劇的に変わったワークフロー -AQUIOSによるCD34陽性細胞数測定-

AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター
導入インタビュー

金髙 克成 先生
大阪市立総合医療センター医療技術部臨床検査部門輸血検査室
AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター 

 

大阪市立総合医療センターは、1063床の許可病床数、25の診療グループ、46の診療科を擁する大阪市の中核病院です。また「地域医療支援病院」として地域医療の中心的役割も担っております。他にも「地域がん診療連携拠点病院」、「小児がん拠点病院」、さらに「がんゲノム医療連携病院」にも指定されています。

大阪市内最大の病院である大阪市立総合医療センター輸血検査室は2023年にAQUIOS全自動クリニカルフローサイトメーター*(以下、AQUIOS)を導入しました。なぜAQUIOSを選定したのか、ご施設のワークフローにおける問題点にどのように貢献できたのかを、大阪市立総合医療センター医療技術部臨床検査部門輸血検査室の金髙克成様にお話しを伺いました。

 

輸血検査室の現状

AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター

当院輸血部では移植医療の一端として、末梢血幹細胞採取(PBSC採取)を行っています。末梢血幹細胞移植(PBSCT)の主な適応疾患として、成人ではリンパ腫等の造血器腫瘍、小児では神経芽腫や肉腫等の固形がんが多く、対象は自家移植目的の患者、同種移植としての患者ご家族および、バンクドナーが該当します。当院は骨髄・末梢血幹細胞採取・移植認定施設であり、バンクドナーからの採取も行っています。PBSC採取の件数は月に平均2例、多いときは月に3~4例の依頼がありますが、少ないときは全く依頼のない月もあります。その中で、ほとんどの依頼が自家移植であり、全体の8~9割を占めています。

治療のための大量化学療法を施行する前には、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を用いて骨髄に働きかけ、骨髄中の造血幹細胞を末梢血管に誘発させてPBSC採取を実施します。患者さんの病状によってはご自身のPBSC採取ができない場合があり、その時はご家族などの血縁ドナーやバンクドナーからの同種移植が適応となることがあります。同種移植は自家移植と比較して、移植関連合併症のリスクがありますが、GVL効果(移植片対腫瘍効果)等、同種免疫反応の効果が得られることがあります。

PBSC採取の当日は、初めに早朝採血した末梢血のCD34陽性細胞数測定を実施します。(造血幹細胞はCD34陽性となります)その際、CD34陽性細胞数が50個/μL以上あるかどうかが採取実施の目安になります。血液成分分離装置を用いてアフェレーシス(細胞分離処理)を行い、PBSC採取を実施しますが、血液処理量は2TBV(TotalBloodVolumeの2倍量)であり、過去の経験から末梢血中に50個/μLあれば概ね1回分の治療ができるCD34陽性細胞を採取することができます。しかし、年齢(特に高齢者)や個人差により、末梢血中のCD34陽性細胞数が少ない方の場合は、50個/μLに満たなくても採取を実施することがあります。その反面、小児では採血困難であり、体も小さく処理量が少ない為、末梢血中に50個/μL程度のCD34陽性細胞が確認できても、あえて採取せず翌日や翌々日に延期して、末梢血中のCD34陽性細胞が3桁、およそ100個以上まで上がってくるのを待ち、確実に採取できるようにしています。過去には、採取した造血幹細胞が治療必要量に満たなかった場合、3日連続でアフェレーシスを実施することもありました。しかしながら、3日連続でアフェレーシスを実施することは患者さんへの負担も大きくなる為、できる限り1回で済ませられるよう、PBSC採取前には必ず末梢血のCD34陽性細胞数測定を実施し、その日にアフェレーシスを実施するかどうかの判断をしています。

PBSC採取の予約は、担当医が目標とする採取日の約2週間前に入ります。目標採取日の前日もしくは2日前頃から早朝採血でのCD34陽性細胞数測定オーダーが入り、最適な採取日の微調整を行っています。

PBSC採取当日の流れは、まず初めに早朝採血での患者CD34陽性細胞数測定検体が輸血部へ届きます。当院はオーダリングシステムを採用しており、到着確認操作を行ってから検体処理を実施します。装置の立ち上げ、コントロール測定、及び患者検体の測定までおよそ1時間30分ほどで完了します。その後、検体のCD34陽性細胞数測定結果を担当医師へ伝え、PBSC採取を実施するかどうかの指示を仰ぎます。PBSC採取の指示があれば、血液成分分離装置を起動させ、PBSC採取用回路の取り付け及び生理食塩水を用いたプライミング操作を行います。採取前準備は以上で完了です。ここからPBSC採取に当たって、患者さんと血液成分分離装置のルート接続を行っていきます。PBSC採取時は医師が事前に患者の採血ルート及び返血ルートを確保しており、血液成分分離装置との接続も医師が行います。接続完了後に血液成分分離装置をスタートさせます。採血処理量は患者の2TBVなので採血速度にもよりますが、およそ3~4時間かかります。処理中に確保できるPBSC量は少なくて40mL、多いと200mL以上になります。これは患者さんの体重(処理量)や白血球の数で増減します。輸血部担当技師は採取開始から終了まで立ち合い、装置の稼働状況やPBSC採取状況、また患者さんの状況をリアルタイムで確認し、問題が生じればいつでも担当医師へ連絡ができるようにしています。予定の採血処理量(2TBV)に達したらPBSC採取終了になりますので、血液成分分離装置内に残っている患者血液を患者さん自身へ返血します。返血が全て完了すれば担当医師が接続ルートを外して処理終了です。輸血部担当技師は採取終了後のPBSC採取バッグから0.5mLほど取り出してAQUIOSを用いたCD34陽性細胞数測定と全有核細胞数(TNC)測定を行います。同時刻に並行して採取したPBSCの凍結保管作業も行います。

私たちの強みは、PBSC採取からCD34陽性細胞数測定、凍結保管処理及び保管管理までを輸血部単独で一元化して完了させられることです。他施設では採取を臨床工学部が行い、CD34陽性細胞数分析は検査部で実施するところもあるようです。私たちの施設では輸血部が全工程を行う為、連携ミスのリスクはほとんどありません。しかしその反面、検査人員は大きな課題となります。特に休暇や夜間勤務対応などで人員が限られる場合に、PBSC採取の依頼が入ることもあり、人員調整に苦労しています。

我々の本業は輸血業務である為、日々の輸血業務を行いながら、追加でPBSC採取やCD34陽性細胞測定を行うことになります。実際、PBSC採取は毎日行う業務ではない為、兼務という形で実施しています。このような中でも、円滑に運用できるよう部内要員に対する指導・育成も重要と考えています。

 

AQUIOS導入のメリット

AQUIOSを導入することで劇的に変わった点は、抗体反応や溶血反応などの用手法の部分です。以前の機器ではサンプル調製がマニュアル操作であったため、抗体反応時間や溶血反応時間はタイマーをセットして反応時間を管理していましたが、他の輸血業務も同時に行うため、タイマーが鳴ったタイミングでCD34陽性造血幹細胞数測定に戻れないことがありました。そのため測定が滞ることもありました(図1)。
CD34陽性造血幹細胞数測定にかかる総時間は、滞りなく連続して作業が行えるならば、今も昔も大きな変化はありません。しかし実際はタイミングが合わず、検査が遅れ、結果報告が遅くなることがありました。反応時間もメーカー推奨の正しい時間で実施できないことがあり、正確な結果を求める中で気になる点でした。しかし、新しく導入したAQUIOSは、サンプル調製から測定までを一連の流れでAQUIOSのみで実施するため、検体をセットした後は、時間が来れば次の作業に自動的に進んでいきます。そのため、検査の滞りがなくなり、手順通りの作業が可能となり、ワークフローも円滑になりました。検査時間や検査員の精神的負担も格段に軽減され、CD34陽性造血幹細胞数測定を安心して任せられるようになったことは非常に大きな利点です。率直にAQUIOSを導入してよかったと思っています。

また、以前のように機器を立ち上げた際に毎回ビーズを流して蛍光補正を行う作業もなくなり、作業面・コスト面でも改善されました。マニュアル操作の時間が減少した分、他の作業が円滑に進むようになりました。ピペットの校正についても、以前は必要であり、これを一部院外で実施していましたが、これらの手間も省かれ、業務負担が軽減されました。
新人教育についても、経験が浅いとサンプリング手法が未熟で経験を積む必要がありましたが、AQUIOSによるオートメーション化により改善されました。輸血部の人員は6名で、毎日採血業務に1名が必要なため、実質5名で業務を行います。全員が輸血業務を行えば、造血幹細胞採取が入っても問題ありませんが、全員が揃うことはないため、苦慮していましたが、AQUIOSの導入で大きく改善されました。
輸血部では緊急で血液製剤を用意しなければならない状況があります。そのため、CD34陽性造血幹細胞数測定検査よりも輸血業務を優先しなければならない場合があります。こうした状況でも、AQUIOSを使用することで検査の滞りがなくなり、検査担当者の負担も軽減されました。検体をAQUIOSにセットするだけで、その後は機器に任せられるため、輸血業務に集中でき、人員が少ない時には特に効率的です。

AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター 
図1. 用手法 vs AQUIOS

 

機器操作トレーニングについて

CD34陽性造血幹細胞数測定検査は標準操作マニュアルに従って正しく操作できることが独り立ちの条件です。操作マニュアルに従えば大きなミスは防げます。不安がある場合は、熟練の担当者とともに操作を行います。
以前の機器では操作ステップが難しく、新人の独り立ちには時間がかかっていました。しかしAQUIOSは、サンプル調製を機器内で行ってくれるため、手順通りに操作すれば完了するシンプルな形となり、独り立ちのタイミングも早くなりました。フローサイトメーターの習得にかかる時間が大幅に改善されたと感じています。

 

AQUIOS選定理由

機種選定の際には、AQUIOSの全自動機能に驚きました。機種選定の決め手は全自動で行えることでした。
一般的なフローサイトメーターでは、サンプル調製作業などのマニュアル操作があり検査スタッフへの負担が大きいため、AQUIOSを導入することで検査スタッフへの負担軽減は大きな選定理由となりました。様々なフローサイトメータがありますが、我々が使用するにはオーバースペックで、良い機器というだけでは購入はできませんでした。AQUIOSは一般病院に合うスペックで扱いやすいため、選定の決め手となりました。

AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター
AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター

今後への期待

AQUIOSは全自動で測定から結果までの一連の操作を行ってくれます。しかし、そのアプリケーションはリンパ球サブセットCD34陽性造血幹細胞のみです。今後CAR-T検査等のアプリケーションへの拡がりにも期待しています。

 

*製造販売届出番号:13B3X00190000048  AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター 一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器)

 

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