後、ベックマン・コールター製DU730紫外可視分光解析システムを用いて、各BSA溶液のOD280を測定・記録した。

各装置の運転時間を比較するにあたり、次の基準で時間を記録した:
(1)設定時間、手動入力により10分間に設定
(2)実運転時間、ロータが回転を開始してから完全にロータが停止するまでの時間。
表1にAvanti J-15Rの運転時間を、表2にAllegra 14Rの運転時間を示した。さらに各装置について平均時間も算出した。

Avanti J-15 R (mm:ss)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平均
設定時間 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00
実運転時間 10.49 10:53 10:55 10:54 10:55 10:50 10:54 10:55 10:56 10:46 10:52
表1: Avanti J-15Rの運転時間

 

Allegra 14R (mm:ss)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平均
設定時間 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00 10:00
実運転時間 12:03 12:01 12:02 12:03 12:03 12:02 12:01 12:03 12:02 12:01 12:02
表2: Allegra 14Rの運転時間

Total run time in 10 cycle x 10 min experiment (Avanti J-15R vs Allegra 14R)Avanti J-15Rの運転時間は、Allegra 14Rよりも平均的に1分10秒短かった。最も重要な点は、実験を10回繰り返すと、各運転の累積的な効果が大きな時間の節約につながることである(図1)。Avanti J-15Rは、Allegra 14Rと比較すると10サイクルの実験を12分早く終了している。また全体として時間効率が10%以上向上している。

また本実験では、BSAタンパク質についてOD280の初期値および最終値を測定した。結果は表3の通りであり、BSAの透過係数に基づいて濃度を算出した。調製したBSA溶液の初期濃度は、0.97 mg/mLであった。各条件について合計で40 mLの溶液を混合して使用したため、38.9 mgのBSAタンパク質が濃縮されたことになる。遠心操作終了時、Avanti J-15Rで遠心した濃縮装置から回収されたBSAは36 mg、Allegra 14Rによる濃縮操作で回収されたBSAは35 mgであった。いずれにおいても90%のサンプルが回収され、回収率に差は認められなかった。

 

サンプル 初期OD280 初期容量 初期BSA量 最終OD280 最終容量 最終BSA量
Avanti J-15R 0.642 40 mL 38.9 mg 16.461 1450 μL 36 mg
Actual Time 0.642 40 mL 38.9 mg 15.034 1550 μL 35 mg
表3:遠心式によるBSA回収

遠心機を使用したタンパク質濃縮など、複数のステップを短いサイクルで繰り返すような実験プロトコルを行っている間、ユーザーは装置を迅速かつ効率的に使用する必要がある。Avanti J-15のUltra Harmonic Technologyを使用することで、ユーザーは実験時間を最大限短縮することができるため、(1)装置の使用効率が高くなることに加え、(2)次の実験ステップへと迅速に進むことができる。このうち後者が特に重要な理由は、サンプルが空気や温度変動に曝されている無駄な時間を減らし、サンプルの品質を保持することができるためである。タンパク質の場合、精製条件の微妙な違いが、構造的に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、タンパク質の構造変化が生じた結果、サンプルが目的の実験に使えなくなり、時間とリソースの損失を招く場合もある。ワークフローの効率化におけるUltra Harmonic Technologyの2つ目の利点は、装置の使用効率が高いため、マルチユーザー環境でも使用・管理がしやすい点である。

ワークフローの効率性は、実験に費やす時間に影響を与えるものであるため、研究者の間では大きな関心事である。本実験では、Avanti J-15を使用すると遠心の各工程の時間短縮効果が積み重なり、結果としてワークフロー全体の大きな時間節約になることが示された。Ultra Harmonic Technologyの特長が、サンプル回収率を損なうことなく、より短時間での減速を可能にしているのである。

Avanti J-15シリーズの注目すべき特長は、精巧な超遠心機並みの加速・減速機能を卓上型遠心機にも搭載したことであり、この機能によって、停止状態から設定速度に到達するまでの時間、およびその逆の動作にかかる時間が短縮されている。Avanti J-15は、この点を重要視して設計されているが、この性能によってサンプルの収量が損なわれることはない。

Avanti J-15は、サンプル回収率と時間効率を優先したい研究室にとって、非常に有用な遠心機である。

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