森田 那奈架 先生
国際医療福祉大学 成田保健医療学部医学検査学科
国際医療福祉大学では医療福祉において多彩なエキスパートを育てることを基本理念とされております。
そのような校風をお持ちの国際医療福祉大学、成田保健医療学部医学検査学科で学生育成の為、 フローサイトメーターを学生実習に取り入れられ、また、ご自身のご研究でもフローサイトメーターを ご使用されている森田 那奈架先生にお話を伺いました。
実践的教育で未来の臨床検査技師を育成
国際医療福祉大学では、臨床検査技師の育成において、実際の臨床検査の現場を見据えた教育を重視しています。学生には、機器に触れる機会や臨床データの解釈を考えさせることを重視し、特に洞察力も持った臨床検査技師の育成を目指しています。
フローサイトメーター(FCM)は、リンパ球サブセット解析や造血器腫瘍の病態を把握する上で重要な機器であり、臨床現場では欠かせない検査のひとつです。しかし、FCM解析手法の習得やデータの解釈には時間を要するため、学生が難しく感じることもあります。そのため、蛍光色素やCDマーカーの選択による検査結果の変化を学ぶために、学内実習や卒業研究を通じてなるべく多くの機会を提供しています。
私が学生だった頃の機器は機器操作を覚えることも大きな障壁となっておりましたが、学生には、将来の実務に役立つデータ解釈について多く議論してもらいたいと考えており、CytoFLEXは従来のフローサイトメーターに比べて簡便で、感覚的ないわばスマートフォンを操作かのようにデータパターンを拡大/縮小が可能で、感度調整やコンペンセーションでは、数値の入力だけでなく、感度を視覚的に調整すること ができる点が魅力です。また、CytoFLEXのソフトウエアは学生のPCにもインストール可能で、取得データの再解析を自由に行えます。これにより、ゲーティングの結果の変化を体感し、データ解析について考える機会をより多く提供できていると思っています。
CytoFLEXをもちいたディスカッション形式の学生実習
学生様のコメント
森田先生はサンプル処理の方法からデータ解析についてまで親切かつ丁寧に教えてくださいます。実際フローサイトメーターのデータを理解できているか不安でしたが、解析の度、先生が指導してくださるので、データの読み方の理解を深めることができました。また、フローサイトメーターについて理解が深まったことで、実習などで友人にも解説することができました。このように、学内で早くからフローサイトメーターを触れられることは私たちの大きなアドバンテージとなると感じました。
私が大学4年生のときに臨床と研究に強い関心を抱き、臨床検査技師として働きながら社会人大学院生として修士課程進学することを決意しました。大阪で病院勤務をするかたわら土日や有給休暇を活用して愛知県の藤田医科大学で研究に励む日々でしたが、がん研究を進める中で、がん細胞だけでなく宿主の免疫細胞にも興味を持つようになり、臨床検査技師としてのやりがいを感じる一方で、生命の不思議さに魅了されていきました。
博士後期課程では、星雅人先生と手塚裕之先生(藤田医科大学)のご指導のもと、「敗血症におけるCD8+制御制T細胞(CD8+Treg)の機能解析」をテーマに研究を進めました。
また、現在は竹内啓晃先生(本学医学検査学科)のご指導のもとで、ピロリ菌から放出される「細胞外小胞」に関する研究に取り組んでいます。
敗血症におけるCD8+制御性T細胞(CD8+Treg)の機能解析
従来はCD4+制御性T細胞(CD4+Treg)が主に免疫抑制を担うと考えられてきましたが、近年の研究によってCD8+Tregも同様に免疫抑制に関与していることが明らかになってきました。さらに、がんや自己免疫疾患等の一部の疾患ではCD8+Tregの方が高い免疫抑制能を有することが報告されています。しかしながら、敗血症に与える影響については不明でした。そこで敗血症モデルマウスを作製し、CD8+Tregの生体内動態や役割について解明しようと試みました。
私はこの時に初めてフローサイトメーターを使用することになり、研究を通じて、CD8+Tregの免疫抑制効果が敗血症において重要な役割を担うことを発見しました(Fig1)。
現在も進行形でCD8+Tregの免疫抑制効果について調査を続けており、今後、様々な疾患におけるCD8+Tregの役割を明らかにしていきたいと思っています。
Fig 1. 敗血症モデルマウスではCD8+Tregが増加しており、これは敗血症で特有の過剰な免疫応答を制御している可能性が示唆された。実際、CD8+Tregは抗炎症性サイトカインを産生しており、CD8+Tregの移植は敗血症モデルマウスの生存率を有意に改善した。
PMID: 37212786
Morita N et al. Immunohorizons. 2023 May 1;7(5):353-363.
ピロリ菌研究の新たな挑戦:細胞外小胞が担う病原因子
ピロリ菌から放出される細胞外小胞は、ピロリ菌の病原因子を運搬する重要な役割を果たしています。この細胞外小胞は、菌体からだけでなく全身に病原因子を運ぶ役割を担っており、当研究室で注目している病原因子Xも細胞外小胞に内包されていることが明らかになりつつあります。この研究は現在進めている研究であり多くのことはお話することは控えさせていただきますが、ピロリ菌の新たな側面を解明することを目指しておこなっており、このピロリ菌から放出される細胞外小胞は100 nmくらいと推定しています。
CytoFLEXシリーズでVioletレーザーを用いることで80 nmの粒子を測定できる点に着目し、細胞と細胞外小胞の測定を行っています(Fig2)。実際対象となる粒子を検出できることには驚きがあり、私のピロリ菌の研究にはなくてはならないアイテムとなっています。
Fig 2. 菌体膜CytoFLEXデータ
ピロリ菌の培養上清を回収後、超遠心分離によって得られたピロリ菌由来の細胞外小胞をCytoFLEXでフローサイトメトリー解析
私は臨床検査技師の教員としての役割と研究者としての役割を両立させる道を選びました。近年、臨床検査科の学生やその就職先は多様化しており、学生たちがさまざまなことに興味を持ち、積極的にチャレンジすることで、次世代の臨床検査技師たちの新たな道を切り拓いていくことを期待しています。
また、私の研究を通じて学生が研究に対して少しでも興味を持ち、病院の臨床検査のフィールド以外にも多様な職業選択の幅を広げられるようになればと願っています。
CytoFLEX Sは、コンパクトでありがながら、レーザーと検出器数の選択のフレキシビリティが高く、細胞研究に必要なデータを高感度で精度よく取得することができるハイパフォーマンス コンパクトフローサイトメーターです。
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