バイオ医薬品の細胞株開発に向けたモノクローンの選別とエンリッチメント

はじめに

  • 抗体などの目的タンパク質を発現する細胞をエンリッチメントすることで、細胞株開発の効率が向上します。
  • マニュアル操作による粘性の高い培地のプレーティングは、操作の一貫性が非常に低くなります。粘性の高い半固形培地のプレーティングを自動化し、CHO細胞のコロニー増殖と解析の一貫性を担保します。
  • 抗体分泌量の多いクローンを ClonePix 2 が識別・ピッキングし、薬剤選択が必要ないため、細胞に与える負担を最小限にできます。

 

バイオ医薬品の細胞株開発は、非常に複雑で手間のかかるプロセスです。トランスフェクションした細胞プールから、抗体あるいは他のタンパク質を安定して発現・分泌する細胞を探し出すため、何千ものウェルや細胞をスクリーニングします。このプロセスは、トランスフェクトした細胞プールを、薬剤耐性遺伝子を用い、選択培地で培養すれば、その効率を向上することができます。しかしながら、このアプローチでは、最も重要な特性である、細胞増殖性や、タンパク質の産生と分泌量について評価されません。さらに、この選別環境では、薬剤耐性能がある細胞にも、大きなストレスがかかるものであるため、細胞増殖やタンパク質生成に悪影響を及ぼす可能性があります。

これとは別の選別アプローチとして、Molecular Devices社製ClonePix 2 System(Figure 1A)を用いる方法があります。このシステムでは、半固形培地に形成された細胞コロニーの特徴を画像分析します。細胞増殖の速さをコロニーのサイズで判断します。抗体と結合する蛍光検出試薬を培地に添加することで、高濃度の抗体を分泌するクローンを検出できます。その後、ClonePix 2が培地から望ましいコロニーを選び、96ウェルプレートに移して懸濁培養し、最終的にシングルセルの単離と増殖を行います。

このアプローチの問題点の一つは、半固形培地では一貫性のあるプレーティングを行うことが難しいことです。培地に粘度があるため、一貫性のある計測とプレーティングが難しく、気泡が発生した場合、その後のコロニーの画像やピッキングに悪影響が及びます。このような課題を克服するため、Biomek i7自動分注ワークステーション(Figure 1B)を使用し、半固形培地での細胞のプレーティングを自動化しました。

Biomek i7 自動分注ワークステーション

Figure 1. ClonePix 2( A) と、各種装置を組み入れたBiomek i7 自動分注ワークステーション(B)。

培地の乾燥を防止するため、6ウェルプレートは、ウェルとウェルの間にPBSを手動で入れ、Biomekシステムに設置しました。プレーティングの前に、蛍光試薬CloneDetectを、半固形培地CloneMedia CHO Growth A(ともにMolecular Devices社製)に1:100で添加しました。分注量が多くなると分注精度が損なわれる恐れがあるため、培地を Quarter Reservoir Divided by Length の 19 mLラインまで注ぎました。

インテグレートしたVi-CELL BLU生死細胞アナライザで、IgGを発現しているCHO細胞を自動計数し、分布が均一になるよう、ディスペンスしながらリザーバ全体に19,000細胞を分注しました。分注制御を微調整して細胞を培地中でゆっくり攪拌し、気泡を発生させないように6ウェルプレートに分注しました(Figure 2)。細胞のコロニー生成と抗体分泌を促すため、インテグレートしたCytomat インキュベーター(Thermo Fisher)でプレートを12日間インキュベートしました。

半固形培地での自動化。

Figure 2. 半固形培地での自動化。Biomek i7 自動分注ワークステーションのSpan-8 ピペッターで、細胞を培地へ添加し、リザーバ内で細胞を攪拌した後、 3mL を6 ウェルプレートに分注しました。

Figure 3は、Day 12の明視野像とFITC画像をオーバーレイ表示したものです。コロニーが存在していることから、自動プレーティング後も細胞が生存していることが分かります。コロニーがウェル全体に広がっていることは、プレーティング前に十分に攪拌されたことを意味しています。他のクローンとの距離が近すぎると、コロニーのピッキングができない場合があるため、コロニーの分散は非常に重要です。安定して発現している細胞系統を使用したにもかかわらず、ウェル内に生じたクローンが不均一であったことから、この選別アプローチが有用であることが示されています。大きなコロニーの大部分が蛍光を発し、IgGが生成されたことが示唆される一方、抗体分泌の強さを示す大きな蛍光ハローが認められたのはごく一部のみです。このことから、細胞培地からタンパク質濃度のみを指標にする場合、正しいクローンを適切に選択することは困難であることが示唆されます。

コロニーの画像

Figure 3. コロニーの画像。自動プレーティング後12 日目のコロニーの明視野像と蛍光画像をオーバーレイ表示しました。抗体分泌を示す大きな蛍光ハローが認められたのはコロニーの一部のみでした。

次にClonePix 2で自動化した培養の画像を取得し、これらのコロニーがピッキング可能かどうかを確認しました。6ウェルプレートから、ピッキング対象として90のコロニーを、サイズを基準(最大~最小)に特定しました。 Figure 4は、ピッキング後2週間の増殖でコンフルエントに達した状態です。細胞クローンを移した90ウェル中79で、細胞増殖が認められました。予想した通り、ピッキングの効率はコロニーのサイズとともに低下しました。ピッキング効率が88%であることから、半固形培地とClonePix 2を用いた自動プレーティングは有効であることが示されました。

ピッキングの効率

Figure 4. ピッキングの効率。 90 のコロニーをピッキング対象として選択、そのうち79 のウェルで、2 週間後、細胞増殖が認められました。CloneSelect Imager (Molecular Devices)でコンフルエント状態を測定しました。

ClonePix 2では、蛍光イメージングを利用して細胞増殖とタンパク質分泌の順位付けを行うことで、選択培地での生存性を確認するよりも選別の妥当性が向上します。半固形培地中での細胞のプレーティングを自動化し、抗体検出試薬を用いることで良好なコロニー増殖、画像取得、ピッキングを行うことが可能となりました。

Biomek自動分注ワークステーションは、疾患やその他の臨床状態の診断への使用についての検証は行っていません。ベックマン・コールター・ライフサイエンス社のゲノム試薬キットは、研究用としてのみ使用できます。
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