Vi–CELL BLUの新機能、高速モード

プレート測定が可能なVi–CELL BLUがVi–CELLファミリーに加わり、細胞計測の新たなステージを迎えます。プレート解析を選択すると、最大96サンプルを解析できます。また、プレートを使うことによって解析の幅が広がりました。例えば、様々なサンプルおよび測定の規準となるコントロールサンプルを組み合わせることで、連続して異なる測定の評価ができます。

当然ながら一度に多くのサンプルを解析することで、測定に長い時間を要します。例えば、96ウェルプレートのすべてのウェルにサンプルを入れた場合、全測定を終えるのに3時間以上(予測時間)かかります。ユーザーは、長時間にわたり機器を占有すること、あるいは細胞を長い間、培養装置の外に置くことによる生存率への影響に課題を抱くかもしれません。そこで、これらの課題を克服するため、Vi–CELL BLUに新機能である高速洗浄モード(プレート、カローセル共に対応)を搭載しました。この機能によりサンプル解析時間を大幅に短縮できます。

洗浄モード 必要サンプル量 100画像解析による1サンプル当たりの
測定時間、~2×106 cells/mL
1プレート(96サンプル、100画像解析)の
測定時間、~2×106 cells/mL
ノーマル 200 µL 130秒 3時間 46分未満(予測時間)
高速 170 µL 90秒 2時間 40分未満(予測時間)

高速モードは洗浄工程を短縮することで、1サンプル解析当たりの時間がおよそ30%短くなります。ノーマルモードによる解析と比較し、高速モードでは洗浄工程を短くしているため、サンプル間での洗い残しが起きる可能性があります。このような潜在的なリスクがありますが、測定するサンプルがリスクを許容できる場合には、非常に優れた機能になります。

高速モードを使った測定を日常的に実施した場合、トリパンブルーの濃度やタンパク質性由来の物質が機器の流路内に蓄積する可能性があります。そのため、定期的にデコンタミネーションを実施して流路内の蓄積を防ぐように心掛けてください。

高速モードの設定方法

サンプル情報を入力する時に、洗浄方法で高速/ノーマルモードのどちらかを選択することができます。また、プリファレンス表示画面から、どちらか一方を初期設定として選択することも可能です。さらに、多サンプルを入力する時には、サンプル設定バーを使って選択することもできます。もちろん、その中から任意のサンプルを別の洗浄モードに変更することもできます。詳細は取扱説明書を参照してください。

The option to select either Normal or FAST mode during queue creation


高速モード時における前サンプルの持ち込み評価試験

サンプルの持ち込みを評価する最も簡易な方法は、ビーズサンプルまたは細胞サンプルの間にブランク(緩衝液)を挟み、ノーマルモード、高速モードのどちらかで評価します。プレートまたはカローセルのどちらでも同様に行います。評価方法の一例を以下に示します。

サンプル名 洗浄モード サンプルの種類 カウント数
〜Beads–L07–norm.015 〜ノーマル 〜L5 Bead 〜11903
Blanks–L07–norm.016 ノーマル Blank 21
Beads–L07–norm.017 ノーマル L5 Bead 12061
Blanks–L07–norm.018 ノーマル Blank 5
Beads–L07–norm.019 ノーマル L5 Bead 11444
Blanks–L07–norm.020 ノーマル Blank 26
Beads–L07–fast.001 高速 L5 Bead 11717
Blanks–L07–fast.002 高速 Blank 24
Beads–L07–fast.003 高速 L5 Bead 11368
Blanks–L07–fast.004~ 高速~ Blank~ 28~

L5 サイズ標準ビーズ(製品番号:6602794、 Lot 9012057F)をコントロールとして使用しました。このビーズはサイズの大きさ、おおよそのビーズ濃度(~ 4×106 ビーズ/mL)が既知だからです。測定に用いるセルタイプは初期設定L10ビーズ(セル)タイプを基にしてBCI L5 Beadsを新たに設定しました。

細胞を使った評価はCHO細胞で評価しました。使用したCHO細胞の濃度は約3×106 cells/mLですが、この数値は、おおよその規準値ですが、細胞サンプルとブランクサンプルの連続した測定による測定値の変化を調べることに使用しました。この解析に用いたセルタイプは細胞用初期設定セルタイプである Mammalian セルタイプです。

この試験においてビーズ濃度の正確性は最重要事項ではありません。しかし、機器が正しく稼働していることを知る指標になります。実際の試験では、ビーズサンプルとブランクサンプル間のビーズカウント数を記録していきました。前サンプルからの持ち込みは、ブランクサンプルのビーズカウント数で評価しました。ブランクサンプルで計測された画像データをランダムに確認し、カウントされた粒子がビーズであることと、デブリスではないことを確認しました。

ブランクサンプルのカウントは予測したように大きなばらつきが認められました。1 回ごとのブランクサンプルの測定結果だけに注目すると、前サンプルの持ち込みによる影響を全体的な数値として表しにくい課題が生じます。そこで、全体として平均的にどれくらいのサンプル持ち込みがブランクサンプルに及ぶのかを評価することの方が、持ち込みを客観的に評価できます。


結果

測定に使用したセルタイプ設定

セルタイプ BCI L5 Beads Mammalian
最小直径 (μm) 2 6
最大直径 (μm) 10 30
画像枚数 100 100
セルシャープネス 22 7
最小真円度 0.75 0.1
クラスター分離度 medium medium
アスピレーション回数 3 3
生細胞スポットブライトネス (%) 50 55
生細胞スポットエリア (%) 1 5
混合回数 3 3

以下の測定結果は、カローセル(プレート)を使ってサンプルの持ち込みを調べた結果です。データはビーズサンプル(細胞サンプル)とブランクサンプルを合算(ペア)して、平均サンプルカウント数および平均持ち込みカウント数を示しました。

L5 標準ビーズ

測定 洗浄モード L5
粒子カウント
ブランク持ち込み
カウント数
ブランク持ち込み
割合 (%)
#
サンプルペア数
1 ノーマル 10629 108 1.01% 20
2 ノーマル 11784 11 0.10% 26
3 ノーマル 11414 164 1.44% 60
4 ノーマル 11862 236 1.99% 60
5 ノーマル 11326 161 1.42% 40
1 高速 9392 226 2.40% 20
2 高速 11147 38 0.34% 54

CHO 細胞

測定 洗浄モード CHO細胞
カウント数
ブランク持ち込み
カウント数
ブランク持ち込み
割合 (%)
#
サンプルペア数
1 ノーマル 3939 3 0.07% 38
2 ノーマル 5546 9 0.16% 48
3 ノーマル 7986 3 0.04% 26
4 ノーマル 5310 27 0.51% 24
1 高速 3952 5 0.13% 38
2 高速 5281 23 0.44% 36
3 高速 8595 21 0.24% 24


高速モード試験評価のまとめ

ビーズサンプルを使った試験から得られたデータを基に、ノーマルモードと高速モードにおけるブランクサンプルの持ち込みに有意な差があるかをt-検定により評価しました。その結果、 p値は0.986でした。両モードによる持ち込みに関して統計的な有意差がみられませんでした。したがって、どちらの洗浄モードを使っても測定に大きな影響が及ぶ可能性は低いと考えられることから、サンプル間の持ち込みは無視できるという結論に至りました。

ブランクサンプルのカウント数に大きなばらつきが生じた原因は、少ない数をカウントしていたことによります。しかしながら、実施したすべてのテストケースにおいて、ブランクサンプルへの持ち込みは1%程度でした。

 

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