超遠心分離法によるウイルスベクターの精製

 

中空、中間体、完全体のウイルスキャプシドをうまく分離するには?

アデノ随伴ウイルス(AAV)およびアデノウイルスは、強力な遺伝子運搬用ベクターとして、現在、研究、前臨床、臨床開発で使用されています。密度勾配超遠心法(DGUC)は、中空、中間体、完全体のウイルスキャプシドを、血清型に依存することなく分離することができます。

ウイルスベクターの精製ワークフロー

密度勾配超遠心法により、完全体ウイルスキャプシドの純度を99%以上にできます。*

*超遠心法プロトコルの例は、https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/hgtb.2015.051をご参照ください。

 

密度勾配超遠心法の考え方

1. 密度勾配の形成

密度勾配法
等密度遠心法 平衡密度勾配遠心法 速度ゾーン遠心法
  • 試薬による自動的に連続的な密度勾配形成により物質を浮遊密度に基づき分離する方法。
  • サイズや質量が同じで浮遊密度の異なる物質(中空体と完全体のウイルスキャプシドなど)の分離に最適
  • 連続的な密度勾配であるため、最も分解能が高い方法
  • 予め形成した不連続な密度勾配中で物質を浮遊密度によって分離する方法で、浮遊密度の異なる分画にはっきりと分離することが可能
  • 予め形成した不連続な密度勾配を使用することから短時間で比較的純度の高い精製が可能でバランスの良い方法
  • 等密度遠心法よりも分解能は低い
  • 予め形成した連続的な密度勾配中で物質の沈降係数(サイズや質量のパラメータを勘案した値)を指標として分離する方法
  • タンパク質複合体とそれ以外のタンパク質を分離するのに最適
  • 等密度遠心法 平衡密度勾配遠心法 速度ゾーン遠心法
    密度勾配遠心用試薬
    イオジキサノール 塩化セシウム(CsCl)
  • 一般的に、より短時間での精製プロトコルで使用される
  • 遠心後の実験への影響が少ない
  • 平衡密度勾配遠心法でよく使用される
  • イオジキサノール平衡密度勾配遠心法は、探索や開発フェーズにおけるウイルスベクターの迅速なハイスループット精製で選択される。
  • 中空体、中間体ならびに完全体のウイルスキャプシドを高い分離能で分離でき、完全体のウイルスキャプシドを比較的高い純度で得られる
  • 一般的に、遠心時間が長い
  • 遠心後の実験の前にバッファの交換工程が必要な場合がある
  • 等密度遠心法でよく使用される
  • CsCl等密度遠心法は、非常に高純度の完全体のウイルスキャプシドの製造やウイルスベクター標準物質の作成において選択される
  • 2. ロータの選択

    チューブの密封方式
    OptiSealチューブ OptiSealチューブ Quick-Sealチューブ Quick-Sealチューブ
  • プラグによる密閉
  • 素早い密閉
  • プラグによる簡易的な密閉方式のため、遠心実験中は、チューブの密封状態が完全に保持されているという物理的保証はない
  • 完全な密封状態の保持を保証
  • 加熱方式によるチューブの密封
  • 密封は手作業のため、少し時間がかかる
  • チューブの材質
    ウルトラクリアチューブ ポリプロピレンチューブ 減菌+Certified Free*チューブ
  • チューブの透明度が高く、バンドの目視が容易
  • オートクレーブによる滅菌は不可、ガス滅菌等の非加熱滅菌が可能
  • ウルトラクリアより透明度が低いが、多くの化学物質に対して化学耐性がある
  • オートクレーブによる滅菌が可能
  • OptisealならびにQuick-Sealタイプをご用意
  • ウルトラクリアならびにポリプロピレンの材質
  • Quick-Sealとオープントップタイプのみのご用意
  • *製品評価試験の対象物質で検出限界以下を確認済み
    ロータタイプ
    垂直ロータ 近垂直ロータ 固定角ロータ スウィングロータ

    沈殿する夾雑物質が非常に少ない場合で、以下で最も効率よく行えるロータ
    (a)平衡密度勾配遠心法
    (b)等密度遠心法

    沈殿する夾雑物質の量が比較的多いサンプルの等密度遠心法に最適

    1つで密度勾配遠心とペレット分離のどちらにも使えるロータで、予算や設置スペース上に制約があるラボに最適

    速度ゾーン遠心法に最適。密度勾配遠心法(ウイルスキャプシドの高純度精製など)では、遠心時間が長く、スループットが低い

    垂直ロータ 近垂直ロータ 固定角ロータ 固定角ロータ

    3. サンプル回収

    チューブの密封方式
    注射針によるバンドの回収 精製フラクションの分画(チューブの側面、または底部から)
  • 遠心後、目的のバンドのみを回収する場合には、注射針でチューブに穴を開け、バンドを回収することが一般的な方法
  • 精製プロセスを高度に確立するために、目視で目的のバンドの位置を確認できることが理想的
  • 注射針でチューブの側面もしくは底部に穴を開け、チューブ内の全ての液体を少量(200 μLなど)ずつ、微量チューブ(1.5 mL)もしくは96穴プレートに回収し、回収した各フラクションについて様々な解析を行う
  • 目視でバンドが確認できない、あるいは複数のバンドについて特性解析が必要な場合に最適
  • 注射針によるバンドの回収 精製フラクションの分画

     

    Optima XE Ultracentrifuge

    超遠心機

    ベックマン・コールターは1947年に初めて超遠心機(超遠心分離機)を販売開始し、現在では高い遠心力・回転数はもちろん、バイオセーフティモデルやリモートコントロール機能などを備えた超遠心機を取り揃えております。様々なチューブや容量に対応するロータやアクセサリ類も取り揃え、ウイルスの高純度精製やエクソソーム分離、その他幅広いアプリケーションのご要望にお応えします。

    詳しくはこちら

    お問い合わせ