フローサイトメーターCytoFLEX Sでデザインしたパネルの セルソーターCytoFLEX SRTへの移行方法

目的

フローサイトメーター CytoFLEX S V-B-Y-RからセルソーターCytoFLEX SRTに、設定、プロット、および統計情報をインポートする方法を解説します。

Introduction

信頼性の高いフローサイトメトリーの抗体パネルをデザインするには、検出感度、スペクトルのオーバーラップの最小化、目的のマーカーに対する標識抗体の入手難易度などのバランスをとる必要があり、多くの検討と労力が必要となります。セルソーターはソーティングを必要とする実験に使用したいという理由や、取り扱いが比較的容易といった理由からフローサイトメトリーのアナライザーを使って、ソート実験の初期設計を行うことが多いのが現状です。

通常、マルチカラー実験をセルアナライザーからセルソーターに移行する際には、いくつかの面倒な手順が発生します。アナライザーとソーターは異なるソフトウエアを使用していることが多いため*1、複雑なゲーティング戦略などのような設定をそっくりそのまま繰り返す必要があり、時間がかかり、ミスが発生する可能性があります。まさに二度手間で、省略・簡便化したい作業のうちの1 つです。

セルソーターCytoFLEX SRTのセットアップと分析には、セルアナライザーCytoFLEX Family共通で使用されるCytExpertの派生版であるCytExpert SRTソフトウエアが用いられています。このソフトウエアとCytoFLEX SおよびCytoFLEX SRTの仕様(レーザー、検出器)を一致させることで、ユーザーはアナライザーCytoFLEX Sで設計と解析を行い(エクスペリメントを作成)、最小限のマニュアル操作でそのエクスペリメントをソーターCytoFLEX SRTにインポートすることができます。

このテクニカルノートでは、セルアナライザーCytoFLEX Sで作成したエクスペリメントを、パラメータを合わせたセルソーターCytoFLEX SRTにインポートする方法を示します。このことで、ゲインとコンペンセーション(蛍光補正)の設定を確認した後、アナライザーで作成されたものと同じ領域を、マルチカラーソート実験のソート領域として使用することができます。

*1 自社比較

 

CytoFLEX S V–B–Y–RとCytoFLEX SRTの検出器の構成の共通性

セルソーターCytoFLEX SRTの検出器は、セルアナライザーCytoFLEX S V–B–Y–Rシリーズを拡張した構成になっています。CytoFLEX SRTには、CytoFLEX S V–B–Y–Rにイエローグリーンレーザーとバイオレットレーザーの2つのチャンネルが追加されている構成となっています(図1)。両方の装置を使用することで、ソーティングを実行する前に、アナライザーを使用してソートゲーティング戦略を設計できます。

Platform Blue (488 nm) Red (638 nm) Yellow Green (561 nm) Violet (405 nm)
CytoFLEX SRT 525/40 690/50 660/10 712/25 780/60 585/42 610/20 675/30 710/50 780/60 450/45 525/40 610/20 660/10 780/60
CytoFLEX S V-B-Y-R 525/40 690/50 660/10 712/25 780/60 585/42 610/20 690/50 780/60 450/45 525/40 610/20 660/10

 

図1. 蛍光検出器の比較
セルソーターCytoFLEX SRT(上段)とフローサイトメーターCytoFLEX S V-B-Y-R(下段)の検出器チャンネルの比較。
CytoFLEX SRTには、イエローグリーンレーザーとバイオレットレーザーの2つのチャンネルが追加されています。

 

CytExpert テンプレート(エクスペリメント)をCytoFLEX SRTに移行することで、ソーティングのセットアップ
にかかる時間を短縮できます。

 

CytExpertソフトウエアから .xitファイルをエクスポート

この例では、使用説明書に従ってDURAClone IM T Cell subset kit(製品番号 B53328)を使用し、CytoFLEX Sでデータを作成しました。初期設定と分析に使用したサンプルは、ClearLLabアッセイのAbnormal cellコントロール(製品番号 B90003)を使用しました。これにより、既知のプロパティのサンプルを使用した複数回の試行が可能になります。

使用説明書に記載されているゲーティングや分析方法に従って、ユニット化されたDURACloneドライ抗体パネルのマーカーの発現レベルを変化させながら、複数の細胞タイプを分析することができます。

Electronic Record Management がインストールされていない場合は、エクスペリメントを保存したフォルダに移動します。デフォルト状態では、C:\Users\xxxxxxxx\Documents\CytExpert Data\ にあります。

.xit(CytoFLEXエクスペリメントファイル)と、.fcsファイルが保存されている関連ファイルフォルダを探します。

Folder Structure

図2. 必要なフォルダ構成
CytExpertでは、通常、.xitファイルと同じ名前のフォルダに.fcsファイルが保存されています。

重要: 変換を正常に完了させるには、.xitファイルとファイルフォルダの両方が同じフォルダ内に存在する必要があります。

.fcsファイルを転送することが望ましくない場合は、エクスペリメントのコピーを保存し、そのコピーからtubeファイルを削除します。

このエクスペリメントファイルをUSBメモリーなどのポータブルドライブに移動するか、ファイルを転送します。このファイルをCytoFLEX SRTワークステーションのハードドライブに保存します。

電子記録管理(ERM)がインストールされている場合、.xitファイルとそれに関連するフォルダの名前はスクランブルされています。情報を保持するには、Experiment Explorer の[Export Experiment]オプションを使用して、必要な .xitファイルとフォルダをエクスポートしてください。

重要: ファイルを正常にエクスポートするには、エクスペリメントが開かれていない必要があります。エクスポートしたいエクスペリメントが開いている場合は、ファイルメニューから[Close Experiment]を選択してください。

 

CytExpert SRTソフトウエアで .xitファイルを .xits エクスペリメントに変換

CytExpert SRTソフトウエアを開きます。ファイルメニューから[Convert CytExpert Experiment]を選択します。上部の[browse]ボタンを使用して、変換する.xitファイルを探します。下部の[browse]ボタンを使用して、.xitsファイルを保存する場所に移動します。デフォルトでは、これらは C:\Users\xxxxxxxx\Documents\CytExpertData\ に保存されています。

CytoExpert Experiment

図3. CytExpert Experiment の変換CytExpertファイルをCytExpert SRTファイルに変換するために必要な一連のメニューです。

 

[OK]をクリックすると、ファイル変換が開始されます。元のフォルダにある全ての .fcsファイルが変換されて表示されます。ゲイン、閾値、表示設定などの設定は、新しい .xitsファイルに引き継がれます。また、全てのプロット、表、注釈なども新しい .xitsファイルに取り込まれます。以下の図は、同じ実験の変換前と変換後を示しています。

Data

図4. CytExpert に表示されるデータ
データは CytoFLEX S V-B-Y-Rで取得。プロット、ゲート、領域、統計を作成し、4つのサンプルに適用しました。

 
Data

図5. CytExpert SRTに表示される変換されたデータ
CytExpert SRTファイルに変換されたファイルを図5に示しました。全てのプロット、ゲート、領域、統計テーブルが変換され、インターフェースに表示されています。Tubeワークスペースには、元のファイルの全てのサンプルが移植されています。

 

セルソーターCytoFLEX SRTとセルアナライザーCytoFLEX のプラットフォームは非常に似ていますが、プロット上の目的の位置に集団を配置するには、ゲインやコンペンセーションの変更が必要になる場合があります。CytoFLEXプラットフォームに搭載されている標準化ワークフローを使用して、2つの装置の同じ場所に参照物質の蛍光を配置することでゲインを調整できます。最高の補正性能を得るためには、CytoFLEX SRT上でコンペンセーションコントロールを実行し、変換後のエクスペリメントに適用することをお勧めします。

CytoFLEXプラットフォームのコンペンセーションライブラリ機能を利用して、これらのコンペンセーションコントロールをいつでも実行して保存できます。その後、変換と標準化後に適用された新しいゲインに基づいて、組成を変換することができます。

CytoFLEXプラットフォームでの標準化の詳細については、CytoFLEXプラットフォームまたはCytoFLEX SRTセルソーターの使用説明書を参照してください。

 

Key Point

  • パラメータがマッチングしていることを確認すると、より簡単に操作できます。マッチングとは、励起用のレーザーラインとチャンネル名が同じであることを意味します。一致していないチャネルは空白になり、領域を再描画する必要があります。
  • CytoFLEX S V–B–Y–Rは、CytoFLEX SRTと同じ4つのレーザーを搭載しており、実験の転換が最も容易です。

 

Summary

セルアナライザーCytoFLEX S V-B-Y-RとセルソーターCytoFLEX SRTは、蛍光検出器の構成がほぼ一致しています。そのため、アナライザーを使用したパネル設計や実験条件の最適化が容易になります。実際、ソーター用ソフトウエアCytExpert SRTには、CytExpertファイルをインポートできる機能が搭載されています。これにより、最適化された条件に基づいてセルソーティングを実行する際に、操作のための時間と労力を節約できます。

CytoFLEX S V-B-Y-Rで設定したプロット、ゲート、領域を使用してデータを取得する場合は、装置の設定を確認する必要があります。ゲインの設定やコンペンセーションマトリックスの変更が必要になる場合があります。プラットフォームで標準化ツールは、データ表示を調整するのに便利です。コンペンセーションが適用されると、あとは目的の集団を選択し、ソートロジックと停止条件を適用するだけです。

 

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.

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