自動セルカウント装置3種およびマニュアル法との比較によるVi-CELL BLUの変動性解析

はじめに

血球計算盤を用いる細胞数のカウントは、一般的に信頼できる方法だと考えられています。しかし、手動でのカウントと自動セルカウントにはいくつか大きな違いがあり、これによって手動でのセルカウントが信頼性の低い結果につながる可能性があります。マニュアル操作によるカウントには、正確なサンプル量を分注し、トリパンブルーと混合してカウンティングチャンバーに移す、といった、手技による誤差が発生しやすい工程があります。また、目視による顕微鏡と数取器によるカウントは、作業者の主観的な判断をさけることは困難です。細胞の生存率が低下し始める前にカウントする必要から来る時間的制約によって、カウントできるグリッドが限られ、ばらつきの増加や、結果に対する統計的信頼性の低下につながる可能性があります。生細胞と死細胞の判別は、客観的な判断基準を設定することがさらに困難であり、同じラボ内であっても、統一性のない結果が生じる場合があります(Salinas et al. 1997)。自動セルカウンターを使用した場合、再現性および一貫性が極めて高い方法でサンプリングと混合を行い、画像を用いる計数アルゴリズムで効率よくカウントします。 生死細胞自動セルカウンター Vi-CELLBLU は、マニュアルカウントに代わる自動計数ソリューションを提供します。Vi-CELLBLUは、自動でトリパンブルーを混合し、染色した細胞サンプルをフローセルに送り込み、わずか90秒間に最大100画像を取り込みます。チューブ、96ウェルプレートのどちらにも対応しています。アプリケーションノート「生死細胞自動セルカウンター Vi–CELL BLUの機器間差評価テスト」で説明しているように、Vi-CELLBLUは機器間の変動性が小さいことが実証されています。

本アプリケーションノートでは、3種類の細胞懸濁液の細胞数と細胞生存率を、様々なメーカーの自動セルカウンター4機種を用いて解析し、血球計算盤を用いたマニュアル法と比較しました。この比較は第三者によって行われ、得られたデータはJMP16で解析されました。

使用した3種類の細胞と培地の種類

細胞株 培地 培養日数
CHO K1 CDCHO + Pen-Strep 9
HEK Exip293 Expi293 + Pen-Strep 7
Sf9 ExpiSf9 Sf-900 + Pen-Strep 8

Table 1. 使用した細胞および培地。

計数装置と仕様

方法 細胞直径範囲 細胞密度範囲 サンプル量 解析時間 自動調製 自動カウント
XR 3-70μM 5E+04 - 1E+07 500μL <180 sec Yes Yes
BLU 2-60μM 5E+04 - 1.5E+07 200μL <130 sec Yes Yes
Device 2 4-70μM 1E+05 - 8E+07 400μL 228 sec Yes Yes
Device 1 NA 1E+04 - 1E+07 10μL 10 sec No Yes
Manual NA NA 10μL Variable No No

Table 2. 装置および仕様。装置設定の最適化は、各メーカーの担当者が行いました。

培養方法

細胞をLN2ストレージから取り出し、15 mLの培地で4~6日間回復させました。その後、50 mLフラスコで4~6日間培養しました。次に、75 mLの培地が入った4つのフラスコそれぞれに、細胞を5 x 10^7 cells/mLで播種しました。

サンプリング方法

各フラスコから5 mLを採取し、10%、30%、50%、70%、90%希釈しました。最長で9日間毎日、各細胞のそれぞれの濃度につき3~4回繰り返して測定を行いました。

統計的方法

値を希釈係数で割り、標準化された希釈前の細胞濃度を求めました。生存率は、生存細胞数を総細胞数で割って求めました。

汚染されたサンプルや解析中に装置の故障が発生したサンプルは、統計解析から除外しました。値がデータセット全体のトレンドから明らかに外れている外れ値は、手動で削除しました。例えば、ある測定値が同じサンプルの測定値平均の1.5倍を超えて上回った、あるいは下回った場合などです。マニュアルカウントの測定値はばらつきが大きく、手動での外れ値の削除は実施しませんでした。1~6日目において生存率の測定値が70%未満の値は削除しました。2,240データポイントのデータセットから、計42のデータポイントが外れ値として削除されました。

変動性解析の結果

Figure 1. 総細胞数(TCD)

Figure 2. 生細胞数(VCD)

Figure 3. 生存率%

Figures 1-3. Day(7 日目~ 9 日目)および方法(5 種類)別の結果の変動(最大4 回の繰り返し測定)。結果を希釈係数で割り、データを希釈前細胞濃度に正規化しました。

パーセント(%CV)で表示した繰り返し測定値の変動係数:細胞別の全培養期間の平均

Figure 4. 方法および細胞別の、TCD、VCD、生存率の平均%CV。CV(%)は、各細胞および方法について、各培養期間で算出された%CV 値の平均です。

おわりに

以上の結果から、Vi-CELL BLUは最も測定間のばらつき (%CV) が小さいセルカウントの方法でした。Vi-CELL BLUは、細胞数や細胞の種類に関わらず、測定間の変動が少なく、測定時間が短いことから、ウイルスや抗体産生などの生産培養プロセスにおける生産培養プロセスにおける細胞の健全性を監視するツールとしても適しています。

測定間の変動係数が低いことで、測定を過剰に繰り返して行わなくても一貫したデータを取得することができます。高スループットおよび中スループットのアプリケーションでは、所要時間の短縮と、余分な繰り返し測定を行う代わりに別のサンプルでの測定ができるため、非効率性に起因するコストを削減できます。さらに、装置間のばらつきが少ないという特長から、複数の施設で同等の測定が必要な場合にも有用です。生死細胞自動セルカウンターVi-CELL BLUの導入により、一貫性のある結果を根拠として、細胞状態モニタリングにおける重要な決定を確信して下すことができます。

参考文献

1. Salinas, M et al. Ann Rheum Dis. Oct 1997; 56(10): 622-626. Comparison of manual and automated cell counts in EDTA preserved synovial fluids. Storage has little influence on the results.

2. Beckman Coulter. 2019. Application Note. Evaluation of Instrument to Instrument Performance of the Vi-CELL BLU Cell Viability Analyzer.

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