Vi-CELL BLUの計数値をVi-CELL XRに素早く一致させるための有効な方法
生死細胞オートアナライザーVi-CELL BLUは、プレート対応になったことにより、様々な培地で培養した、あるいは異なる条件で実験した多サンプルの細胞を解析できます。
プレートを使う用途の一つに、Vi-CELL BLUとVi-CELL XR プレートを使う用途の一つに、Vi-CELL BLUとVi-CELL XRの数値合わせ込みがあります。Vi-CELLL XRで得られた細胞濃度、生存率の計測結果と同等レベルにVi-CELL BLUの計数を合わせ込むためにプレートを利用すると、最適なセルタイプを迅速に探し出すことができます。
Vi-CELL BLUの初期セルタイプを使えば、一般的によく使われる細胞種の計測において、Vi-CELL XRと比較的近い値を示します。しかし、 特殊な細胞の計測の場合には、両機器間の数値を一致させるために微調整を行った方がよい場合があります。
以下に示す方法は、計数値に関係する任意のパラメータを効率的に設定することで、素早いセルタイプの最適化を行うことを目的としています。この方法を使えば様々な統計解析を使って計測を評価する必要がありません。
実験条件
8個のセルタイプをあらかじめ作成しました。作成の基になるセルタイプは、既存のMammalian Cellを使いました。それぞれの設定値は以下に示します。
セルタイプ | MT01 | MT02 | MT03 | MT04 | MT05 | MT06 | MT07 | MT08 |
最小直径 (μm) | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 |
最大直径 (μm) | 20 | 40 | 20 | 40 | 20 | 40 | 20 | 40 |
画像枚数 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
セルシャープネス | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 |
最小真円度 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
クラスター分離度 | High | High | High | High | Low | Low | Low | Low |
アスピレーション回数 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 |
生細胞スポット ブライトネス (%) |
40 | 40 | 90 | 90 | 40 | 40 | 90 | 90 |
生細胞スポット エリア (%) |
5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
混合回数 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 |
この検証において、 3個の重要なパラメータ、最大直径、生細胞スポットブライトネス、およびクラスター分離度を調整しました。各パラメータにおいて、高値と低値の設定に使いました。これは各パラメータの高・低設定が、計数値の変動へどのように影響するか評価するためです。この方法で8通りの組み合わせを評価しました(96ウェルプレートは、1 行に12サンプル分注できるため、合計8セルタイプを評価できます)
96ウェルプレートに6 × 106cells/mLのCHO細胞を分注しました。その後、行毎に同じセルタイプで解析しました。なお、サンプル間の計測時間差を考慮し、測定はカラムモード(列毎に解析します)で行いました。この検証は3台の Vi-CELL BLUで行いました。
図1. 検証に使うプレートの解析レイアウト
結果
測定結果はExcelでエクスポートし、そのデータを使ってピボットテーブルを作成しました。結果はシンプルな高・低グラフとしてプロットされ、異なるセルタイプ設定による細胞濃度、生存率、平均細胞直径の変化を調べました。
図2. 高・低プロットによるセルタイプの評価(Viable Spot Brightness(VSB):生細胞スポットブライトネス)
細胞直径とクラスター分離機能を変更したときには、細胞濃度が大きく変化しましたが、生存率には、ほとんど影響がありませんでした。生細胞スポットブライトネスは予想したように、生存率に最も影響を与えました。
上記のプロット図から、どのパラメータを変更すると、どの計測結果に影響が及ぶのかを推測する指標になります。
検証の目的がVi-CELL XRの計数に合わせ込むことを意図した場合、この評価方法は非常に有効です。なぜなら、上記のデータを取得すると同時に、Vi-CELL XRでも同じサンプルを計測するため、両機器のデータを比較することで効率よく数値の合わせ込みが可能になるからです。 このことを証明するため、3台のVi-CELL XRを使い、既存のセルタイプであるCHO細胞を使って10サンプル計測しました。
検証の結果は以下に示します。異なる設定のセルタイプを使ってVi-CELL BLUで計測した結果(棒グラフ)、Vi-CELL XRで 得られた計数平均値(ライン)に合うセルタイプ設定が見つかりました。
図3. 異なるセルタイプによるVi-CELL BLUの計数と既存セルタイプを用いたVi-CELL XRの計数値との相関
Vi-CELL XRの計測結果と最も近いセルタイプは、
これまでの結果から、 細胞計数時に最も重要な測定項目に注目した場合、セルタイプ MT02がVi-CELLXRとよく一致しています。セルタイプの調整前に、個々のパラメータと測定項目との相関を知っておくことは、微調整を行う上でとても役に立ちます。例えば、セルタイプ MT02の最大直径をわずかに小さくすることで、さらにVi-CELL XRの数値に合わせ込むことができるからです。
結論
Vi-CELL BLUのプレート機能を使うことによって、1 回の実験で素早くVi-CELL BLUとVi-CELL XRの計数合わせ込みを行うことができます。プレートを使った解析は、上記以外にも、様々な実験をデザインすることが可能であり、また、その実験に十分な試行回数で評価できるため統計的な信頼も増します。
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生死細胞アナライザー Vi-CELL BLUは、細胞のサンプル染色から計数・生死判定に至るプロセスを自動で行います。少量・大量の細胞培養液中の細胞を正確に計測し、研究から製造スケールまで対応します。 |