最善の総合医療を提供し、疾病の克服と健康の増進を通じて社会に貢献する

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
中央検査部門 主任臨床検査技師
大城 雄介 先生


国立国際医療研究センター病院は、「最善の総合医療を提供し、疾病の克服と健康の増進を通じて社会に貢献する」ことを理念としたナショナルセンターとしては唯一の総合病院です。日々多くの患者さんの診療を行う同病院の検査、特にフローサイトメトリー検査に注目してお話を伺いました。


施設について

国立国際医療研究センター病院は専門医及びスタッフが連携を取り合いながら国際感染症対応や糖尿病診療、エイズ治療、救急医療などを行っている国立高度専門医療研究センターとしては唯一の総合病院です。標榜診療科は43科で病床数は719床です。院内のフローサイトメトリー検査はTリンパ球サブセットを行っています。
フローサイトメトリー検査では主にエイズ治療・研究開発センター(ACC)の患者さんの検体を測定しています。
検体数は1日に約50件で、平日日勤帯のみ検査を行っています。検査数はコロナ禍で縮小した部分もありましたが、現在はコロナ前の検査数に戻ってきています。

国立国際医療研究センター(NCGM)



日々の検査と効率的な運用の工夫

当院の検体検査室には15 名のスタッフが在籍しており、フローサイトメトリー検査は一般・血液検査のグループが担当しています。一般・血液検査のグループは一般検査担当3名、血液検査担当1 ~ 2名の合計4 ~ 5名です。そのうち、それぞれの検査で1 名が形態学的検査を行い、その他の3名が分析装置のオペレーションをしています。
主な検査内容は尿一般検査、糞便検査、フローサイトメトリー検査、血液学的検査、質量分析(薬毒物中毒スクリーニング)を行っています。質量分析装置は向精神薬やOTC医薬品の過量内服で救命救急センターに搬送される患者さんに対応するため導入しています。また、当院は国際感染症に対応しており、海外渡航歴のある患者さん、外国人の患者さんの診療を行っているため寄生虫検査を多く実施しています。現在の一日当たりの検査件数は、一般尿が約350件、寄生虫が約1 ~ 2件、血算が約1,000件、凝固が約300件です。以前は一般検査と血液検査がセクション分けされ一般検査担当3名、血液検査担当4名で運営していましたが、効率的な運用を目指し、一般検査担当と血液検査担当で連携し少人数で運営可能な検査体制を構築しています。フローサイトメトリー検査のオーダーがある検体は血算が終了した後に、自動血球分析装置の搬送ラインの仕分けエリアに格納されます。そこで機器レイアウトと動線を工夫し、仕分けエリアに近い場所にAQUIOSを設置することで最小限の動作で運用できるようにしました(Fig1)。本来であれば、以前使用していたフローサイトメーターが設置されていた場所に配置するところですが、搬送ラインと離れているため、効率よく仕事が行えるように現在の配置にしました。
またその隣に顕微鏡を配置しており、形態学的検査担当者は鏡検をしながらフローサイトメトリー検査結果を確認するという使い方もしています。検体測定の際にはモニターをAQUIOS側に向けて、鏡検をしているときには顕微鏡側にモニターを回転させて画面を確認できるようにし、その場で両方の機器を使用することができるように工夫しています(Fig2)。その間も分析装置のオペレーション担当者が検体をセットしていきます。こうすることで仕事の効率化を図っています。
鏡検エリアは非感染区域で、AQUIOSは汚染区域に設置されています。そのため形態学的検査とフローサイトメトリー検査を同時に行う場合、モニターを回転させて、モニターを触るときはタッチペン等を使用して操作します。区域分けしているので、手袋が必要ないエリアと必要なエリアがあり、手袋の着脱の手間などを考えると、こういった労力を減らすような運用を考えて実施しています。少ない人数で検査を行っている分、小さなことにも目を向けて無駄を省く工夫しています。こうした取り組みが効率的な検査室運営につながっていると考えています。
少人数体制ではありますがフローサイトメトリー検査後のデータ確認も制御端末でスムーズに行えています。

Fig1. AQUIOSと多項目自動血球分析装置の距離

Fig2. 顕微鏡とAQUIOSモニター両方を一度に確認



現状のフローサイトメトリー検査について

フローサイトメトリー検査は以前から自動分注機や自動解析のソフトウエアを以前から使用していたことやリンパ球サブセット検査しか行っていないこともあり、さほど手間のかからない検査という印象でした。現在も検体をセットするだけで結果が出ますので、大変な検査という印象はありません。従来のフローサイトメーターとは違う検査機器という認識で使用しています。
フローサイトメトリー検査は通常、サンプル調製が必要であったり、測定データの再解析が必要であったりします。データに問題がある場合は検体サンプル自体に問題があるのか、もしくは試薬の問題なのか、機器の問題なのかなど、どこに要因があるかを考えて、一つ一つ検証しなければなりません。現状では仮に再解析の必要があっても原因に対するメッセージが画面上に表示されるため、何を確認すればよいのか、例えば再ゲーティングが必要な結果なのか、この結果が検体に由来するものなのかなどが分かります。それをもとに再測定・再解析の判断を行っています。
一日の流れは、検体が到着したらまずは血算を測定し、その後検体を測定します。検体はまとめて搬送されることが多いため、だいたい1ラック分(5本)を1度に測定します。測定のタイミングも滞ることなくスムーズに測定することができています。ラックも余分に準備していますので、ラックが足りずに検体をのせられないということもありません。検体はラックにセットして、機器にのせるだけです。検体量が少ない場合はラック測定ができませんが、STAT機能を使うことで測定可能なので測定できない検体はほぼありません。また抗体試薬はバイアルの底についているバーコードでロット管理を機械上で行っています。検体毎に使用した試薬のロットが記録されているため、万が一不良ロットが使用された場合にも遡及調査が可能となっております。



今後について

大量の検査需要に対応すべく機器を自動化し、マニュアル操作を極力減らしていくことが理想です。将来的にリソースが整えば、造血器腫瘍細胞抗原検査も実施したいと考えています。もし造血器腫瘍細胞抗原検査を行うとなれば、リンパ球サブセットはAQUIOS造血器腫瘍細胞抗原検査はそれ専用のフローサイトメーターを導入して検査を行うのが理想だと考えています。
またCD34陽性造血幹細胞測定については、今後検査体制が整えば院内検査も検討したいと考えています。


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