生死細胞オートアナライザー Vi–CELL BLUの機器間差評価テスト

生死細胞オートアナライザーVi–Cell BLUは、Vi–CELL XRの優れた機能を継承し、さらに世界中の研究者・エンジニアのご要望を取り入れ開発されました。

細胞計数は一見簡単なように思われますが、自動細胞計測は様々な要因によって影響を受けます。例えば、サンプルや機器の状態などです。したがって、機器が定められている性能を発揮していることを確認することが必要であり、これによって、サンプル計測時のばらつきを除くことができるのです。しかしながら、機器ごとにばらつきがあるため、施設に同じ機器が複数台ある場合には、機器間差の課題が生じるのです。

Vi–CELL BLUの性能の大きな強みは、異なる機器のばらつきを最小限に抑えられるように設計されていることです。これは、細胞計測を行う複数の施設において最も大きな利点です。また、機器が異なる部署で共有される場合においても同じことがいえます。

GMP対応製造施設でVi–CELLを使用する最も重要なことは、Vi–CELL BLUが機器間差を最小限に抑えながら計測できることです。このアプリケーションノートでは、 Vi–CELL BLUの機器間差が非常に小さいことを、テストサンプルの計測結果から証明します。


Figure 1. 生死細胞オートアナライザー Vi–CELL BLU

 

標準ビーズと細胞を用いた機器間差の比較

検証に使った材料

6602796 (lot 9747455F) Coulter CC L10 Standard、nominal 10 μm、ラテックス粒子 (NIST Traceable)、1 x 15 mL

 

セルタイプ:BCI L10 Beads

標準ビーズ測定のセルタイプの詳細

セルタイプ BCI L10 Beads
最小直径 (μm) 5
最大直径 (μm) 15
画像枚数 100
セルシャープネス 22
最小真円度 0.5
クラスター分離度 Medium
アスピレーション回数 3
生細胞スポットブライトネス (%) 50
生細胞スポットエリア (%) 1
混合回数 3

希釈サンプルを調製し、各希釈につき24サンプルを96ウェルプレートで測定しました。データは平均を示します。

 

標準ビーズの計測結果

サンプル:L10サイズ ビーズコントロール (3台の機器を用いて、繰り返し実験を行いました (Figure 2)。)

機器 希釈 平均ビーズ
カウント数
ビーズ
カウント
の% CV
平均濃度
(×106)
beads/mL
平均濃度
(% CV)
(×106)
beads/mL
平均直径
(μm)
平均直径の
% CV
#
サンプル数
A 100% 5501 3.45% 2.08 3.03% 10.40 0.16% 24
50% 2881 3.32% 2.17 3.31% 10.41 0.18% 24
25% 1468 2.83% 2.21 2.85% 10.42 0.24% 24
5% 303 4.54% 2.28 4.59% 10.43 0.55% 24
B 100% 5666 4.18% 2.12 4.18% 10.31 0.13% 24
50% 3011 1.83% 2.25 1.88% 10.32 0.16% 24
25% 1501 2.70% 2.25 2.64% 10.33 0.18% 24
5% 316 6.35% 2.37 6.32% 10.34 0.50% 24
C 100% 5906 2.97% 2.13 2.98% 10.37 0.14% 24
50% 3054 3.08% 2.21 2.76% 10.39 0.12% 24
25% 1515 2.33% 2.19 2.27% 10.38 0.26% 24
5% 314 6.60% 2.27 6.52% 10.40 0.52% 24

 


 Figure 2

 

細胞の計測結果

ビーズ粒子の計測に加え、様々な培養細胞を計測し機器間差を評価しました。細胞の希釈サンプル調製方法は、NIST (Evaluating the quality of a cell counting measurement process via a dilution series experimental design. Sarkar, Sumona et al. (2017) Cytotherapy, Volume 19, Issue 12, 1509 – 1521) のガイドラインに従いました。一部の細胞は希釈せずに測定を行いました。測定は標準セルタイプ (Mammalian cell) を用いました。セルタイプの詳細は以下に示します。

 

細胞計測に使用したセルタイプ設定の詳細

セルタイプ Mammalian
最小直径 (µm) 6
最大直径 (µm) 30
画像枚数 100
セルシャープネス 7
最小真円度 0.1
クラスター分離度 Medium
アスピレーション回数 3
生細胞スポットブライトネス (%) 55
生細胞スポットエリア (%) 5
混合回数 3

 

CHO細胞を用いて8希釈系列のサンプルを調製しました。低濃度領域では 同一のプレートを3枚ずつ用意し、3台のVi-CELL BLUで評価しました (Figure 3)。高濃度域では、使用できるサンプル量に限りがあるため、1希釈につき10本のサンプルチューブを3セット用意し評価しました (Figure 4)。

 

希釈 公称濃度(×106)cells/mL
100% 5.50
80% 4.40
60% 3.30
50% 2.75
40% 2.20
30% 1.65
20% 1.10
10% 0.55

 

機器 希釈サンプル
(n=12)
平均細胞
カウント数
カウント数
(%CV)
平均細胞濃度
(×106
cells/mL
総細胞濃度
(%CV)
(×106
cells/mL
平均生存率
(%)
生存率
(%CV)
#
サンプル数
B01 100% 14524 2.51% 5.47 2.50% 63.97 1.69% 12
80% 11099 2.79% 4.18 2.78% 64.77 0.70% 12
60% 8528 4.15% 3.21 4.10% 64.39 1.28% 12
50% 6848 2.81% 2.58 2.72% 64.33 1.20% 12
40% 5795 9.84% 2.18 9.83% 61.93 2.22% 12
30% 3960 2.93% 1.49 2.82% 62.07 1.33% 12
20% 2617 4.71% 0.99 4.63% 60.88 2.10% 12
10% 1185 4.25% 0.45 4.14% 58.41 3.49% 12
B02 100% 14736 3.44% 5.52 3.43% 65.81 1.17% 12
80% 11535 3.62% 4.32 3.60% 64.58 0.79% 12
60% 8479 2.27% 3.17 2.27% 65.79 1.15% 12
50% 7087 3.94% 2.65 3.92% 64.50 1.36% 12
40% 5547 3.31% 2.08 3.32% 62.36 1.22% 12
30% 4234 7.24% 1.59 7.19% 64.33 1.68% 12
20% 2820 6.27% 1.06 6.33% 61.88 1.87% 12
10% 1250 6.55% 0.47 6.42% 58.28 3.70% 12
B03 100% 14999 2.24% 5.42 2.34% 65.50 1.16% 12
80% 11834 2.39% 4.27 2.40% 64.80 0.94% 12
60% 8776 1.91% 3.17 1.88% 65.51 0.91% 12
50% 7281 2.78% 2.63 2.79% 64.40 1.48% 12
40% 5658 3.12% 2.04 3.11% 61.48 1.13% 12
30% 4138 4.71% 1.49 4.74% 62.58 2.08% 12
20% 2644 4.10% 0.96 3.93% 60.79 1.91% 12
10% 1237 4.25% 0.45 4.14% 58.36 3.81% 12

 


   Figure 3


   Figure 4

 

狭い濃度範囲の希釈サンプルを使って、さらにプレート解析を行いました。この目的は、プレートとチューブを用いたことによって生じる影響が出ないことを確認するためです。プレート解析では、同一のストックサンプルを16時間以内に3回の繰り返し実験を行いました。この時に使用した機器は同じものです。解析における細胞の増殖は、ほとんど影響を受けないと考えられ、解析したサンプルは全く同じものと考えられます。

プレート解析 (3回の繰り返し実験) は 3台の Vi–CELL BLU (合計9プレート、n=864サンプル) で行われました。以下の結果は、機器ごとの3回の計測結果を示します。

これらの実験から得られたデータを使ってANOVA分析を行いました。この分析により、1回の測定におけるばらつきと、繰り返し実験におけるばらつきを評価しました。この結果、すべての測定および機器間による測定のばらつきにおいて、統計的な有意性が認められませんでした (p value >90)。記載データは、平均細胞濃度および全細胞濃度における生存率を示しています (Figure 5、Figure 6)。

 

希釈 公称濃度 (x106) cells/mL
100% 2
50% 1
25% 0.5
10% 0.2

 

機器 プレート 平均細胞濃度
(x106) cells/mL
総細胞濃度 (%CV)
(x106)
平均生存率 (%) 生存率 (%)
A 1 1.86 1.52% 92.40 0.004%
2 1.71 1.11% 88.70 0.012%
3 1.81 1.41% 85.57 0.038%
B 1 1.85 0.78% 92.54 0.008%
2 1.72 0.86% 89.39 0.007%
3 1.82 1.06% 85.64 0.014%
C 1 1.87 1.87% 92.40 0.010%
2 1.67 1.98% 88.39 0.011%
3 1.69 2.04% 85.53 0.019%

 

以下のグラフは、各機器における3回の繰り返し実験の測定結果 (平均) を示しています。


   Figure 5


   Figure 6

 

結論

Vi–CELL BLU (複数台の機器) の測定性能は希釈サンプルを用いた実験により、非常に高い直線性を示しました。0.5 M cells /mL より低い濃度の細胞計測では、予測したようにばらつきが生じました。これは、一画像に写る細胞の個数が少ないため、計数全細胞数が少ないために生じたことが原因です。こうした条件下でも、Vi-CELL BLU の測定結果は、ばらつきの許容範囲である10% 以内に収まりました。標準ビーズ (L10) を使った同様の評価では、標準ビーズの物質的な特性が均一であることから、ばらつきが、かなり低い結果になりました。

以上の検証実験をまとめると、3台の機器を用いた繰り返し実験の測定結果から、標準ビーズ、細胞サンプルの測定において統計的に有意な差が認められませんでした。このことは、Vi-CELL BLU の機器間差が非常に小さいことを示しています。

 

 

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