医薬・製薬業界で求められるデータインテグリティと気中パーティクルカウンターMET ONE 3400+の機能

はじめに

データインテグリティとは、元々は情報処理などの分野で使われる用語で、ソースデータがすべて揃っていて、欠損や不整合がないことを保証することを意味したものである。医薬・製薬業界においてはFDA(米国食品医薬品局)が提唱している概念であり、その要点はALCOA(アルコア)原則がベースとなっている。また、EMA(欧州医薬品庁)がALCOAにCCEAの4項目を追加したALCOA+(アルコアプラス)に則ったデータであることが求められている。例えば、都合の良い試験データだけを残し、不適な試験データを削除する等のデータの不正防止または不正を疑われるような行為の防止が、データインテグリティの本質であるが、残念なことに近年でも国内の製薬企業においてデータ改ざん・データ偽造などの不適切な行為が発生したことも記憶に新しいことであり、日本だけに留まらず製薬業界全体でも大きな問題を抱えており、データインテグリティに関する FDA Form 483(査察における指摘事項の通知) や Warning Letter(警告書)が多く発出されているのが実情である。

# 指摘項目 件数
1 データインテグリティの基本要件(ユーザー管理、監査証跡、電子記録の保護等) 数えきれないほど
2 監査証跡のレビュー、電子記録のレビュー 159
3 OOS処理、再テスト 147
4 システム管理者権限の付与 110
5 バックアップ (国内指摘増加中) 94
6 電子記録の維持 89
7 ブランク用紙の管理 89
8 時計の真正性 65
表1. FDAのデータインテグリティ指摘項目および件数

 

出典:ベックマン・コールター WEBセミナー(2020年12月16日開催)
医薬品工場におけるデータインテグリティ実務対応 〜FDA査察におけるDI指摘500件をふまえ〜
合同会社エクスプロ・アソシエイツ 代表 望月清

 

データインテグリティの基本要件

データインテグリティの要件として 「ALCOA原則」 や CCEAが追加された 「ALCOA+」 があり、それらの原則・指針に基づいた管理が求められている。

図1.ALCOA原則(アルコア)

 

図2.ALCOA+(アルコアプラス)

 

表1で示したFDAのデータインテグリティに関する指摘項目および件数から、本稿では 「アカウント管理」、「監査証跡」 について ベックマン・コールターの 気中ポータブル型 パーティクルカウンター MET ONE 3400+がどのように貢献できるかご紹介します。

 

ユーザー管理

ユーザー管理が適正化されていない場合、データインテグリティ対応について信頼性を確保することができません。ここではユーザー管理で重要なポイントをピックアップします。
既存の気中のパーティクルカウンターにおいては、ただ単純にオペレーターが測定を行い、感熱タイプの記録紙に測定データを印字して管理しているのが一般的でした。
データインテグリティ対応として問題ないでしょうか?
ALCOA原則の Attributable(帰属性)では、いつ・誰が記録したデータか明確であることがポイントとなりますが、まずはユーザー毎にユーザーIDおよびパスワードの設定が必要となります。

図3.旧来からのパーティクルカウンター

 

 

MET ONE 3400+では、すべてのユーザーは予め管理者が設定したユニークなユーザー名とパスワードでMET ONE 3400+にログインする必要があります。なお、資格情報はMET ONE 3400+本体もしくはWebブラウザで管理者がログインすることで設定および変更ができます。同様に、会社のIT Microsoft Active Directoryにより社内インフラと統合して管理することも出来ます。
アクセス権限の階層は、管理者・マネージャー・技術者の3階層があり、管理者により振り分けられた階層によりアクセスおよび操作をコントロールすることが可能となり、いつ、誰が、何を行ったのか、監査証跡に記録されます。

図4.MET ONE 3400+(ログイン画面)
図5.MET ONE 3400+(ユーザー管理設定画面)

 

 

監査証跡

監査証跡のないデータは、前述のユーザー管理同様にデータインテグリティ対応について信頼性を確保することができません。ここでは監査証跡で重要なポイントをピックアップします。
今日でも多くの国内の医薬・製薬企業においては、環境モニタリングに使用される気中パーティクルカウンターの監査証跡は手書きで管理されているのが主であり、記入ミスはもちろんですが、データ改ざんやねつ造の可能性もあります。
データインテグリティ対応として問題ないでしょうか?
そもそも監査証跡は、医薬・製薬のマーケットにおいては、製品の安全性を担保するための重要なポイントであります。
監査証跡は、データ記録の生成・修正・削除などのオペレーターが行なった全ての操作内容を時系列(タイムスタンプつき)で記録したデータで、4W(When:いつ、Who:誰が、What:何を、Why:何故)が明確になっている必要があります。

図6.MET ONE 3400+(監査証跡画面)

 

 

MET ONE 3400+では、前述の通りすべてのユーザーは予め管理者が設 定したユニークなユーザー名とパスワードでMET ONE 3400+にログインする必要があり、そうすることで全ての操作に対して監査証跡が残ることに結びつきます。
図6では、すべてのユーザーに対する監査証跡が確認できるとともに、日付やユーザー名、アクション項目によりエクスポートしたい監査証跡をフィルタリングしてエクスポートすることも可能であり、当然ながらエクスポートするにあたっては図7のように、 「いつ・誰が・監査証跡を・エクスポートした」 ことが履歴として残るようにパスワードを含む電子署名の入力が必要です。

図7.MET ONE 3400+
(監査証跡エクスポート電子署名画面)

 

 

まとめ

本稿では、気中パーティクルカウンター MET ONE 3400+の機能の中から、データインテグリティに関する FDA Form 483 や Warning Letterが最も多く発出されている基本要件の中から 「ユーザー管理」と「監査証跡」についてピックアップしてご紹介した。
MET ONE 3400+は、ヒューマンエラーを最小限に抑えるというコンセプトを基に設計されており、測定条件や場所も設定することができ、バージョン管理も可能なSOPマップ機能やWebブラウザでレビューや承認が可能な特長などもあります。
これまではラボにおけるデータインテグリティ対応が主流であったが、今後は環境モニタリングのデータインテグリティ対応も重要なポイントとなってきており、MET ONE 3400+の導入により ALCOA原則に基づいた環境モニタリングへに移行をサポートすることができます。

 

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