大容量遠心の効率化

新しいロータを選ぶ際、最高回転数や最大処理容量から遠心効率性を判断する方が多くいます。しかし、それは本当に最善の方法なのでしょうか? ロータの遠心効率には、どのようなファクターが関連するのか検証してみましょう。

単純に比較できるよう、図1 のように公称最大容量が同じ6 Lで、最高回転数が異なる3種類のロータで比較しました。

6 Lのサンプルを遠心処理する場合、あなたなら、どのロータを選びますか?
最も早く処理できるロータはどれでしょうか?




最大容量 6 L
最高回転数 8,000 rpm 9,000 rpm 8,500 rpm
沈降経路長 103.8 mm 129 mm 132 mm
kファクタ 2,482 3,415 4,313

図1. ロータ3種比較

 

遠心効率の考え方:kファクタ

遠心効率を検討する際、 kファクタという尺度を使用します。ロータのkファクタは図2の計算式で求めることができます。2.53×105 は角速度の換算係数で、rmax は最大回転半径、rmin は最小回転半径を示しています。一般的にkファクタは、図2の計算をしなくても、 kファクタはロータカタログやマニュアルなどでご確認いただけます。さらに、沈降時間tは図3のような簡単な式で表すことができ、kファクタを沈降計数S で割ることで遠心時間tが分かります。つまり、kファクタの値が小さいほど、遠心効率の高いロータであるということです。

図4は、固定角ロータとスウィングロータの経路長の違いを示しています。スウィングロータの方が経路長が長く、遠心条件が全て同じであっても、経路長が長くなるほど、沈降にかかる時間は長くなります。


図2. kファクタ計算式

図4. 沈降経路長

図3. 沈降時間

 

遠心効率の比較:6 L固定角ロータ

哺乳類の細胞をペレット化するとき、細胞が壊れず最短で遠心処理できるよう、最適な遠心条件を検討する必要があります。ここでは、図1のロータ3種のペレット化にかかる遠心時間を比較します(図5)。図1の通りの仕様で、遠心処理を最適化し、細胞のペレット化に、当社のJLA-8.1000ロータでは15分かかったとします。 A社、B社の最大回転数はJLA-8.1000より高いですが、沈降経路長が長いため、30 ~ 40%ほど長く時間がかかることが分かります。

では、培養量が各ロータの最大容量より多い場合はどうでしょうか? 例えば、同じ遠心条件で、40 Lのバイオリアクターを処理する場合、最大容量6 Lのロータでは7回遠心操作を繰り返します。すると、時間差は拡大し、JLA-8.1000を使用すれば、約30 ~ 45分早く遠心処理を完了できます。

図5. ロータ3種の遠心処理時間の比較

 

遠心効率の比較:6 L vs 10 L固定角ロータ

同様に、最大容量の違うロータで、容量以外の条件を全て同一とした場合に、40 Lのサンプルを遠心処理する時間を比較しました(図6)。10 Lロータでは4回の遠心操作で完了しますが、遠心時間は2.6 時間かかり、6 Lロータより約1.5倍の50分以上遠心時間がかかることが分かりました。



最大容量 6 L 10 L
最高回転数 8,000 rpm 5,500 rpm
沈降経路長 103.8 mm 129 mm
kファクタ 2,482 6,662

図6. 6 L vs 10 Lロータ 遠心処理時間比較

 

このように、ロータの選定の際には、最高回転数や最大処理容量ではなく、kファクタで遠心効率を確認することで相対的な遠心時間の短縮につながります。遠心効率の高いロータを検討する際には、ぜひ当社へご相談ください。

 

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