細胞株開発におけるハイスピードでエラーを低減できるヒットピッキング自動化の実現

要約

  • 抗体医薬品開発などにおける細胞株開発ではヒットピッキングの工程が非常に重要です。
  • 現状、ヒットピッキングの工程には、以下のような課題があります。
    • 適切なヒット/ウェルの特定
    • ヒットプレートへの再分注
    • 複数のプレートから得たサンプルの1 プレートへの集約
    • エラーのないデータ追跡
  • 自動分注ワークステーションBiomek i-SeriesのSpan-8 システムとデータ追跡ソフトウエアDART を組み合わせることで、データの整合性を確保しながら、データに基づいたヒットピッキングを行うことができます。

一般的に、自動化は実験作業のハイスループット化やルーチン作業に限定される場合が多いです。しかし、複数の工程からなるワークフローは複雑でエラー率が高く、データの整合性が必要です。ヒットピッキングは自動化のメリットが得られるワークフローの一つです。

ヒットピッキングの基本概念は、1)アッセイデータからヒットを選別し、2)そのヒットを識別可能な方法で新しいプレートに移動する、というシンプルなものです。しかし、研究室において手作業で作業する場合に問題が発生する危険性があります。まず、分析装置から得たデータを元のウェルに正しく関連付け、ヒットを含むウェルを特定しますが、これらの手順では、ヒットの配置を誤ること無いよう、一貫した順序で移す必要があります。この作業は、ヒットを複数のソースプレートから1 プレートにまとめる場合や、液量が少量で目視確認が難しい場合、または深いウェルプレートで作業するような場合ではさらに困難となります。このように作業を手動で行うと、エラーの要因がいくつかあり、細胞株開発ワークフローの一部としてヒットピッキングを自動化した方法について説明します。

今回使用したワークフローは長く複雑で、ヒットピッキング工程が複数含まれるものでした。限界希釈法で細胞をプレーティングした後、CloneSelect Imager(モレキュラーデバイス)での画像解析で単一細胞が含まれる約33% のウェルを特定しました(Figure 1A、緑のウェル)。これらのモノクローナルウェルの約50% は3 週間後に増殖を示し、ランダムに分布した「一次ヒット」ウェル(Figure 1B、ピンクで囲んだウェル)をサンプリングし、タンパク質力価を分析しました。

ヒットの識別

Figure 1. ヒットの識別。 A)限界希釈後、CloneSelect Imager(緑/ 黄)での画像解析で単一細胞のウェルを同定。B)細胞を3 週間培養し、コロニー形成のあるウェルを画像解析で同定。 ピンクの正方形で囲んだウェルは、タンパク質力価が確認され、増殖したモノクローナルウェル(「一次ヒット」)。

Biomek i7 のSpan-8 pod(Figure 2A)を使用して、4 枚の96 ウェルプレートの一次ヒットウェルから培地を迅速にサンプリングしました。 溶液を移動する際にはインポートされたコンフルエンスデータを利用し、分注機のスパン機能を用いたことで、間隔の空いた複数のウェルを列単位で同時サンプリングしてプロセスを高速化することができました(Figure 2B)。また、接着性の弱い細胞を破壊しないよう、ピペッティング制御を微調整して吸引速度を下げ、チップの位置を最適化しました。Span-8 分注ヘッドで、一次ヒット用ウェルから手作業での再分注が難しい1 枚の384 ウェル黒色プレートに移しました。その後、このプレートをOctet HTX(Pall Forte Bio)で解析し、IgG 力価を測定しました。

自動ヒットピッキング

Figure 2. 自動ヒットピッキング。A)細胞株開発に利用されるHEPAフィルタと様々なデバイスを統合したBiomek i7。 B)単一細胞からコロニーを形成したウェルから培地をSpan-8 分注ヘッドでサンプリングし、384 ウェル黒色ウェルプレートに移してOctet HTX(Pall Forte Bio)で解析。

ヒットピッキングの機能的な特徴と共に、再分注プロセス中でのデータの整合性も重要です。 この例では、384 ウェルアッセイプレートで生成されたデータは、2 回目のヒットピッキングを実行するために、ソースウェルに正しく紐付けなければなりません。 Biomek では、液体分注中にソースウェルの情報(位置など)がアッセイプレートに自動転送されるため、DART データソフトウエアは、384 ウェルプレートからソースプレートおよびウェルにアッセイデータを自動的にコピーバックします(Figure 3A)。これによって、データ損失やコピー&ペーストエラーを防止できます。 DART は、複数のパソコンから簡単にアクセスできるデータベースを提供するだけでなく(Figure 3B)、そのデータを使用して、高発現細胞をより大きなウェルプレートに移して拡張する(「二次ヒット」)という2 番目のヒットピッキング工程を実行できます。最終的に細胞を移動する際にはウェルプレートに対して、細胞の起源まで遡った情報が備わっており、クローンのソース(バーコードやウェルなど)またはクローントラッキングID も共に移されます。

再分注におけるデータの整合性 

Figure 3. 再分注におけるデータの整合性。 A)DART ソフトウエアは、再分注されたアッセイプレートから元のソースウェルへのデータ転送を自動化することで、データの整合性を確保。 B)一元化されたデータは、レポート(上図右)およびWeb ブラウザで確認できます。自動化した場合、このデータはヒットピッキング工程に利用できます。

ヒットピッキング工程は細胞株開発という大きなワークフローのごく一部にすぎませんが、サンプルとデータの両方を扱うため、最もエラーが起こりやすい工程と考えられます。この再分注工程における物理的な分注とデータ処理の両方を自動化することにより、迅速でエラーのないヒットピッキングが可能となります。

 

自動分注ワークステーションBiomekは疾患等の診断への使用を意図しておらず、検証も行っておりません。
ベックマン・コールターライフサイエンスのゲノム試薬キットは、研究用です。

  • バイオ医薬品開発に向けた
    細胞株開発

    細胞株開発のプロセスを2種類の特徴のあるシステムで自動化することにより、実験者の負担を大きく低減しつつ、より速く信頼性の高いクローンを獲得することを可能とします。

    詳細はこちら

  • 抗体医薬品開発ワークフロー

    モノクローナル抗体医薬品の開発には重要なフェーズが複数あり、それぞれのフェーズが治療薬の機能性に大きく影響を与えます。革新的な抗体医薬品開発ソリューションを是非ご覧ください。

    詳細はこちら

  • 抗体医薬品のプロセス開発

    治療や診断用途におけるmABの需要が高まりと共に、製造能力の拡大とプロセス効率および費用対効果の向上が求められるため、より効率的で経済的な製造プロセス開発が必要です。

    詳細はこちら

  • 自動分注ワークステーション
    Biomek i-Series

    拡張性・柔軟性に優れ、研究者の実験ニーズに応じて他社装置も含めた様々な装置との接続が可能なため、現在お使いのプロトコルを変えることなくワークフローを自動化します。

    詳細はこちら

    Data

  • 抗体産生株スクリーニングシステム
    Cydem VT

    最大96クローンを、より制御された環境で、より詳細なデータを取得することにより、細胞株開発プロセスを加速します。

    詳細はこちら

    Data

  • 生死細胞オートアナライザー
    Vi-CELL BLU

    リパンブルー染⾊法による細胞の⽣死細胞解析を⾃動化して行う、ユーザーフレンドリーな操作性の生死細胞オートアナライザーです。

    詳細はこちら

お問い合わせ