Multisizer 4eを用いた二枚貝の育成繁殖のための分析
二枚貝の育成繁殖におけるコールターカウンターでの計測の重要性
- 二枚貝の一種である淡水イガイの稚貝を、米国全土の川や河口域で生存できるような成熟年齢に達するまで養殖させます。
- 淡水イガイの生息水域における水質や飼料を評価モニタリングして淡水イガイのライフサイクル全体に適した条件かを評価することができます。
- 淡水イガイの個体数には顕著な減少がみられました。
- イガイ類の貝はもともと、濾過食性二枚貝として、天然のフィルタとなるため、川や河口域の水質浄化のために不可欠です。さらに、漁によって得られる食料源にもなります。
はじめに:孵化場で粒子カウントが必要となる理由
「私たちは飼料として使用している水源中の藻類、細菌、懸濁した細粒堆積物が混じり合ったものの粒子数を測定しています。私たちが育てているイガイはろ過摂食者(フィルタフィーダー)であり、適度な大きさのものであれば何でも捕食します。若いイガイは水管が8 µm未満であるため、その大きさより小さい飼料を与えなければなりません。」と、米国魚類野生生物局サンマルコス水生資源センター(San Marcos Aquatic Resources Center, US Fish & Wildlife Service)のJosh Abel氏は述べました。この目的で行われた初期の分析研究は主に顕微鏡法を用いて行われましたが、時間がかかり、主観的で、エラーを起こしやすいことが分かりました。コールター原理を採用した装置を用いることによって、飼料のサイズと濃度の両方についてかなり正確に検証できるという点で大きく前進しました。このアプリケーションで導入された実績から、Multisizer 4eは、摂取する飼料のサイズと濃度のモニタリングに最適な分析装置です。さらに、Multisizer 4eは淡水イガイの生産量向上に役立っています。以下に示す図1のグラフは、効率的なイガイ繁殖のために必要となる食料源である藻類(植物プランクトン)(上述したように8 µm未満)の限界粒子径や濃度分布の一例です。これらの測定をベックマン・コールターのMultisizer 4eで実施したところ、わずか60秒で結果が得られました。他の方法(顕微鏡/血球計)では以下に示す測定結果と同様の結果を得ることは困難です。これらの手法で、かつては数時間かかっていたものが、Multisizer4eで分析することで、今やわずか数秒で完了します。
顕微鏡法と比較したMultisizer 4eの利点
- サイズや個数を正確に測定します(特に数百個単位の場合よりも数千個単位を測定する場合)
- 分析スピード(サンプル調製時間など)が速く、測定結果は数時間かからずに60秒で得られます
- より綿密かつ正確な分析から有効なコントロールパラメータが得られます。この結果をもとに、摂取する飼料のサイズを効率的にコントロールすることができ、それがイガイ養殖の生産量向上につながります
- 高性能のソフトウエアにより、ユーザは測定後の複数のパラメータを用いて結果を分析することができます
- サイズや個数を正確に測定し、時間を節約することを考慮すると、この種のデータは血球計を用いる顕微鏡法では再現することはできません
以下に、現在、二枚貝の育成繁殖研究の目的でMultisizerを使用している施設の一覧を示します。
- Genoa National Fish Hatchery - Multisizer 3
- バージニア州魚類水生野生生物センター(ハリソンレイク)(Virginia Fisheries and Aquatic Wildlife Center at Harrison Lake) - Multisizer 4e
- サンマルコス水生資源センター(San Marcos Aquatic Resource Center) - Multisizer 4e
- インクスダム国立魚孵化場(テキサス州バーネット)(Inks Dam National Hatchery, Burnet Texas) - Multisizer 4e
- ウバルデ国立魚類野生生物孵化場(テキサス州ウバルデ)(Uvalde National Fish & Wildlife Hatchery, Uvalde, Texas) - Multisizer 4e
- ノースカロライナ州立大学応用生態学部(North Carolina State University, Department of Applied Ecology) - Multisizer 4e
- ノースカロライナ大学ウィルミントン校、カキ増殖(University of North Carolina-Wilmington, Oyster Propagation) - Multisizer 4e
- サウスカロライナ州立孵化場、ソウギョ無菌(South Carolina State Hatchery, Grass Carp sterility) - Multisizer 4
- 米国魚類野生生物局(マサチューセッツ州サンダーランド)(U.S. Fish and Wildlife at Sunderland, Massachusetts) - Multisizer 4e
参考文献
“Why does a Fish Hatchery Need a Particle Counter?” From USFWS Midwest Region Fishlines Newsletter 2014 Aug 7 https://www.fws.gov/midwest/fisheries/library/R3-Fishlines/2014-aug7.pdf
“Approaches for evaluating the effects of bivalve filter feeding on nutrient dynamics”, in Puget Sound, Washington: https://pubs.usgs.gov/sir/2013/5237/pdf/sir20135237.pdf
“The hatchery culture of bivalves: a practical Manual: Food and Agriculture Organization of the United Nations.” See 3.3.3 Estimating algal density (Coulter Counter (Multisizer) or Hemocytometer) no mention of the algal size distribution. http://www.fao.org/docrep/007/y5720e/y5720e08.htm
Global diversity of freshwater mussels (Mollusca, Bivalvia) in freshwater. Bogan, A.E. 2007. Freshwater Animal Diversity Assessment (pp. 139-147). Springer, Dordrecht.
https://usfwsnortheast.wordpress.com/2014/02/07/friday-flick-life-cycle-of-a-freshwater-mussel/
https://www.fws.gov/midwest/Endangered/clams/mussels.html
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コールター原理 コールター原理の歴史から基礎情報を始め、コールター原理を用いた粒子・細胞径分布・計測装置「Multiseizer 4e」によるアプリケーション情報など役立つ情報を紹介しています。 |
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Multiseizer 4e Multisizer 4eは、0.2~1,600 μm の範囲で測定ができる高精度で多機能な粒子・細胞径の分布・計測装置です。粒子・細胞を実測するため、色、形状、組成、屈折率などの影響を一切受けず、様々な粒子・細胞の個数、体積、面積粒度分布の測定が可能です。 |