大学の共通機器室での機器管理とサポート体制について

November 2016

国立大学法人 名古屋大学大学院医学研究科附属医学教育研究支援センター 分析機器部門
共通機器管理者 伊藤 康友 先生

名古屋大学大学院医学研究科附属医学教育研究支援センター分析機器部門では、フロア型超遠心機2台、卓上型超遠心機2台、計4台の超遠心機を運用しており、約10の研究室で毎日使用しています。また、保守契約に加入しています。その中で、共通機器室を管理されている伊藤康友先生に、機器メーカーに求める事、ならびに理想的なサポート体制についてお話をお伺いしました。

1. 先生の日々のお仕事について教えてください。

超遠心機を含めて、NGS、UV分光計、プレートリーダー、培養細胞イメージャー関連の管理、メンテナンスがメインの仕事です。その装置によって異なりますが、遠心機の場合は定期的な洗浄・O-リングの消耗具合、消耗品の欠品の確認を行っています。また、遠心機の場合、故障時の被害が甚大なので、その操作指導も行っています。日々のメンテナンス以外のオイル交換や、安全教育はベックマンさんに実施いただいています。

2. 管理者として遠心機メーカーに期待するサポートと弊社のサポート体制について教えてください。

機器管理者としてメーカーにお願いしたいのは、1) 安全教育セミナー、2) アプリケーション関連で困った場合のサポート、3) 迅速な修理サポート、4) 自分達でできない定期的なメンテナンスになります。

【① 安全教育セミナー】

随分前から実施いただいております超遠心機の安全教育セミナーのおかげで、以前は恥ずかしながら10年に一度くらいの頻度で超遠心機の修理不能になるといった事故が起きていたのですが、安全教育を始めてからは、事故は起きていません。

2000年前後あたりから、研究内容がDNA解析にシフトした結果、超遠心機を使用する研究者が少なくなりました。現在、それらの研究者たちが指導する立場になりましたが、超遠心機の使用方法に不慣れなため、使用方法に関する教育は共通機器室が担っています。さらに10数ヶ国から来ている留学生も多く、文化的背景の違いから日本の常識が通じないこともあり、使用法に関する教育の重要度は増しています。

また、大学が法人化してから、新たに機器を使用する研究者に対して、安全教育が義務化され、新学期がはじまる4月から5月にかけて超遠心機を安全に使用するためのトレーニングを行わなければならなくなりました。

安全教育セミナーを個々の大学の管理者が行うことは大変ですので、それを実施して頂けるのは非常にありがたいです。とりわけ事故の写真を見せながら、事例を話して頂けると、受講者がトレーニングを真剣に聞いてくれます。あの写真を見ると適正使用の重要性を痛感できます。この結果、事故が抑止されています。

【②アプリケーション関連のサポート体制】


ここ3年ほど行って頂いているエクソソーム解析に特化したセミナーの評判がいいです。エクソソーム画分を超遠心機で分取して、動的光散乱で粒径解析するという実験の流れを我々のサンプルで行っていただいています。こういった最新のアプリケーションをセミナーという形で、我々のニーズに応えてくれることは非常にありがたいと思います。

また、使用者から「こういったサンプルの場合は、どのロータとチューブを使えばいいのか」という質問もあります。この場合、自分だけでは判断しきれませんので、ベックマンの担当営業さんからアドバイスを頂いています。迅速に適格なアドバイスを頂き、助かっています。

【③修理サポート体制】

修理サポート体制がすごく早くてありがたく思っています。電話連絡した当日での対応がほとんどで、9割以上は当日、もしくはその翌日までに対応してくれます。* 当日に修理して頂くと、用意したサンプルを無駄にせず、そのまま使えます。故障していてダメだとなっても、当日修理してくれるので、サンプルを破棄しなくて済むというのはすごくありがたいことです。サンプルの用意にも時間がかかるのはもちろんのことですが、遠心後に投与する予定の細胞も培養している場合があります。もし3日遅れると、その細胞も使えなくなってしまいます。1日、2日で済んでいるということは、用意しているサンプルや細胞をそのまま実験に使用できることに繋がりますので、非常にありがたいことなのです。
※迅速な訪問対応は保守契約にご加入いただいているお客様のメリットです。

【④定期メンテナンス】

20数年前に管理を始めたときは超遠心機のオイル交換は自分で行うのが当然だと思っていたのですが、今は、車のオイル交換と同じで、サービスマンに行って頂いた方が正確で、結果的に安いことに気が付きました。現在、保守契約をしているので、オイル交換はその範疇なのですが*、保守料金というのはオイル交換代程度だと思っています。さらに補償がつくので安上がりだと感じています。

オイル交換の作業は、真空ポンプ内のオイルを抜いて、ポンプ内を洗浄し、オイルを充填して、古いオイルを破棄するという行程です。オイル交換の作業自体はたいしたことが無いように思われますが、実は非常に重要な作業です。オイルの交換を行わないと真空に到達するまでの時間が長くなるなど不具合が起きます。我々の施設では、約10の研究室が毎日代わる代わる使用していますので、その分オイルの劣化が早く起きます。このため、オイル交換を頻繁にやらざるを得なくなってきます。超遠心機の状態を良好に保つために、オイル交換を定期的に正確に行うことは重要です。
※複数台保守契約をしていただいているお客様の特典として、点検時に使用するオイルなどの消耗部品が無償となります。

3. 最後に

今回は思いついた大きな事柄を中心にお話ししましたが、思い出せないような細かいサポートも数えきれないくらい頂いています。個人の研究室で超遠心機を所有せず、多種のロータがそろっている共通機器室で共同使用することが最近多くなっている背景から、管理者の負担を軽減してくれる、サポート体制がしっかりしたメーカーを選択することが重要だと思います。

【施設紹介】

国立大学法人 名古屋大学大学院医学研究科附属医学教育研究支援センター 分析機器部門

名古屋大学は1871(明治4)年に名古屋藩の仮医学校、仮病院として発足して以来、約140年の歴史と伝統を持つ、日本で最も古い大学の1つです。医学系研究科は基礎医学領域、臨床医学領域、統合医薬学領域の3つの領域からなり、創薬分野で活躍する人材育成や日本が弱いとされている臨床治験を推進できる人材育成を目指しています。分析機器部門は、名古屋大学大学院医学系研究科における各種分析・計測機器の共同利用施設です。

 

 

 

 

 

 

卓上型超遠心機

Optima MAX シリーズ

希少なサンプルの超遠心処理に最適

10万xgから100万xgを超える遠心力で希少なサンプルの様々なニーズに応えます。エクソソームやウイルスの回収、ナノ粒子の洗浄等に最適な卓上型の超遠心機です。

仕 様

最高回転数 150,000 rpm (MLA-150)
最大遠心力 1,019,000 ×g (MLA-130)