フローサイトメトリー検査を分割し、測定装置の特長を活かすことで生じる作業効率向上とその先

札幌医科大学附属病院(北海道札幌市中央区)

盛合 亮介 先生

札幌医科大学附属病院検査部 主任技師

 

札幌医科大学附属病院(北海道札幌市中央区)は、「患者さんに信頼、満足、安心していただける安全で質の高い医療を提供するとともに、高度な先端医療の研究・開発に取り組み、人間性豊かな優れた医療人の育成に努め、北海道の地域医療に貢献する」を理念に掲げ、医科系大学附属の総合病院として30診療科、848床の施設を有し、教育研修の場として医師の育成に貢献するほか、高度先進医療や診療体制の整備により北海道民の要望に応えるとともに、遠隔地の多い北海道における地域医療の発展や災害時の受け入れ医療機関として大きな役割を担っています。

検査部では汎用型フローサイトメーターであるNavios(2014年導入)とNavios EX*(2019年導入)に加えて、末梢血リンパ球サブセット検査専用フローサイトメーターとしてAQUIOS**を追加導入しました。 汎用型フローサイトメーターと末梢血リンパ球サブセット検査専用フローサイトメーターを所有することの利点について検査部主任技師の盛合 亮介 先生に話を伺いました。

* 医療機器製造販売届出番号 13B3X00190000050
Navios EX ハイエンドクリニカルフローサイトメーター
一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器)

**AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター
医療機器製造販売届出番号:13B3X00190000048
一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器)

 

AQUIOS導入で検査部の作業効率が劇的に向上

盛合亮介先生

「AQUIOS導入で人員が増えたように感じられるほどに検査部の作業効率向上を実感している」と盛合 先生は言う。

札幌医科大学附属病院検査部では年間フローサイトメトリー検査(FCM検査)を約1200件実施しています。内訳は末梢血リンパ球サブセット検査が年間約500件、造血器腫瘍細胞解析を含む細胞表面抗原検査が年間約700件です。末梢血リンパ球サブセット検査は計算上では2 ~ 3件/日ですが、実際は曜日により検査依頼数は大きく異なるために10件を超える日があります。

検体は決まった時間にまとまって検査室に届くわけではないので、AQUIOS導入前は検体が届くたびにサンプル調製、測定、データ解析を手動で行っていました。サンプル調製を行っている間に次の検体が届く場合が多く、担当者は1 人で調製方法が異なるサブセット検査と白血病検査等の様々な検体処理作業を並行して行わなければなりませんでした。そのために担当者はFCM検査エリアから離れることはできず、他の検査のサポートは全くできませんでした。

AQUIOSでのサブセット検査におけるFCM検査担当者の作業は検体投入と結果確認だけなので、検査担当者の負担は他の検査のバックアップができるほど大きく改善されました。また、複数人で算出していた確認項目値がAQUIOSでは自動計算されて表示されるので素早く確認作業ができることも検査部の作業効率が向上している一因だと思います。AQUIOS導入による作業効率向上について盛合先生はこのように話してくれました。

 

作業効率を向上させるためにワークフローと装置の特長を考慮してレイアウトを考案

「AQUIOSを導入するにあたり、サブセット検査が効率化されることを想定し、FCM検査担当者が他の検査をバックアップしながらFCM検査を効率よく実施できるような装置等の配置を考えました」と盛合 先生は言う。FCM検査では午後に骨髄検体の依頼が多く、リンパ球サブセット検査の依頼は1日中出ます。そのためFCM検査担当者の作業として、午前中は他の検査をバックアップしながら、サブセット検査用検体が到着後は速やかにAQUIOSを操作することを、午後はFCM検査に専任して作業することを想定しました。繁雑な作業を伴うFCM検査実施を効率的に行うには、FCM検査エリア内は動線を考慮しながら抗体試薬保管用冷蔵庫、検体処理スペース、サンプル調製用機器や設備、測定装置や解析用PC等を近くに配置し、移動を最小限にする必要があります。NaviosやNavios EXは検査エリア内に配置しましたが、AQUIOSは試薬を保管する冷蔵庫の近くで、かつ動線を考慮すると検体受取場所と共にFCM検査エリアの入り口に設置することにしました。

FCM検査エリアの入り口であれば、FCM検査担当者が他の検査を行いながらでも簡単に検体、AQUIOSにアクセスでき、サブセット検査の検体はその場ですぐにAQUIOSに投入して速やかに他の検査に戻ることが可能です。一方でその他のFCM検査依頼の場合は、FCM検査エリア内に検体を運び入れて最小限の移動で効率的にFCM検査の報告確認までを行うことができます。FCM検査をリンパ球サブセット検査とその他の検査といった2つに分割することでそれぞれの作業に適したレイアウトができたと考えています。AQUIOSとNavios/Navios EXをそれぞれ効率良く活用する方法について盛合 先生はこのように話してくれました。

FCM検査エリアに配置されたNavios/Navios EX
FCM検査エリアに配置されたNavios/Navios EX
FCM検査エリア入り口のAQUIOS
FCM検査エリア入り口のAQUIOS

FCM検査エリアレイアウト概要

 

Navios/Navios EXでの造血器腫瘍解析を次のステップへ

Navios/Navios EXでの造血器腫瘍解析を次のステップへ

「AQUIOSの導入でサブセット検査の問題は改善できたので、次は造血器腫瘍解析のマルチカラー化を進めていきたい」と盛合 先生は今後の展望について話してくれました。

AQUIOSは非常に簡単に使用できる装置であるために多くのFCM検査の技術・知識を必要としませんが、FCM検査の技術・知識を向上させることは血液検査のエキスパートとして非常に重要だと思っています。当院ではFCM検査の技術・知識を獲得するために造血器腫瘍解析の教育プログラムを終了しないとAQUIOSを使用させてないくらい、FCM検査における造血器腫瘍解析を重要であると考えています。

当院では現在最大6カラーを用いた造血器腫瘍解析を行っております。これは担当技師の負担と検査精度を考慮しているためです。AQUIOS導入によりFCM検査担当技師の負担を減らすことができましたので、次は造血器腫瘍解析の検査精度等を高めていきたいと考えています。最初に行っていきたいことは、最近国内で実施施設が増えている10カラーでの測定・解析の導入です。これにより今の6カラー解析より検査精度を向上できると思っています。1 検体当たりの測定・調製サンプル数も減らすことができるために検査時間も一見短縮できそうですが、データ解析が複雑化するために解析作業時間が増えると考えられます。また、FCM検査でのサンプル調製における一番担当者の負担が大きいところは抗体試薬の分注だと思っています。この作業を軽減するために自動サンプル調製システムや液体、乾燥抗体試薬のカスタマイズ等の導入という方法がありますが、それぞれ特徴を見極めて当院の運用への適合度合い、検査時間を含めた作業効率のバランスを含めてしっかりとした検討が必要だと考えています。しかしながら院内で10カラー解析を開始すれば、外注検査を依頼していた一部の検体検査を院内で行えるようになりますので、これらの検査結果報告を速やかに行えるという大きな利点があります。

10カラー解析導入にあたりFCM検査の知識・技術をより向上させなければなりませんが、AQUIOS導入前は検査担当者の負荷が大きすぎて断念していました。AQUIOS導入後によりFCM検査の知識・技術向上のための時間を以前より多くとれるようになったので、これからです。このように盛合先生は意気込みを語ってくれました。

札幌医科大学附属病院検査部のみなさま

髙橋検査部長(前列右)、遠藤副部長(前列中央)と共に常に高い意識で検査に取り組む検査部のみなさま

 

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