松本 久幸 先生
野口 依子 先生
神戸大学医学部附属病院 遺伝子検査室
国立大学法人神戸大学医学部附属病院は、高度医療を提供する大学病院として、地域医療の中核を担っています。なかでも遺伝子検査室では、造血器腫瘍の診断や免疫細胞の解析において、以前からフローサイトメトリー検査が行われており、重要な役割を果たしてきました。同室では、多い日には20件以上あるリンパ球サブセット検査を中心に、1 ~ 3名体制の中で遺伝子検査業務と並行しながら柔軟に業務を行っていますが、月あたり60件以上ある造血器腫瘍フローサイトメトリー検査の多くには対応できていませんでした。
ここ数年、検査室の中でもフローサイトメトリー検査を臨床の診断補助としてより積極的に活用したいという声が高まっており、それに対応するためには、複数のマーカーを同時に測定できるマルチカラー解析対応の機器が必要とされていました。そうした運用ニーズを見据え、操作性や省スペース性にも優れたベックマン・コールター社のコンパクトクリニカルフローサイトメーターDxFLEX*(以後、DxFLEX)が導入されました。
今回は、導入の経緯や運用後の変化、今後の展望について、遺伝子検査室の松本 久幸 先生と野口 依子 先生にお話を伺いました。
松本 先生:マルチカラー解析への対応力、操作性、省スペース性を重視し、フローサイトメーターとしてDxFLEXを選定しました。同時に、自動サンプル調整システム CellMek SPS**も導入し、サンプル作成から測定までの流れをスムーズにつなげる体制を構築しました。実際に、CellMekで調製されたサンプルラックをそのままDxFLEXにセットできるため、一連の流れが途切れずつながっていることで、日々の業務を効率よく進めることができています。
野口 先生:測定後のデータはDxFLEXのPCから解析用PCに連携され、解析ソフトウエア「Kaluza」で処理しています。測定中から逐次解析できるため、業務効率が向上しました。
野口 先生:DxFLEXを使用してまず感じたのは、起動から測定開始までの速さと、全体の操作のわかりやすさでした。新人が入った際も、私たち自身でトレーニングを行うことができ、「立ち上げてすぐ測定に入れる」「ソフトが直感的で迷わず操作できた」といった声が上がっており、初期段階からスムーズな運用につながりました。解析には測定用とは別のPCにインストールしたKaluzaを使用しており、パネル測定を継続しながら、パネル内の測定を終えたサンプルのデータ解析を順次並行して進められることで、業務全体の流れがより効率的になっています。Kaluzaのプロット図は見やすく、図の配置も自由にできるため、報告書の作成もスムーズです。視覚的なわかりやすさと操作の柔軟性の両方を実感しています。
松本 先生・野口 先生:装置選定では性能面に加え、設置スペースや環境への適合性も重視しました。
実際に見たとき、「小さい!」と思いました。遺伝子検査機器とのわずかな隙間にも無理なく収まったため、環境を大きく変えることなく導入できたのが良かったです。
装置構成の柔軟性も魅力だと感じました。本体は最大構成3レーザー13カラーで統一されており、アクセスキーによって使用できるカラー数を段階的に選択できる設計になっていると聞いていたので、導入当初からフルスペックでの使用を予定していた私たちにとっても、必要に応じて構成を調整できる仕組みがあること自体が、ユーザーの運用に合わせた自由度として魅力に映りました。
また、導入検討時に他施設へのヒアリングを行った結果、「使いやすい」「臨床検査で問題なく使用できている」といった声も後押しとなり、実機を見ずとも導入を決断することができました。
サービス体制は導入にあたって特に重視していたポイントのひとつでした。ベックマン・コールターは基本姿勢としてサービスサポートに重点をおいていると伺っており、その姿勢に対して信頼を感じ、導入を決めました。実際に導入後も、すぐに連絡がとれて対応してもらえる体制が整っており、その点でも安心して運用が進められています。
野口 先生:マルチカラー運用に対しては、きちんと使いこなせるか不安でしたが、導入後のアプリケーションスペシャリストによるトレーニングは非常にわかりやすく、質問すればその都度丁寧に教えてもらえ、無理なく理解を深めることができました。
松本 先生:サービス対応も早くて、とても心強いですね。委託ではなくメーカーのサービスエンジニアが直接対応してくれる点にも安心感があります。こうした継続的な支援体制があると、今後本格化するマルチカラー解析の運用に向けても、信頼と安心感につながっていると感じます。
松本 先生:サブセット解析を中心に、安定した運用体制がすでに整備されており、前処理から測定・解析・報告まで一連の流れが構築されています。現在は10カラー構成での解析に向けて、さらなるスキルの習得を目指しており、必要に応じてトレーニングを重ねながら、検査体制の充実と知識の定着を図っています。疑問点が生じた際にも個別対応できる体制があるため、新しい運用にも安心して取り組める環境が整いつつあります。将来的には、より高度な免疫モニタリング検査への対応も視野に入れ、日々の運用を通じた基盤づくりが進められています。
ご施設の運用からは、現場でのスムーズな立ち上げからルーチン業務としての定着、そして将来的なマルチカラー解析への取り組みなど、日常検査の中で着実に装置が生かされている姿がみえてきました。
機器の性能と運用性、そして支えるサポート体制が揃うことで、現場に自然とフィットする装置としてDxFLEXは受け入れられていました。目立った劇的な変化ではなくても、日々の検査業務に自然に溶け込み、作業の流れを妨げないことが、現場にとって大きな価値として感じられているようです。
その“ちょうどよさ”が、これからの検査体制においても、長く支持されていく理由なのかもしれません。
DxFLEXは、日々の検査を支える一台として、これからも現場に確実に応えていく存在であり続けると感じられました。
* 医療機器製造販売届出番号:13B3X00190000074
一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器)
販売名:コンパクトクリニカルフローサイトメーターDxFLEX
** 一般的名称:検体前処理装置
医療機器製造販売届出番号:13B3X00190000072
販売名:自動サンプル調整システム CellMek SPS
一般医療機器、特定保守管理医療機器