BioLector®を用いた浮遊植物細胞の培養

はじめに

植物細胞は、多くの組み換えタンパク質の発現系として有望ですが、浮遊植物細胞の培養をモニタリングするのは、多くの場合、多大な手間がかかります。特に、マイクロリットルスケールに適したオンラインモニタリング技術は非常に限られています。 

この課題は、BioLector®テクノロジーを使用することで解決できます。BioLector®は革新的なマイクロバイオリアクターシステムであり、振とうを停止したりサンプルを採取したりすることなく、重要なバイオプロセスパラメーターを、オンラインでモニタリングできます。細胞株のスクリーニングや培地の最適化は、実験計画法(DoE)と組み合わせた場合でも容易に実施できます。これは、増殖や生成物形成の制限などを可視化できるためです。 

これまでBioLector®は主に細菌や酵母の培養に使用されてきました。本アプリケーションノートでは、Nicotiana tabacum を例に、BioLector®テクノロジーがマイクロリットルスケールでの浮遊植物細胞培養にも利用できることを示します。

翻訳について

本ページは英語版コンテンツをもとにAI翻訳および翻訳者による編集を経て日本語化しています。原文の内容を正確に反映するよう努めていますが、内容に差異がある場合は英語版をご参照ください。

BioLector®の動作原理

まず、BioLector®の動作原理に関する基本情報をFigure 1に示します。ここでは散乱光測定を例に説明します。 

Figure 1 BioLectorの動作原理
Figure 1: BioLector®の動作原理

励起光は光ファイバーバンドルから浮遊培養液内へ照射されます。光は培地中の粒子(=細胞)によって全方向に散乱します。その一部は光ファイバーの方向へ戻り、後方散乱光として集められ、光電子増倍管へ導かれます。散乱光量は細胞懸濁液中のバイオマス濃度に比例します。可視光領域の蛍光測定も同様の原理で行われます。ウェルに励起光を照射し、発生した蛍光を検出します。pH値および溶存酸素(DO)は、オプトードと呼ばれる光学センサーで測定されます。

材料および方法

浮遊培養した Nicotiana tabacum BY-2細胞を使用しました。使用した遺伝子組換え細胞は緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現しています。GFPはBioLector®で容易にオンラインモニタリングできます。
培地には、Murashige and Skoog basal salts with minimal organics(MSMO)をベースとしたものを使用しました。
特に記載のない限り、4.4 g/LのMSMO(Sigma 6899)に、0.2 g/Lリン酸二水素カリウム、0.2 mg/L 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、0.6 mg/Lチアミン、および30 g/Lスクロースを添加しました。培地のpHはオートクレーブ処理前に5.8へ調整しました。

前培養は、7日間培養した細胞培養液20 mLを、新鮮培地180 mL(添加剤および100 mgの硫酸カナマイシンを添加したMSMO)に接種して行いました。細胞は250 mL三角フラスコ内で、20℃、190 rpm(振とう径d0 = 50 mm)で培養しました。本培養はBioLector®で実施し、特に記載のない限り、各ウェルに10%(v/v)の前培養液(充填細胞体積 約75%)を接種しました。48ウェル丸型ウェルプレート(品番:MTPR48-BOH)を使用し、各ウェルの液量は1,000 µLとしました。BioLector®は26℃、1,000 rpm(d0 = 3 mm)で運転しました。実験はn=3で実施し、特に記載のない限り、平均値を示しています。

培養の再現性

BioLector®を用いた浮遊植物細胞培養が可能であることを実証するため、まず培養の再現性とオンラインモニタリングシグナルの妥当性を評価しました。そのため、5つのウェルを全く同じ条件で培養しました。散乱光、2種類の蛍光シグナル(GFP、NAD(P)H)、pH、DOを測定しました(Figure 2)。各シグナルの推移を以下に示します。ウェル1およびウェル5では、サンプリングのため培養を途中で終了しました。

Figure 2 植物細胞培養の再現性
Figure 2: 植物細胞培養の再現性 

グラフ2Aに散乱光シグナルを示します。予想どおり、典型的な指数増殖パターンを示しています。約110時間後に見られるバイオマスシグナルの低下は、バイオマス自体が減少したためではなく、細胞の形態変化が散乱光に影響を及ぼしたことによるものです。植物細胞は指数増殖期には丸みを帯びた形状を示し、炭素源が枯渇すると伸長します。

pH(2D)およびDO(2E)のシグナルは、予想どおりの推移を示しています。最初の24時間でpHは5.8から最小値5.0まで低下し、その後緩やかに上昇して最大6.5に達しました。これは、培地中の窒素化合物の代謝によるものと考えられます。溶存酸素は指数増殖期に緩やかに低下し、最小値85 % a.s.に達しました。pHおよびDOの推移は、その後のすべての実験でも同様でした。そのため、以降の図には示していません。 

炭素源および接種量の影響

次の実験では、炭素源および接種量の違いが培養に及ぼす影響を評価しました(Figure 3)。炭素源には、グルコース、フルクトース、スクロースをそれぞれ30 g/Lで使用しました。また、各ウェルには前培養液を5 %または10 %(v/v)で接種しました。

グラフ3Aから、培養終了時のバイオマス濃度は、炭素源の種類や接種量にかかわらず、すべての条件でほぼ同等であることがわかります。一方、浸透圧はラグ期を延長する方向に作用しました。二糖類であるスクロースは、単糖類であるフルクトースやグルコースよりも浸透圧モル濃度が低くなります。また、接種量を5 %または10 %(v/v)に変えた場合の炭素源枯渇時点を比較することで、細胞の倍加時間を推定できます。

Figure 3 炭素源および接種濃度の違いによる影響 
Figure 3: 炭素源および接種濃度の違いによる影響

グラフ3Bでは、スクロース培地で最も高い生成物濃度が得られ、グルコース培地およびフルクトース培地では、それより低いものの同程度の濃度を示しました。NAD(P)Hシグナル(グラフ3C)は、細胞の形態変化に左右されず、バイオマス濃度を反映します。

培地の最適化

以下に、培地最適化の原理を2つの例で示します。なお、ここでは実際の培地最適化は行っていません。すべての培地成分濃度を半分にしたものを初期条件としました。対象成分について濃度の異なる3種類のストック溶液を添加し、その影響を評価しました。Figure 4に示すように、まず硝酸塩濃度を変化させました。硝酸塩濃度が高くなるにつれて散乱光の最大値は低下しましたが(4A)、生成物濃度は増加しました(4B)。NAD(P)Hシグナル(4C)は、条件が異なってもほぼ同じレベルを維持しました。バイオマス濃度が低下していることを考慮すると、この結果は硝酸塩濃度に応じて代謝が変化した可能性を示唆しています。

Figure 4 硝酸塩濃度の違いによる影響 
Figure 4: 硝酸塩濃度の違いによる影響

2つ目の実験(Figure 5)では、アンモニウム濃度の違いによる影響を評価しました。硝酸塩濃度を変化させた場合とは対照的に、栄養条件が異なっても散乱光レベルはほぼ同等でした(5A)。一方、アンモニウム濃度の増加は生成物形成(5B)に悪影響を及ぼしました。グラフ5Cに示すように、スクロース枯渇後もNAD(P)Hシグナルにはわずかな差しか見られませんでした。 

Figure 5 アンモニウム濃度の違いによる影響 
Figure 5: アンモニウム濃度の違いによる影響

オンラインでモニタリング可能な各種パラメーターに加え、培地やプロセスの最適化には、実験計画法(DoE)も非常に有望です。BioLector®テクノロジーと自動分注機を組み合わせたRoboLector®を使用すれば、DoEに基づいた実験を自動化できます。 

おわりに

浮遊植物細胞の培養では、マイクロリットルスケールで利用できる簡便なオンラインモニタリング技術は非常に限られています。BioLector®は、この課題を解決します。重要なバイオプロセスパラメーターを、サンプル採取を行うことなくオンラインで測定できます。本アプリケーションノートで示した実験では、バイオマス濃度、生成タンパク質の蛍光、NAD(P)H、pH、DOをモニタリングしました。オンラインシグナルの再現性、妥当性、および有用性が実証されました。これにより、培養プロセス条件の改善や、生成物濃度の向上を目的とした培地最適化を容易に行うことができます。さらに、RoboLector®を使用することで、DoE手法を自動的に適用することも可能です。

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