生死細胞オートアナライザーVi–CELL BLUの計数性能評価

生死細胞オートアナライザー Vi-CELL BLUは、Vi–CELL XRの優れた機能を継承し、さらに、お客様からのご要望が多い機能・デザインを新しく取り入れました。

細胞計数は簡単に思われがちですが、サンプルや測定装置の状態など様々な要因の影響を受けます。したがって、測定装置が仕様内で稼働していることを保証できることがとても重要であり、使用する測定装置の機器間差をできるだけ小さくすることが大切なポイントです。

本アプリケーションノートでは、NISTで採用されているプロトコルに従い、Vi-CELL BLUの細胞計数性能を評価しています。(Evaluatingthe quality of a cell counting measurement process via a dilution series experimental design.Sarkar, Sumona et al.( 2017)Cytotherapy, Volume 19, Issue 12 1509 – 1521)

このプロトコルでは、希釈系列を調製し、個々の希釈サンプルの計測および再現性を評価することで、機器の性能を調べています。

非細胞系標準粒子を用いて、濃度、生存率、サイズ測定の機器性能を評価し、さらに、実際の細胞を用いた評価を行いました。

Vi CELL BLU side load image

図1. 生死細胞オートアナライザー Vi–CELL BLU

 

標準粒子と細胞計測の比較結果

計測に用いた粒子の情報

製品番号:6602796 (lot 9747455F) L10 スタンダード粒子 (10 μm、ラテックス粒子(NIST トレーサブル), 1 x 15 mL

 

セルタイプシート: BCI L10 Beads

標準粒子計測に用いたセルタイプ設定の詳細

セルタイプ BCI L10 Beads
最小直径 (µm) 5
最大直径 (µm) 15
取得画像枚数 100
セルシャープネス 22
最小真円度 0.5
クラスター分離度 Medium
懸濁サイクル 3
生細胞スポットブライトネス (%)  50 
生細胞スポットエリア (%) 1
トリパンブルー混合回数 3

96ウェルプレートに希釈サンプル(72サンプル)を調製し、3回の反復実験を行いデータを取得しました。

 

標準粒子を用いた計測の結果

サンプル: L10 ビーズコントロール(異なる3機器を用いて上記の実験を行った結果)

L10ビーズ希釈系列サンプルの計測結果

図2. L10ビーズ希釈系列サンプルの計測結果

 

細胞を用いた計測の結果

細胞を用いた機器の性能評価にCHO細胞を用いました。細胞の希釈系列サンプルの調製は以下に示すNISTで採用されている方法で行いました。セルタイプは標準的なMammalianセルタイプを用いました。セルタイプ設定の詳細は以下のとおりです。

 

Mammalianセルタイプ設定の詳細

セルタイプ Mammalian 
 最小径 (µm)
 最大径 (µm) 30 
 取得画像枚数 100
 セルシャープネス 7
 最小真円度 0.1
 クラスター分離度 Medium
 懸濁サイクル 3
 生存スポットブライトネス (%) 55
 生存スポットエリア (%) 5
 トリパンブルー混合回数 3

 

細胞の計測結果

CHO 細胞の8希釈系列を調製し機器の性能を評価しました。低濃度域の性能評価には、9枚のプレートを用いて反復実験を行いました。このうちの3枚ずつを、3台の装置で評価しています。高濃度域の性能評価には、この検証で使用できるサンプル量が限られている理由から、カローセルを用いて計測を行いました。3回の反復実験を行い、1回当たりの1 希釈系列を10 計測しています。

 

希釈系列 

基準濃度 (x10^6) cells/mL

基準濃度 (x10^6) cells/mL
  Low-Mid 範囲域 Mid-High 範囲域
100% 5.50 13
80% 4.40 10M
60% 3.30 8M
50% 2.75 6.5M
40% 2.20 5.2m
30% 1.62 3.9M
20%  1.10 2.6M
10% 0.55 -

 

計測結果

CHO細胞を用いた低濃度希釈系列サンプルの計測結果

図3. CHO細胞を用いた低濃度希釈系列サンプルの計測結果(プレートで評価)

 

CHO細胞を用いた高濃度希釈系列サンプルの計測結果

図4. CHO細胞を用いた高濃度希釈系列サンプルの計測結果(カローセルで評価)

 

機器の性能をさらに評価するため、プレートを用いてより狭い範囲の希釈系列サンプルを調製しました。この検証では同一機器を用いて3回の反復実験を行いました。用いたサンプルはストックしていたサンプルで、測定は16時間以内に実施しています。16 時間内の細胞の増殖は非常に低いものと考えられます。

3台のVi-CELL BLUを使用し、それぞれ3プレートを使って計測および再現性を評価しました(合計9プレート、n=864 サンプル)。以下に示すデータは、各希釈系列で調製された216サンプルの平均を示しています。

この実験で取得されたデータはANOVA分析を用いて、測定および各希釈サンプル間の再現性に関する変動を調べました。結果、用いた3機器において、すべての測定間で統計有意性は示されませんでした(p value >90)

希釈系列                                      希釈系列基準濃度 (x10^6) cells/mL
100% 2
50% 1
15% 0.5
10% 0.2 

 

3機器を用いたCHO細胞希釈サンプルの測定

図5. 3機器を用いたCHO細胞希釈サンプルの測定

 

結論

Vi–CELL BLUは希釈サンプルを用いた実験において、0.5 ~ 15 M cells/mLの濃度範囲で高い直線性を示しました。0.5 M cells/mL 以下の濃度範囲では予想通り、ばらつきが大きくなります。このばらつきは、撮影一画像当たりの細胞数が少ないために生じています。しかしながら、こうした低濃度領域においても、計数カウントのばらつきは、計数機器性能の許容限界(10%)以内に収まりました。L10サイズ粒子コントロールを用いた場合、計数における変動はとても小さくなります。この理由は、用いた粒子コントロールの性質・特長が均一であるためです。

NISTプロトコルを用いて、異なる濃度の希釈細胞サンプルを計測することにより、機器の計数性能を評価する基準になり得ます。細胞カウントと希釈系列全体の濃度の相関は、R2 値が>0.99です。このことは、幅広い濃度範囲において一貫した計数性能を有していることを示します。Vi–CELL BLUは測定できるサンプル数が多いため、細胞計数の信頼性が高まり、異常な結果をたやすく検出できます。

 

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生死細胞アナライザー
Vi-CELL BLU

Vi-CELL BLUは、細胞のサンプル染色から計数・生死判定に至るプロセスを自動で行います。少量・大量の細胞培養液中の細胞を正確に計測し、研究から製造スケールまで対応します。

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