フローサイトメーターを導入した経緯や導入後の現状について -順天堂大学医学部附属静岡病院-

 

順天堂大学医学部附属静岡病院 静岡県東部地区の基幹病院である順天堂大学医学部附属静岡病院は、血液疾患症例も多く、より迅速な検査を目指してNavios EX*、TQ-Prep システム、PrepPlus 2 システムを導入しました。フローサイトメーターを導入した経緯や導入後の現状について検査室の皆様 (岩﨑 壽代 様、持田 結稀 様、海野 夏美 様、杉山 春香 様、白須 智奈美 様、猪口 明実 様、勝間田 綾香 様、渡辺 祐希 様)にお話しを伺いました。

 

順天堂大学医学部附属静岡病院について

順天堂大学医学部附属病院は、「学是『仁』の精神で人々の生命を尊重する」、「『不断前進』の理念で創造的な前進と改革を進める」、「大学医学部附属病院として、診療・教育・研究の充実を図る」という理念のもと診療・教育・研究を行っています。また静岡県最大の救急救命センターとドクターヘリを有しており、地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、静岡県東部地区の基幹病院として貢献しています。順天堂大学医学部附属病院は全ての診療科を持つ医学部附属の総合病院で静岡県東部において数少ない血液内科を有しているため、様々な血液疾患の症例が集まります。現在、院内でのフローサイト検査数は造血器腫瘍とリンパ球サブセット検査をそれぞれ月に10件程度行っています。外注検査にも月に20件程度の造血器腫瘍検査を依頼しています。

 

検査部の役割と現状

検査部の役割と現状

病院における検査室の役割は、精度管理の行き届いた検査を正確に実施し、結果を迅速に提供することにあります。私たちの病院では血液担当者がフローサイト検査を行っています。検査に関わる人員は総勢7名で、いつだれが検査を行うかといった予定は決めておらず、検査依頼があった際に手の空いている技師が検査を実施しています。フローサイト検査の導入時の目標は、「全員が同じようにフローサイト検査を行えること」だったため、担当技師全員で協力しながらフローサイト検査に取り組みました。現在では全員が同じようにフローサイト検査に携わることができていると思います。現状では院内でのフローサイト検査以外に外注検査も行っていますが、白血病や造血器腫瘍検査については、末梢血や骨髄穿刺液の形態的所見をみて、芽球が多く白血病やMDSEB2(MDS with excess blasts-2)を疑うもの、悪性リンパ腫などの結果を急ぐものについては院内検査を実施しております。骨髄穿刺液の採取は午後に実施していますので、フローサイト検査も同じく午後に実施しています。リンパ球サブセット検査は毎日検査依頼があるわけではありませんが、業務が落ち着く午後にまとめて検査を実施しています。将来的には全てのフローサイト検査を院内で実施できるようにと考えています。

 

フローサイトメーター導入の経緯

フローサイトメーターを導入した経緯ですが、もともとリンパ球サブセット検査、白血病・造血器腫瘍検査、CD34陽性造血幹細胞測定検査の全ての検査を外注で行っていましたが、血液内科の医師が増えたことや外来患者数が増えたことにより血液内科の規模が大きくなり、また近隣病院の血液内科が減少したことによって当院での血液疾患の検体が大幅に増加しました。そのため結果を急ぐような白血病検査や悪性リンパ腫などの検査も増えていきました。そうした経緯から臨床医からぜひ院内でフローサイトの検査を行ってほしいとの強い要望がありました。外注検査では結果の確認に時間がかかり、確認が翌週になることもありました。院内検査を実施することで当日に結果が出るようになり、患者様にとっても医師・検査技師にとってもフローサイトメーターの導入は価値が高いと考えフローサイトメーターの導入に至りました。機器購入に関しては、血液内科の支援を受けることができたため、スムーズに導入できました。

 

フローサイトメーター導入後について

そもそもフローサイトを導入する前は、全て外注検査で行っていたため、自分たちが院内検査をするとは全く考えていませんでした。

そのため導入する際には、まず「フローサイトって何だろう」、「どのように検査を行っているのだろう」というところから始まった技師もいました。正常な細胞がどのようなパターンを示すのかということも分からない状況です。そこからベックマン・コールターによるフローサイトメトリーの講習会に参加して、機器の基本的な操作やデータの見方、例えばフローサイトの結果で正常細胞が示すパターンなどを学習していきました。まずは自分の中で、フローサイト検査がどういったものであるかを認識し、この検査を今後行っていくんだという意識を持つことから始めたと思います。実際にフローサイトを導入する前は、外注検査は行っていましたので、フローサイトの結果を目にすることはありましたが、どのようにゲートをかけて細胞集団を特定しているのか、この結果をどのように解釈するかなど詳細に結果を確認したことはなく、返ってきた結果をただ患者情報に紐づけるだけでした。基本的なことを理解していなかった状態です。フローサイトについての知識はほぼなく、講演会等で資料を集める程度でした。しかし実際にフローサイトを導入するとなると、今まで理解していなかったフローサイト検査の結果を詳細に解析する必要があり、また実際にフローサイト検査を実施する必要がありました。そのため導入すればやらなければいけないという状況の中で一からフローサイトメトリーの勉強を進めていきました。今でも難しいと感じることはありますが、形態的所見を確認してゲート位置を決めたりしながら実践で学んできている状態です。院内検査であればデータは手元にありますので、再解析することも可能です。日々のデータから勉強して知識を増やしています。また骨髄像の見方の勉強も始め、疾患とパターンを紐づけながら少しずつ学んでいます。データ解析は日々の積み重ねによって現在のルーチンワークにのせられたと考えています。また、フローサイトの結果についてはまず自分たちで確認するということを心がけています。必ず、形態的所見を確認してからフローサイト検査に入るようにしています。現在、骨髄穿刺液の検査依頼には全てフローサイト検査の依頼が付いてきます。形態的所見を確認後、必要な場合は医師と相談し、フローサイト検査が必要か判断している状況です。末梢血の場合は、形態をみて必要な場合に検査を行い、その後医師と相談して検査オーダーを出していただくようにしています。

疑わしい検体は、すぐにフローサイト検査を実施しますのでカンファレンスを行っている間に結果が出るなど、迅速検査ができていることに臨床医からとても満足しているという言葉をいただいています。また一部外注検査に出しているものもありますが、全てのフローサイト検査を院内で行ってもいいのではといった言葉もいただいています。現状全ての検査を取り込むとなると、今の人員では厳しいと考えています。しかし、所見や形態から検査対象の絞り込みができるようになってくれば、院内検査で必要な検査を迅速に行っていけると考えていますし、そうなることを目指しています。今後はSOPの作成も行っていきたいと考えています。

 

フローサイトメーター導入後の感想

フローサイトメーター導入後の感想

フローサイトメーターを導入する前は、全ての検査を外注検査に依頼していたため、導入後に業務が増えてしまう点や、外注検査の結果は一部の検査員しか見ておらず、結果を確認していない技師もいたため、知識や検査体制への不安はありました。実際にフローサイトメーターを導入してみると、もちろん業務量も増え、フローサイトに対する知識を増やしていかなければいけないというところでは大変な部分もありました。現在でもデータ解析については、毎回技師同士で結果についてやり取りしながら勉強しています。今までなかった検査を取り入れるので大変ではありました。しかし機器操作だけでいえば5回目には順調な検査が行えるようになったように思います。人にもよりますが想定より早くルーチン検査に移れたなと感じている者もいます。新しい検査を取り入れたので、導入時には大変だなと思うことも多くありましたが、何度も検査を行っていくうちにルーチンワークに溶け込んでいった印象です。経験を積むことは大事だと実感しています。現在は検体採取日が決まっています。検査日以外で緊急検体が出た際には追加検査に大変さを感じることもありますが、通常の検査日はフローサイト検査が日常のルーチンワークとなっています。

フローサイトを導入して良かったと思うことは、やはり、治療や処置を早く始めたいと希望されている患者様に、院内でフローサイト検査を行うことでその結果から疾患を予想して迅速に医師が処置や治療を行えるようになったことだと考えています。また結果について医師とディスカッションする機会も増えました。外注検査と違って、フローサイト検査のデータはいつでも見直しができますので、医師が気になったところを再解析するなど一緒に解析を行いながらデータを確認することも増え、そういったこともフローサイトを導入して良かった点だと考えています。また、形態的所見を確認した際に異常細胞等があればフローサイト検査を行うこともありますので、迅速な治療に役立っていると思います。実際にCLLの患者様で末梢血液像にて核に切れ込みのあるリンパ球が認められ、検査室内でもどこに分類するべきか判断に苦慮する症例がありました。長期間無治療かつ経過観察中である患者様の急激な白血球増加で形態的にも細胞に異常が認められたため、形質転換を来している可能性を考える必要性があると考えられました。そこで、担当医と相談しフローサイト検査を実施しました。その結果、形質転換は否定され迅速な対応により診療上有用であったとコメントをいただきました。

 

今後の展望

現在は、まだフローサイト検査を実際に臨床側へ報告するようになってから数か月しかたっていないため、経験と知識が少なく外注検査と院内検査の両方を実施していますが、今後はより一層知識を深める努力をし、全て院内検査にできるようにしていきたいと思っています。また年に2~3件しかないCD34陽性造血幹細胞測定についても、外注検査ですと結果を確認するまでに時間を要してしまうため、迅速に結果を返し、臨床医の助けになるよう院内検査を目指していきたいと考えています。

メーカーへの要望としては、今後、新人が増えた際には新人教育も行っていかなければなりません。そのためには私たち自身のスキルも磨かなければならないと考えています。そのためにも定期的な勉強会等をお願いできるとありがたいと思います。

順天堂大学医学部附属静岡病院 検査室の皆様

順天堂大学医学部附属静岡病院 検査室の皆様
左から 岩﨑 壽代 様、持田 結稀 様、海野 夏美 様、杉山 春香 様、白須 智奈美 様、猪口 明実 様、勝間田 綾香 様

*Navios EX
 ハイエンドクリニカルフローサイトメーター
 医療機器製造販売届出番号:13B3X00190000050
 一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器)

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