ハンドヘルド型気中パーティクルカウンターで行う クリーンキャビネットの定期的な評価

パーティクルカウンター資料集

著者:Bob Latimer (ボブ・ラティマ)
Bill Bars (ビル・バース)

はじめに

多くの産業分野において、層流型のキャビネットは広く活用されていますが、それはクリーンブース、クリーンキャビネット、クリーンベンチ、フローキャビネットや安全キャビネットなどとも呼ばれています。そうしたクリーン機器は、その中で扱われるマテリアルや測定用の機器等(例:電子、光学、バイオサンプルや医療機器等)が気中浮遊物質によるコンタミネーションの影響を受ける可能性を最小限にするような設計になっています。

層流型キャビネットの構成

図1 - 典型的な横型のフローキャビネットのデザイン

層流型キャビネット(Laminar Air Flow Cabinets - LAF)には、垂直型と横型タイプの両方があります。何れの場合であっても、LAFのようなクリーン機器は、その中で扱われるマテリアルの為に、清潔で無菌な環境を提供します。 ISO 5 (Fed Std Class 100) の清浄度クラスのHEPAフィルターを通したエアーが継続的にオペレーターの作業エリアの上を流れることで、扱われている製品やマテリアルを汚染から守ります。HEPA(High-Efficiency Particulate Air)フィルターは、一定の性能規格を満たしているフィルターのことです。 HEPAフィルターとして認定されるためには、定格流量で0.3 μmサイズの無水シリカ粒子の99.97%を除去出来なければなりません。このサイズは、最も浸透する粒子のサイズで構成されており、それはまた最もフィルタリングされるのが難しいとされています。HEPAフィルターの0.5 μmに対する粒子捕集性能は0.3 μmのそれに比べて非常に高いと言えます。0.5 μmの値でISO 14644-1に準拠した定期的なテストが一般的に行われています。

層流型キャビネット内の粒子パフォーマンステスト

クリーンキャビネットが規格通りに稼働しているかを定期的に評価することは良い習慣です。テスト頻度とサンプルポイント数は、アプリケーション、リスク評価、ワークフローや作業量などの要因数によって影響を受けることを考慮しなけれなければなりません。

図2 - 層流型キャビネットにワークステーションをセットアップした様子

 

図3 - サンプルポイントの特定

ここでは、ある医療機器メーカーで使用されている層流型キャビネットがISO 14644-1クラス5に準拠していることを確認するために、6ヵ月毎に使用されている例をあげています。素材やワークフローのリスク評価基準に従って、4つのサンプルポイントがセレクトされています。ISO 14644-1で、以下の9つのサンプリングロケーションに分類されるエリアでは、T検定が行われることが要求されていて、統計的な差異を減らす為に、更にもう2つのロケーションが選択されます。

ハンドヘルドパーティクルカウンター 【MET ONE HHPC 3+】

図4 - ハンドヘルドパーティクルカウンター MET ONE モデルHHPC 3+MET ONE HHPC+シリーズのハンドヘルドパーティクルカウンターは、層流型キャビネットのモニタリング及びISO 5のクラス分類の何れにとっても良い選択です。例えば、3粒径タイプであるHHPC 3+などは、手頃な解決策の一つです。ハンドヘルドパーティクルカウンターは比較的少ない流量でサンプリングする(殆どの場合0.1cf3/分)ので、層流型キャビネットは内部面積が小さいために測定のためのサンプルポイントが少なく済む為、ほんの数分でクラス分類することが可能です。

サンプリング

以下のパーティクル測定データは、4つの特定されたロケーションで得たものです。使用されたパーティクルカウンターは、ISO 14644-1規格に従って、2つのサンプリングをそれぞれ1分間行い、そのデータが 個/M3毎のカウントで表示されるように設定されました。

LAF 1 Number of locations:4
個/M3 Location 1 Location 2 Location 3 Location 4
Sample 1 (60 sec) 1003.5 1890.2 490.1 706.7
Sample 2 (60 sec) 798.4 809.7 305.2 353.4

表1 - パーティクルの測定結果

測定結果の計算

要件毎に、T検定のファクターは参照テーブル内の9つ又はそれ以下のサンプル測定されるロケーションから決定されます。ここで紹介された4つのサンプリングロケーションのケースでは、T検定のファクターは2.4です。

行われる計算は以下の3つです。

  1. 各ロケーションのパーティクル測定結果の平均値(Location Average)
  2. 1で算出された平均値の平均(Mean of Averages)
  3. 平均値の差の二乗(Square of Errors)

ここに示す例では、それぞれのロケーションの平均値(Location Average)は二つのサンプルの平均値で計算されています。表にある “Mean of averages” とは、単に表で示している4つのLocationの ”Location Average” にある値の平均値のことです。各ロケーションの ”square of errors” にある値は、 ”Location Average” と ”Mean of Averages“ の差の二乗です。

Student T factor
95% UCL
Number of locations t
2 6.3
3 2.9
4 2.4 C
5 2.1
6 2
7 1.9
8 1.9
9 1.9

表2 - T検定ファクター

LAF 1 Number of locations:4
個/M3 Location 1 Location 2 Location 3 Location 4 Mean of averages
Sample 1 (60 sec) 1003.5 1890.2 490.1 706.7
Sample 2 (60 sec) 798.4 809.7 305.2 353.4
Location Average 901 1350 397.7 530.1 794.7 A
Square of errors 11299.7 308358.1 157609 70013.2

表3 - ロケーション毎の平均値と、平均値の平均の差の二乗を計算

次に、合計されたSquare of errorsはロケーション数から1を引いた数で割られます。

Finally, the 95% UCL (upper confidence limit) is calculated
Sum of squared errors 547279.9
Sum of squared errors / (# locations – 1) 427.1 B
95% UCL = A + C × ( B √ # Locations ) 1307.2
ISO Class 5 Limit 3520
Result PASS

表4 – 95% UCLを計算し、PASS/FAILを決定

最後に,95%UCLが計算されて、ISO クラス 5の0.5µmの限界値である3520個/M3 と比較されます。
結果はPASS(合格)で、このLAFはISO クラス5に準拠していると認定されます。

Class
maximum particles/m3
FED STD 209E
equivalent
≥0.1 µm ≥0.2 µm ≥0.3 µm ≥0.5 µm ≥1 µm ≥5 µm
ISO 1 10 2
ISO 2 100 24
ISO 3 1,000 237 102 35 8 Class 1
ISO 4 10,000 2,370 1,020 352 83 Class 10
ISO 5 100,000 23,700 10,200 3,520 832 29 Class 100
ISO 6 1,000,000 237,000 102,000 35,200 8,320 293 Class 1000
ISO 7 352,000 83,200 2,930 Class 10,000
ISO 8 3,520,000 832,000 29,300 Class 100,000
ISO 9 35,200,000 8,320,000 293,000 Room air

表5– ISO 14644-1 クラス毎の限界値

MET ONE HHPC 3+について

MET ONE HHPC 3+はハイパーフォーマンスでありながら、リーズナブルな3粒径タイプのハンドヘルドタイプのパーティクルカウンターで、製品のコンタミに敏感な環境の為にデザインされているモデルです。例えば、ISO14644の規格に沿って日常的に0.5μmの粒子モニタリングが行われるのは、航空宇宙、光学部品の組み立て工程や医療機器の業界等です。

製品の主な特長

  • 高解像度のディスプレイは、見たいデータだけをクリアかつ読みやすい大きなフォントで表示することが出来ます。
  • 約690gと軽量で、スリムなデザインから片手での操作も可能です。
  • ISO クラス 5 (FED STD Class 100) 、クリーンルームや管理された環境を直ぐに確認、又は検証します。
  • USBメモリを使用し、データは簡単に取り出せます。また、それをPCに差し込めば、取ったデータをエクセル上で確認することも出来ます。

筆者について

Bob Latimer is the Air Products manager with Beckman Coulter Life Sciences with a primary focus on contamination monitoring instrumentation for controlled environments in pharmaceutical, electronic and industrial manufacturing applications. Bob, a qualified Electrical and Electronic Engineer, has 25 years’ experience working within particle counting technology, latterly attaining his MBA at Warwick Business School, UK.

Bill F. Bars is an Application Scientist for Beckman Coulter Life Sciences in Grants Pass, Oregon, USA. He has created and developed many of the production calibration processes and procedural tools for the Met One and HIAC branded Beckman Coulter Particle Counting products. He received his Electronics Engineering degree from DeVry Institute of Technology. He has worked for Beckman Coulter Life Sciences for nearly 18 years. You can email Bill F.

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