コールターカウンターを用いた薬剤耐性菌の測定

院内感染を引き起こす薬剤耐性黄色ブドウ球菌の薬剤耐性構造を物理的特性からとらえる

 

黄色ブドウ球菌の細胞壁は、抗生物質によってわずかに厚くなることがあります。細胞壁が厚くなることで、薬剤効果が内部まで浸透しなくなり、抗生物質が効かなくなります。このように、抗生物質の耐性を獲得した黄色ブドウ球菌を、薬剤耐性黄色ブドウ球菌といい、これまでは、この細胞壁のわずかな違いを分析することができませんでした。
しかし、このようなブドウ球菌の細胞壁のわずかな違いは、細菌の体積を計測している精密粒度分布測定装置 Multisizer4eを用いることにより、簡単に、そして正確に分析することができます。Multisizer 4eは世界の標準法であるコールター原理(電気的検知帯法)を用いており、測定範囲は、0.2 ~ 1,600 μmです。本稿では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とバイコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)のサイズの違いをMultisizer 4eで分析した結果を紹介します。

 

測定条件

測定装置名:  Multisizer 4e(電気的検知帯法 精密粒度分布測定装置)
サンプル:   薬剤耐性黄色ブドウ球菌
分散媒:    電解液
測定範囲:   0.4 ~ 12 μm(アパチャー20 μm使用)
使用目的:   薬剤耐性黄色ブドウ球菌の粒子サイズの確認

 

測定結果

2種類の薬剤耐性黄色ブドウ球菌MRSAとVRSAを、図1 の写真に示しています。VRSAには細胞壁の厚さにわずかな違いがあり、この差は粒子径で約0.06 μmでした(電子顕微鏡写真は裏面の論文を引用)。

 

図1. 薬剤耐性黄色ブドウ球菌 MRSAVRSA のサイズ分布

 

サンプル 粒子数(個数/mL) 5 μm以上の粒子数(個数/mL)
MRSA 1.022 2.96×108
VRSA 1.088 2.83×108

表1. 薬剤耐性黄色ブドウ球菌 MRSAVRSA の平均粒子径と菌体濃度

 

 

Multisizer 4e について

測定原理:     電気的検知帯法
測定範囲:     0.2 ~ 1,600 μm
最大カウント数:  500,000個
使用可能溶媒:   水、極性有機溶媒に対応

 

特長

  • 世界の標準法であるコールター原理(電気的検知帯法)を採用
  • 粒子の体積を計測しているため、粒子の微小な変化でも検出可能
  • 個数、体積、面積の粒子径分布を測定
  • カウントする際に、粒子サイズをみているため、悪影響を与える凝集粒子が無いかの確認が可能
  • GMPに対応

原理

粒子が検知帯(アパチャー感応領域)を通過する際に生じる、2電極間の電気抵抗の変化を測定します。電解液溶液中に懸濁させた粒子が、バキュームによりアパチャー(細孔)の検知帯を通過する際に、粒子体積分の電解液が排除されます。この排除された電解液の体積を電圧パルスとして測定します。このパルスの大きさが粒子体積に、パルスの発生数が粒子数になります。これによって、粒子の正確な体積から粒子径(粒度分布)と粒子数を測定することができます。

 

† Longzhu Cui, Hiroko Murakami, Kyoko Kuwahara-Arai, Hideaki Hanaki, Keiichi Hiramatsu. Contribution of a Thickened Cell Wall and Its Glutamine Nonamidated Component to the Vancomycin Resistance Expressed by Staphylococcus aureus Mu50. Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Sept. 2000, p2276-2285, DOI: 10.1128/AAC.44.9.2276-2285.2000

 

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