ナノフローサイトメーターCytoFLEX nano:ナノスケール・フローサイトメトリーの新境地

ナノフローサイトメーターCytoFLEX nanoは感度と分解能が高く、最小40 nmのナノ粒子(ポリスチレンビーズを使用)の検出と特性評価が可能で、粒子のサイズ差が10 nm以下であっても、その2つの粒子を正確に識別し、分離することができます(シリカビーズを使用)。また、不均一なポピュレーションにわずかに存在するターゲット粒子の特性評価も可能です。

はじめに

ナノスケール・フローサイトメトリーは様々な研究分野で広く活用されており、診断ツールや標的化ドラッグデリバリーシステムの開発を進展させる可能性を秘めています。また、ナノ粒子の特性解析が可能なため、テーラーメイド医療 やナノ医療に新たな道を拓きます。ナノフローサイトメーターCytoFLEX nanoは感度と分解能が高く、ナノ粒子の検出と特性評価が可能です。

ナノスケールに対応したナノフローサイトメトリーは、多くの利点を持つパワフルな技術ですが、検出感度やサイズ分解能に課題もあります。この問題については、既存のフローサイトメーターの検出限界を広げ、洗浄技術を改善してサンプル調製に洗浄工程を加え、複数の実験コントロールと共通するチェックポイント を追加することで、解決が試みられています。

ナノフローサイトメーターCytoFLEX nanoは、6つの蛍光チャネルと5つの側方散乱光パラメータを搭載したことで、ナノフローサイトメトリーを新たなレベルに引き上げるとともに、より柔軟な実験計画を可能にしました。確固としたQCプロセスと蛍光感度モニタリングツール、複数のオプションから選択可能なオンボード洗浄機能により、性能の一貫性を担保しています。以下に、5カラーパネルを用いて健康なドナーから単離したPPP(乏血小板血漿)由来EVの解析を行った例を示します。

プロトコル

K3-EDTA入りの真空採血管を使用して採取した全血を160 x gで5分間遠心分離して乏血小板血漿EVsを取り出した後、0.2 μmフィルタでろ過し、qEV single 70 nm(Izon社製)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行いました。‌ナノフローサイトメーターCytoFLEX nanoで画分4~12を測定し、EVの量が最も多い画分を選択しました。これにより、染色後、十分に高い希釈 ができるため、抗体凝集体やその他のコンタミネーションを除去できます。抗体を室温で10分間、20,000 x gで遠心して凝集体を取り除き、単一抗体に対する滴定を行って、蛍光スピルオーバーを最小限に抑えるよう調整しました。コンペンセーションマトリクスを適用し、サンプルの蛍光スピルオーバーを補正しました。


Figure 1. CytExpert nanoソフトウエアのデータ取得・コンペンセーションマトリクスの設定

結果

ナノフローサイトメーターCytoFLEX nanoで、最小70 nm(Izon社 SEC qEV single 70 nmの検出限界)の血漿由来EVを効果的に検出・分離することが可能です。CytoFLEX nanoは、単一のPPP EV粒子から、複数の蛍光シグナル(PB、FITC、PE、APC、 PC7など)を区別して検出できるため、CD63テトラスパニンやCD235aなどのマーカーを低発現している数の少ない陽性ポピュレーションから赤血球コンタミネーションを確認できます。また、抗体のバックグラウンドノイズによる干渉を受けないので、明瞭に検出できます。フローサイトメーターの多くは直径100 nm以下のEVを検出できないことが知られているため、この検出感度の高さはEV研究に大きく役立ちます。



Figure 2. 5カラーパネルを用いた、健康なドナーから単離したPPP EVの解析。
A. CD81 PB、CD9 FITC、CD235a PE、CD63 APC、およびCD61 PC7用のシングルカラーコントロール。
B. CD81陽性、CD9陽性、CD63弱陽性を示す、パネルで染色したサンプル。CD235aは、赤血球や血小板表面のCD61に結合したEV由来のコンタミネーションが少ないことを示す。

フローサイトメトリーは、他に類を見ない感度と単一粒子での特性評価が可能な手法ではあるが、データは任意の単位で表されます。フローサイトメトリーの進化に伴い、研究者はデータをナノメートルやMESF(mean equivalent soluble fluorescence)などの絶対単位で表現することが必要になります。これを実現するためには、検出粒子のサイズと蛍光量を評価する適切な方法を選択しなければなりません。ありがたいことに、時間や複数の方法で比較可能なデータの作成を支援するFCMPass1などの強力なツールが、すでに出てきています。

参考文献

  • Welsh, J. A. et al. FCMPASS Software Aids Extracellular Vesicle Light Scatter Standardization. Cytometry A 97, 569–581 (2019).

本製品は研究用です。診断には使用できません。

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