密度勾配遠心法による 金ナノロッドの分離精製

要旨

金ナノ粒子は、バイオメディカルサインス分野、特に腫瘍 イメージング 1、光熱がん療法 2,3、金属増強蛍光(metalenhanced fluorescence)4 において、ここ十年間で注目 を集めるようになりました。サイズやアスペクト比の揃った 単分散である高品質な金ナノ粒子が、これらのアプリケー ションでは求められます。本アプリケーションノートにお いて、高速冷却遠心機の中でも高速タイプである Avanti JXN-30 を用いた密度勾配遠心法による、多分散のサンプル から単分散の金ナノロッドの精製する方法をご紹介します。

 

序論

金ナノロッド(Gold Nanorods, 以下 AuNR と略します) は、バイオメディカルイメージングにおいて大きな役割を果 たしています。AuNR は、プラズモン効果により可視光と近 赤外領域に非常に強い吸収を示し、AuNR のアスペクト比 は直接この吸収波長のピークに影響することが知られていま す。このため、バイオメディカルイメージングにおいて、金 ナノロッドの光学的な純度は、物理的な純度と同様に重要と なります。しかしながら、通常、AuNR の合成過程において、 長くならなかった球形の金ナノ粒子(gold nanospheres, 以下 AuNS と略します)や僅かに異なるアスペクト比を持っ た最適でない AuNR が不純物として合成されます。AuNR と AuNS は同じ構成成分・表面コーティング(多くの場合 は界面活性剤の CTAB)で同様のサイズのため、その分離が 主な問題となっています。これらのナノ粒子は同じようなサ イズだが、表面面積 / 体積比がわずかに異なるため密度が異 なります。このような特性を持つナノ粒子の分離には、密度 勾配遠心法が高い分離能力を発揮します。本アプリケーショ ンノートでは、2 種類の AuNR の標品サンプルを用いました。 1 つ目はアスペクト比 4.1(10 nm x 41 nm)で吸収波長 808 nm、2 つ目はアスペクト比 2.4(25 nm x 60 nm) で吸収波長 650 nm の AuNR を用いました。2 つのサン プルを混合し、Avanti JXN-30 とスウィングロータ JS24.15 を用いて一回の密度勾配遠心により分離しました。分 離した AuNR サンプルは、分光光度計により分析した結果、 オリジナルサンプルと変わらない精製度を示しました。

密度がわずかにでも異なれば、

密度勾配遠心法は有効な分離手段と

なりえます。

プロトコール

直径 10 nm の AuNR(吸収波長ピーク 808 nm、以下 AuNR 10 nm と表記)と直径 25 nm の AuNR(650 nm、 以下 AuNR 25 nm と表記)の密度勾配遠心用のサンプル調 整のために、それぞれのサンプル 3 mL を Microfuge 16 (ベックマン・コールター)で 10,000 xg, 5 分間遠心し、 得られたペレットを 0.01M CTAB 水溶液 0.05 mL に再懸 濁し、濃縮しました。密度勾配は、15 mL ポリアロマー(PA) チューブ(製品番号 361707、¥31,000)内に、下記の表 のようにマニュアルで作製しました。

2 つの濃縮した AuNR サンプルを 5 分間超音波処理し (Branson M1800 sonicator)、その後混和し、作製した密度 勾配の上に重層しました。これらのサンプルを、高速冷却遠 心機 Avanti JXN-30 とスウィングロータ JS-24.15 (ベッ クマン・コールター)を用いて 25℃、10,750 xg で 15 分間 遠心処理しました。この際に加速と減速の設定を 3 にセット しました。遠心後、300 µL ずつフラクションに分けました。 各フラクションをマイクロプレートリーダーにより吸光度を 測定し、808 nm または 650 nm にピークを持つフラクショ ンをそれぞれに集めました。溶媒置換するために、それぞれ の集めたフラクションを Microfuge 16 により 10,000 xg, 5 分間遠心し、AuNR をペレッティングさせ、0.01M CTAB で再懸濁させました。このステップを 3 回行い、ペレットを 洗浄し、最終的に 0.01M CTAB 250 µL に懸濁させました。 分光光度計(DU 800, ベックマン・コールター)を用いて、 標品、混合したサンプル、精製後のサンプルの吸収スペクト ルを測定しました。

Fig. 1a AuNR 25 nm と AuNR 10 nm の標品の吸光スペクトル

Fig. 1b AuNR 25 nm と 10 nm を混合したサンプルの吸光スペクトル

Fig. 2 密度勾配遠心法で精製したサンプルの吸光スペクトル AuNR 25 nm と 10 nm の混合サンプルを密度勾配遠心法で分離し、精製 後の各 AuNR のフラクションの吸光スペクトルを測定しました。

Fig.3 密度勾配遠心前と後の写真

結果・考察

Fig. 1a には標品の吸収スペクトル、Fig. 1b には混合したサ ンプルの吸収スペクトルを示しました。AuNR 10 nm は、 理論通りにメインピークは 800 nm、セカンドピークは 515 nm に吸収を示しました。また、 AuNR 25 nm は、それぞれ 理論通りの 650 nm, 515 nm を示しました。AuNR 10 nm の 800 nm と 515 nm のピーク比は、3.85 であり、AuNR 25 nm の 650 nm と 515 nm のピーク比は 2.32 でした。 Fig. 2 には、密度勾配遠心により精製し、光学的に同一のフ ラクションを集め濃縮したサンプルの吸収スペクトルを示し ました。650 nm に吸収があったフラクションから濃縮した サンプルの 650 nm/515 nm 比は 1.91 で、標品とほぼ同じ 値でした。また、興味深いことに 800 nm に吸収があったフ ラクションから濃縮したサンプルの 800 nm/515 nm 比は 4.54 で、標品よりも高い値を示しました。これは、標品とし た AuNR サンプルの中にも不純物が含まれており、密度勾配 遠心後より精製されたことを示しています。

試薬

 

1. Popovtzer R et al. Targeted gold nanoparticles enable molecular CT imaging of cancer. Nano Letters. 8.12; 4593–4596: (2008).

2. Huang X et al. Plasmonic photothermal therapy (PPTT) using gold nanoparticles. Lasers in Medical Science. 23.3; 217–228: (2008).

3. O'Neal D P et al. Photo-thermal tumor ablation in mice using near infrared-absorbing nanoparticles. Cancer Letters. 209.2; 171–176 (2004).

4. Hong G et al. Near-Infrared-Fluorescence-Enhanced Molecular Imaging of Live Cells on Gold Substrates. Angewandte Chemie International Edition. 50.20; 4644–4648: (2011).