過酸化水素ガス滅菌によるVi–CELL BLUの性能評価

はじめに

多くの施設において、機器を除染できることが望まれています。また、生物学的に危険なサンプルを扱っている場合にも機器の除染が必要です。通常、除染は化学的処理によって行われます。しかしながら、この方法は電子システムや光学システムに致命的な障害をもたらす可能性があります。

過酸化水素ガス(VHP)は滅菌剤としてアメリカ合衆国環境保護庁に登録されています。過酸化水素ガスはあらゆる種類の微生物を破壊、または除染する物質として認知されています。これはクリーンルームにおける、あらゆる形態のバクテリア、バクテリア胞子、真菌、真菌胞子も含まれています。また、VHPは炭疽菌胞子の除染物質としても承認されている化学物質であり、鳥インフルエンザウイルスなどの外来性ウイルスに対しても効果があることが示されており、機器の滅菌に使用されています。

VHP生成装置によって滅菌したい空間にVHPが放出されます。VHP以外の方法によって滅菌処理ができない機器は、 VHPを用いて機器の滅菌を行う必要があり、VHPに耐えうる設計になっている必要があります。

このアプリケーションノートでは、 Vi–CELL BLU のVHP耐性試験について記載します。試験方法は以下のとおりです。

 

方法

VHPが、Vi–CELL BLUの性能に影響を与えるか評価しました。評価項目はVi-CELL BLUによって計測される大きさ、濃度、生存率および光学システムです。

化学的インジケータ(Steraffi rm VH2O2 Process Indicators, Lot 030837, STERIS Life Sciences)および、生物学的インジケータ(Spordex VH2O2 Biological Indicators, Lot H2367, STERIS Life Sciences)を用いて、VHPが適切に作用していることを確認しました。また、化学的インジケータ、および生物学的インジケータを機器の異なる部位に配置させ、 VHPが効果的に浸透していることも確認しています。

機器のカローセルと試薬パックを取り外し、試薬トレイドアおよび廃棄トレイドアを開いた状態で、生物学的インジケータを指標にして機器の6ヶ所の滅菌状態を確認しました。機器の光学モジュール部位は、光やほこりが入らないように密閉されているため、測定可能な量のVHPが届きませんでした。

Vi–CELL BLUに20回のVHP処理を実施しました。滅菌後の機器の性能評価に加えて、機器の外装(塗装、仕上げ加工)に対する影響も調べました。

機器の性能評価には、L10標準ビーズ(10 μm、ラテックス粒子 (NIST Traceable, 製品番号6602796))、4M濃度コントロール (4 x 106/mL (製品番号 C09149)) およびVi–CELL BLU 50% Viability Control (製品番号 C09145)を使いました。試験方法は、試験前と 試験期間中の滅菌処理毎に機器の性能を評価しました。

 

結果

機器の視覚的な評価結果

  1. 20回の滅菌処理により機器に若干の変色が見られました。
  2. 機器の金属部、プラスティック表面において若干の曇りや色の変色が見られました。

 

性能試験の結果

テスト 予測値 滅菌前
の結果
滅菌5回後
の結果
滅菌10回後
の結果
滅菌20回後
の結果
サイズコントロール粒子 (10 µm径) 10.08 µm ± 10% 10.23 µm 10.13 µm 10.34 µm 10.28 µm
標準濃度コントロール (4x106/mL) 4.09x106/mL ± 10% 3.64x106/mL 3.72x106/mL 3.76x106/mL 3.72x106/mL
生存率コントロール粒子 51.71% ± 10% 54.94% 53.54% 54.04% 53.36%

測定結果のグラフを以下に示します。 実線は予測値を示し、破線は +/– 10%の許容限界範囲を示しています。

サイズ粒子の測定結果

生存率標準粒子の測定結果

粒子濃度の測定結果

 

結論

標準粒子を用いた性能試験結果から、20回のVHP処理を実施しても機器の性能は、ほとんど影響を受けませんでした。性能試験の結果はすべて期待値の10%以内でした。

この試験の条件において、機器はおよそ5年分のVHPに暴露された状態であると推測されます。VHP処理により、機器表面に退色などの若干の損傷を与えましたが、機器の性能はほとんど影響を受けず、適確な計測性能を維持していました。これは光学系モジュールを密閉すること、およびその内部を構成する光学部品のVHP耐性コーティングの組み合わせによって、機器の光学システムの劣化を防いでいると考えられます。

以上の結果をまとめると、Vi–CELL BLUは、VHP試験を繰り返しても、性能に大きな影響を受けないことから、日常的にVHP滅菌を実施している環境での使用に適しています。

 

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