スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaic を用いて複数の自家蛍光を除去することによる、白血球ポピュレーションのスペクトルアンミキシングの向上

Tamar Tak1, Marjolijn Hameetman1, Krittika Ralhan2, Fanuel Messaggio3 1Leiden University Medical Center, Netherlands
2Beckman Coulter Life Sciences, India
3Beckman Coulter Life Sciences, US

はじめに

細胞は、特定の波長の光で励起された場合に蛍光を発するさまざまな細胞成分や代謝物によって、自家蛍光として知られる固有の蛍光を放出します。一般的な内因性蛍光色素には、還元ピリジンヌクレオチド(NADH)、酸化フラビン補酵素(FMN、FAD)、ビタミン類、芳香族アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンなど)を含むタンパク質が含まれます1

フローサイトメトリーにおいて自家蛍光は課題であり、特に異なる自家蛍光特性を持つ複数の細胞ポピュレーションが混在するような複雑な生物学的サンプルを解析する場合は、特に大きな問題です。自家蛍光バックグラウンドがあると、特に低発現マーカーやdimポピュレーションを同定しようとする際、目的の蛍光シグナルが正確に検出できない懸念があります。

さらに、スペクトルフローサイトメトリーでは、自家蛍光がアンミキシングエラーを引き起こし、データの信頼性が損なわれる可能性があります。スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaicを使用した場合、複数(最大10個)の異なる自家蛍光ポピュレーションから蛍光シグナルを抽出することができます。複数の異なる自家蛍光シグネチャーを活用することで、正確なアンミキシングが可能になり、マーカー発現パターンの信頼性が向上します。逆に、自家蛍光の特性を十分に考慮せず、単純に除去してしまうと、蛍光シグナルの解釈を誤る可能性があります。

本研究では、白血球細胞ポピュレーションのスペクトルアンミキシングにおける自家蛍光除去の影響と、複数の自家蛍光シグネチャーを使用することでアンミキシングの精度が向上するかを評価しました。一般的に使用されていることと、多様な自家蛍光特性を有する細胞型を含んでいることから、末梢血白血球をサンプルに選択しました。

解析には、スペクトル解析機能を追加するためのスペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaic 88 をフローサイトメーターCytoFLEX LXに接続して使用しました。スペクトルフローサイトメトリーでの蛍光シグナルの正確な分離には、実験ワークフローに複数の自家蛍光除去を組み込むことが重要であり、これを十分に考慮することでイムノフェノタイピングアッセイにおけるデータの信頼性が向上することを示します。

機器と備品

  • フローサイトメーターCytoFLEX LX C06779(Beckman Coulter Inc., USA、日本国内製品番号C11186)
  • スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaic 88 U-V-B-Y-R-I (6レーザーUV)(Beckman Coulter Inc., USA、日本国内製品番号D19581)(Table 1)
  • スペクトル解析ソフトウエア CytExpert for Spectral、バージョン1.0.0.49
  • 遠心機(Andreas Hettich GmbH, Germany,Rotanta 460R)
  • Falcon 50mL丸底チューブ (Merck、CLS352070)
  • Falcon 5-mL丸底チューブ(Corning、352235)
  • 96ウェルプレート(NUNC 249570)
  • 分注ピペット
  • マイクロピペット
  • ピペットチップ(1000 μL, 200 μL, 10 μL)(Greiner Sapphire 777355,775355,771354)
  • 自動セルカウンター(Countstar, China; Countstar Mira FL)
  • その他:バイオハザードコンテナ、アルミ箔、氷

CytoFLEX mosaicは、CytoFLEX SまたはCytoFLEX LXに接続することで、従来のコンベンショナル解析機能に加え、スペクトルフローサイトメトリー解析機能を追加するスペクトル検出モジュールです。CytoFLEX LXまたはCytoFLEXS*をすでにお使いの場合はこのモジュールを追加することでスペクトル機能搭載のフローサイトメーターにアップグレードすることが可能です。これから購入される場合でも、将来必要となったときのサステナブルなソリューションとして提供します。

スペクトル検出モジュール CytoFLEX mosaic の構成は2種類あり、CytoFLEX mosaic 88はCytoFLEX LX用、CytoFLEX mosaic 63はCytoFLEX S(B-R-V-Yシリーズ)用の検出モジュールです。本アプリケーションノートではスペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaic 88を使用しました。装置の仕様をTable 1に示します。

アナライザー スペクトル検出モジュール チャネル数 (FSC/ SSC/FL) FSC 355 nm (SSC/FL) 405 nm (SSC/FL) 488 nm (SSC/FL) 561 nm (SSC/FL) 638 nm (SSC/FL) 808 nm (SSC/FL)
CytoFLEX
LX (UV355)
CytoFLEX
mosaic 88
1/6/81 1 1/20 1/20 1/16 1/12 1/10 1/3

Table 1:装置構成

試薬および抗体

  • 蛍光標識抗体
  • 抗凝固剤(ヘパリンナトリウム)添加採血管
  • 1%ウシ胎児血清[FBS]を添加したリン酸緩衝生理食塩水[PBS]
  • 赤血球(RBC)溶血バッファー(BioLegend、Cat. No. 420301)
  • Human TruStain FcX(BioLegend Cat. No. 422302)
  • True-Stain Monocyte Blocker(BioLegend Cat. No. 426102)
  • BD Horizon Brilliant Stain Buffer Plus (BD Biosciences 566349)
  • CytoFLEX Daily QC Fluorospheres(Beckman Coulter, Inc., C65719)
  • CytoFLEX Daily IR QC Fluorospheres(Beckman Coulter, Inc., C06147)
  • CytoFLEXシース液(Beckman Coulter, Inc.、B51503)
  • Flow clean 洗浄剤(Beckman Coulter, Inc., C48093(旧A64669))

*CytoFLEX S V-B-Y-R シリーズのみに対応。

Marker Fluorochrome Clone Company Catalog Dilution
CD66b FITC G10F5 BioLegend 305104 1:100
CD45 IR820 J33 Beckman Coulter D20049/ D20050 1:20
CD14 APC-Fire750 63D3 BioLegend 367119 1:100
CD16 BUV496 3G8 BD Biosciences 612944 1:100
CD4 BV510 SK3 BD Biosciences 562971 1:100
HLR-DR BV570 L243 BioLegend 307628 1:50
CD8 cFluor V547 SK1 Cytek Biosciences R7-20064 1:50

Table 2:抗体パネルの詳細

方法

  1. 検体の採取
    1. 凝固を防止しサンプルの完全性を維持するため、抗凝固剤としてヘパリンナトリウム(NaHep)を添加したチューブに全血サンプルを採取しました。
    2. 処理まで、サンプルは室温(RT)で最大4時間保存できます。
  2. サンプル調製
    • 赤血球の溶血と洗浄
      1. 1X RBC溶血バッファーで4:1の比率で希釈したサンプルを氷上で20分間インキュベートし、RBCを選択的に溶血しました。
        Note:完全な赤血球溶血のため、チューブの壁面やキャップに血液が付着しないよう注意します。
      2. 溶血後、残った白血球を段階的に洗浄しました。まず、1XRBC溶血バッファーで残存赤血球を除去し、次に細胞生存率を維持し、非特異的結合を最小限に抑える目的で、1%FBS含有PBSで洗浄しました。
    • 細胞カウントと染色
      1. 白血球をカウントし、100 μLの1%FBS含有PBSに106個の細胞を再懸濁し、96ウェルプレートで染色しました。
      2. 細胞を抗体と共に30分間、氷上でインキュベートしました。Fcレセプター媒介バックグラウンド染色を減少させるためTruStain FcX™を抗体カクテルに添加しました。また、蛍光色素の単球への非特異的結合を防ぐため、True-Stain Monocyte Blocker™を添加しました。ポリマーベースの蛍光色素の相互作用を緩和するため、BD Horizon™ Brilliant Stain Buffer Plusを添加しました。
      3. サンプルを200 μLの1%FBS含有PBSで2回洗浄し、100 μLの1%FBS含有PBSで再懸濁して測定に使用しました。
      4. 調製したサンプルは、解析前に4℃で保存した場合、最大5時間安定でした。
    • コントロールの調製
      1. 単染色コントロールの調製には、実験サンプルと同じバッファー組成で再懸濁した細胞を用いました。コントロールはアンミキシングに不可欠です。

データの取得

  1. スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaic 88でのデータ取得
    1. フローサイトメーターがメーカーの推奨事項に従って適切にアライメントされていることを確認します。「スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaic」取扱説明書(D172052)をご参照ください。
    2. CytoFLEX Daily QC Fluorospheres(C65719、Beckman Coulter, Inc.)およびCytoFLEX Daily IR QC Fluorospheres(C06147、Beckman Coulter, Inc.)を実行し、サンプル取得前に装置のアライメントを確認します。CytoFLEX LXと同じ方法でQCを実行することを推奨します。QCのレポートでは非常に多くのチャネルについて確認を行う以外は同じです。
    3. データ取得において、一貫性と精度を維持するよう、標準アッセイ設定を適用してサンプルを測定します。
    4. 正確なアンミキシングおよびコントロール検証に十分なデータを確保するため、各単染色コントロールにつき5万個(5x104)以上の細胞を測定します。
    5. 信頼性の高い統計解析とポピュレーション同定のために、プロットに細胞解析用の細胞が10万個(1×105)以上取得されていることを確認します。
  2. スペクトルのアンミキシング
    スペクトルアミキシングは、重なり合うシグナルを数学的に分離し、各マーカーに正しい蛍光色素を割り当てます。CytoFLEX mosaicを使用したスペクトルアンミキシングは、次の手順で行われます。
  3. スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaicを使用した今回のスペクトルアンミキシングと自家蛍光除去のプロセス
    Figure 1:スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaicを使用した今回のスペクトルアンミキシングと自家蛍光除去のプロセス

    1. スペクトル解析ソフトウエアCytExpert for Spectralで新しいunmixing experimentを開き、必要な数の蛍光色素と未染色ポピュレーション4つを追加します(Figure 1) 。
    2. 未染色細胞のデータを取得します。測定が必要なのは一度だけです。取得する細胞数について、アンミキシングはポジティブイベントが200以上あれば可能ですが、より多くのイベントを測定することで、アンミキシングの精度が向上することにご留意ください。
    3. 測定した未染色サンプルデータを.fcsファイルとしてエクスポートします。
    4. エクスポートした.fcsファイルを残りの3つの未染色サンプル(unstained_2-4)にインポートします。
    5. 各単染色コントロールでポジティブゲートとネガティブゲートを設定します。自家蛍光コントロールは、unstained_1-4の各々で自家蛍光陽性細胞にゲートを設定します(Figure 3を参照)。ポジティブゲートは、最も強度が高い細胞に設定します。
    6. アンミキシングマトリックスを計算して保存します。実験サンプルを測定する際に使用する自家蛍光シグネチャーの数と異なる場合(例えば、一部の単染色コントロールでビーズを使用した時の、単染色ネガコンとしての無染色ビーズの自家蛍光シグネチャー)は、unstained_beadsの設定の際に「Unmixing only」とすることで、実験サンプルに適用するためのアンミキシングマトリックスには、そのビーズの自家蛍光シグネチャーを除外します。または、ビーズを含む全ての自家蛍光シグネチャーを持つマトリックスをライブラリに保存し、ビーズ以外の必要な自家蛍光シグネチャーのみをインポートすることで、考慮すべき自家蛍光シグネチャーのみを含むマトリックスを作成することができます。
      注意:スペクトル解析ソフトウエアCytExpert for Spectralは各NxNプロットを自動的に作成し、品質チェックを実行してアンミキシングが良好かを確認します。必要に応じてユーザーは、各シグネチャー、ステインインデックス、NxNプロットを確認・評価し、アラートへの対処や必要なゲーティングの調整をして、再度のアンミキシングを実行できます。
    7. スペクトル解析ソフトウエアCytExpert for Spectralで新規experimentを作成し、サンプルをレコード測定します。
    8. f.で計算されたアンミキシングマトリックスをsample.fcsファイルに適用します。
    9. Figure 3およびTable 3に示すように、ゲートポピュレーションを定義します。
細胞ポピュレーション 同定基準
好中球 CD45+ VSSChigh FSChigh CD14- CD66b+ CD16+
好酸球 CD45+ VSSChigh FSChigh CD14- CD66b+ CD16-
単球 CD45+ VSSCmid FSChigh
古典的単球 CD45+ VSSCmid FSChigh CD14++ CD16-
中間型単球 CD45+ VSSCmid FSChigh CD14++ CD16+
非古典的単球 CD45+ VSSCmid FSChigh CD14+ CD16+
リンパ球 CD45+ VSSClow FSClow

Table 3:さまざまな細胞ポピュレーションとその識別基準

データ解析

スペクトルアンミキシング

サンプルのデータは、スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaic 88を接続した6レーザー(U-V-B-Y-R-I)のフローサイトメーターCytoFLEX LXを用いて取得されました。スペクトル解析ソフトウエアCytExpert for Spectralを使用してアンミキシングし、4つの異なる自家蛍光ポピュレーションを同定しました(Figure 2A-D)。

自家蛍光抽出
Figure 2. 自家蛍光抽出。(A)好中球、(B)好酸球、(C)単球、(D)リンパ球の各々について自家蛍光を抽出するゲートストラテジー。未染色の各細胞集団をFSC/BSSCとUV7/B3のドットプロットでゲートした。FSC/BSSCプロットの青いポピュレーションは、UV7/B3プロットで自家蛍光を抽出するために選択されたポピュレーション。(E)蛍光強度をノーマライズした、全検出器でのスペクトル、(F)スペクトル解析ソフトウエアCytExpert for Spectralによって計算された自家蛍光シグネチャーのSimilarity Index(類似性指数:1=スペクトルが完全一致、0=完全に異なる)。

アンミキシングマトリックスを計算すると、好中球、単球、リンパ球の自家蛍光シグネチャーは高い類似性を示しました(>0.98、Figure 2F参照)。これは、最適なアンミキシングに必要な自家蛍光シグネチャーは2つだけである可能性が高いことを意味しています。この3つの類似シグネチャーから、最も明るい自家蛍光ポピュレーションであった好中球のシグネチャーを用いることとし、好中球と好酸球の2つの自家蛍光シグネチャーを適用することとしました。

ゲートストラテジー

最初に白血球をCD45+の単一細胞としてゲートし、FSC-A(前方散乱)とVSSC-A(バイオレット側方散乱)プロットで、リンパ球、単球、顆粒球をそれぞれゲートしました(Figure 3)。顆粒球はさらにCD14-/low CD66b+としてゲートされ、CD16の発現に基づいて好酸球(CD16低発現または陰性)と好中球(CD16高発現)が同定されました。単球はCD14とCD16の発現に基づいて古典的単球、中間型単球、非古典的単球に同定されました。(古典的単球 [最大73.4%]:CD14++ CD16-、中間型単球 [最大9.2%]:CD14++ CD16+、非古典的単球 [最大9.9%]:CD14+ CD16+)

 2つの自家蛍光シグネチャーでアンミキシングした実験サンプルのゲートストラテジー
Figure 3. 2つの自家蛍光シグネチャーでアンミキシングした実験サンプルのゲートストラテジー。FSC/BSSC プロット上に各ポピュレーションをオーバーレイする(右下)と、各々のFSC/BSSC特性が明確に観察される。

結果

同一データを異なる数の自家蛍光シグネチャーを入れたアンミックスマトリックスでアンミキシングした場合のヒストグラムを、各免疫細胞ポピュレーション(好中球、好酸球、単球、リンパ球)について図示し、アンミックス時に考慮する自家蛍光のマーカー発現への影響を示しています(Figure 4)。自家蛍光除去の重要性を示すため、自家蛍光除去を行なっていないデータ(No AF)も示しています。自家蛍光のシグネチャーと細胞ポピュレーションの特徴について以下のような観察結果が得られました。

まず、自家蛍光除去によってフローサイトメトリーデータの品質がどのように向上するかについて示します。

自家蛍光除去なし(No AF)では、自家蛍光と同じ波長範囲の蛍光色素(BUV496、BV510、BV570、cF547)で標識された全てのマーカーで異常な発現パターンが観察されます。全ての免疫細胞ポピュレーションでCD16、CD4、HLA-DR陽性でしたが、想定される生物学的発現パターンとは一致しませんでした。CD16陽性となるのは、好中球、リンパ球、単球のサブセットのみのはずで、CD4陽性はリンパ球のサブポピュレーションのみ、単球とリンパ球の小さな(活性化された)サブポピュレーションのみがHLA-DR陽性となるはずです。興味深いことに、CD14の発現は、自家蛍光除去を行わなくても正常に現れました。これは、APC-Fire 780の蛍光スペクトルが自家蛍光スペクトルと大きく異なるためと考えられます。自家蛍光が誘発する偽陽性の影響は好酸球で最も顕著であり、次が単球で、リンパ球でのシフトは比較的軽度でした。

好酸球は、細胞内顆粒にフラビンタンパク質などの自家蛍光分子が含まれるため、明らかな自家蛍光特性を示します2。好酸球の自家蛍光スペクトルは、他の細胞とは明らかに異なっており(Figure 2参照)、この細胞のアンミキシング結果に大きな影響を与えます。好酸球は、自家蛍光除去を行わない場合、CD4、CD16、HLA-DRが陽性となるだけでなく、CD8が陰性に見えます。このCD8陰性は、好中球の自家蛍光除去を行うと、さらに悪化します。程度は小さいものの、CD16でも同様の現象が見られ、1つの自家蛍光シグネチャーで自家蛍光除去した場合(1AF)はわずかに陰性に見えます。このことから、自家蛍光の影響は、必ずしも蛍光強度の増加アーチファクトとして現れるわけではなく、特定のマーカーではシグナル強度の相対的な減少を伴うスペクトルの歪みを引き起こすことが示唆されます。これは二次元プロットで見るとより明確です(Figure 5)。

したがって、1つの自家蛍光シグネチャー(好中球のシグネチャー)をアンミキシングに加えると、好中球、単球、リンパ球ポピュレーションから自家蛍光が除去されますが、好酸球での異常発現は除去されないことが分かりました。この系でアーチファクトを除去するには、アンミキシングに2つ目(好酸球)の自家蛍光シグナルを追加する必要です。これはアンミキシング適用時に複数の自家蛍光シグネチャーを使用することの重要であることを意味します。

細胞表面マーカー発現のヒストグラム
Figure 4. A-D:各免疫細胞ポピュレーション(好中球、好酸球、単球、リンパ球)における細胞表面マーカー発現のヒストグラム。アンミキシングマトリックスに0、1、2、4個の自家蛍光シグネチャーを使用。赤(No AF)は自家蛍光除去なしのデータ、青(1 AF)は自家蛍光シグネチャーを1つ(好中球)除去した後のデータ、オレンジ(2 AF)は自家蛍光シグネチャーを2つ(好中球と好酸球)除去した後のデータ、緑(4 AF)は自家蛍光シグネチャーを4つ全て除去した後のデータを表す。

好酸球がCD16-CD8-になることを示す二次元プロット
Figure 5. 自家蛍光シグネチャーを0または1つ(好中球)用いてアンミキシングした場合に、好酸球がCD16-CD8-になることを示す二次元プロット。単球はリファレンスとしてプロットに表示した。アンミキシングに好酸球の自家蛍光シグネチャーを加えて2 AFになると、好酸球は古典的単球と同じプロット領域に現れる。

4つのAFシグネチャー全てを使用した場合でも、アンミキシング全体への影響はわずか

前述のとおり、好中球、単球、リンパ球の自家蛍光シグネチャーは高い類似性を有します(>0.98、Figure 2)。この場合、最も明るいシグナル(好中球)の使用が推奨されます。しかし、過度に多くの自家蛍光シグネチャーを使用した場合の影響を見るため、4つの自家蛍光シグネチャー全てを使用してデータをアンミキシングしました。ヒストグラム(Figure 4)では、4つの自家蛍光シグネチャー全てを使用しても、2つの自家蛍光シグネチャーを使用した場合と比較して、マーカーのデータ品質に向上は認められませんでした。

しかしながら、3つの単球サブセットのゲーティングには影響が見られます(Figure 6)。特にCD16-の古典的単球ポピュレーションでは、4つ目の自家蛍光シグネチャーを付加した後、CD16のスプレッドが増大して見えます。これは、集団の分布が広がっているのが見られ、累積分散(CV)が0.337から0.386へ増加していることにも反映されています。この結果は、自家蛍光シグネチャーを複数使用することがスペクトルアンミキシングの全体的な確度を向上させる一方で、自家蛍光を過剰に使用した補正はデータ品質に影響するばらつきを引き起こす可能性を示唆しています。今回のケースでは、その影響は小さかったものの、より複雑なパネルではより顕著な問題になる可能性があります。これらのことから、使用する自家蛍光シグネチャーの数を最適化してバランスのとれた自家蛍光除去を行うことが、真の生物学的な発現パターンとばらつきを知るために非常に重要であることが分かります。

異なる数の自家蛍光シグネチャーでアンミキシングを適用した場合の単球におけるCD16およびCD14の発現
Figure 6. Figure 2と同様、異なる数の自家蛍光シグネチャーでアンミキシングを適用した場合の単球におけるCD16およびCD14の発現。CVは長方形ゲートにおける古典的単球ポピュレーションの累積分散。長方形ゲートの位置とサイズは各アンミキシングで調整されているが、四分割ゲートは全プロットで同じ。

おわりに

本稿では、特に複雑な細胞ポピュレーションを扱う場合において、スペクトル検出モジュールCytoFLEX mosaicを用いた自家蛍光除去の効果を高めるには、複数の自家蛍光シグネチャーを用いることが重要であることを示しました。最適化した自家蛍光除去によって、好酸球、単球、リンパ球でのCD16の擬陽性が減少し、真の生物学的なシグナルが反映されました。特に、古典的単球で観察されるアーチファクトによるシグナルの歪みを防ぐためには、バランスの取れた自家蛍光除去が不可欠でした。CytoFLEX mosaicは最大10個の自家蛍光除去ができるため、複雑な生物サンプル中の自家蛍光の扱いに非常に有益です。このことは、イムノフェノタイピングの精度と分解能を向上させるうえでCytoFLEX mosaicが有用であることを示すものであり、スペクトルフローサイトメトリーの正確性の価値を高めます。

謝辞

Leiden University Medical Center (オランダ)のフローサイトメトリーコアファシリティのディレクターTamar Tak博士とFCFオペレーションマネジャーMarjolijn Hameetman氏に心から感謝申し上げます。

略語

略語 正式名称
AF 自家蛍光
FBS ウシ胎児血清
PBS リン酸緩衝生理食塩水
RBC 赤血球
FSC 前方散乱
SSC 側方散乱
APC アロフィコシアニン
CD 差別化のクラスター
BUV ブリリアント・ウルトラバイオレット
BV ブリリアント・バイオレット
FITC フルオレセインイソチオシアネート
PN 製品番号
QC 精度管理
UV 紫外線
U-V-B-Y-R-I UV-Violet-Blue-Yellow Green-Red-IR

参考文献

  1. Monici, M. 2005. “Cell and Tissue Autofluorescence Research and Diagnostic Applications.” Biotechnology Annual Review 11: 227-256.
  2. Buchwalow, I. et al. 2018. Identification of autofluorescent cells in human angioimmunoblastic T-cell lymphoma. Histochem Cell Biol 149, 169–177.
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