B細胞リンパ腫

B細胞リンパ腫は、B細胞(Bリンパ球)ががん化して増殖することで発症します。B細胞リンパ腫はすべてのリンパ腫の中で最も有病率が高く、非ホジキンリンパ腫(B-NHL)症例の90%がB細胞リンパ腫です1。非ホジキンリンパ腫(NHL)全体では毎年世界中で260,000人が死亡しており、65歳以上の男性に最も多く見られます2。非ホジキンリンパ腫は、通常リンパ節から発生しますが、原発性節外性リンパ腫として知られるリンパ腫は、リンパ節以外の部分に発生することがあります3

B細胞リンパ腫の種類

  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
  • 濾胞性リンパ腫
  • 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
  • マントル細胞リンパ腫(MCL)
  • 辺縁帯リンパ腫(リンパ節リンパ腫、節外リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫を含む)
  • バーキットリンパ腫
  • リンパ形質細胞性リンパ腫(Waldenströmマクログロブリン血症)
  • 原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫

形成

B細胞リンパ腫の原因となる遺伝子変異および危険因子は、それぞれの病型によって異なります。例えばMCLでは11:14転座が見られますが、バーキットリンパ腫では8:14転座が顕著に認められます4。ですが、どの病型においても、腫瘍細胞は、腫瘍微小環境における悪性B細胞の増殖と生存を促すという特徴が共通しています。B細胞リンパ腫の多くが、免疫グロブリン遺伝子座とがん原遺伝子の相互染色体転座により発生し、転座した遺伝子の発現量が減少します5。B細胞リンパ腫腫瘍は、抗原によって誘導されるB細胞受容体のシグナル伝達経路の活性化の抑制6や、Bcl-2タンパク質ファミリーの修飾による細胞のアポトーシス抑制により、その生存が促進されます7。腫瘍性B細胞と周囲の腫瘍微小環境の細胞要素(サイトカイン、ケモカイン、成長因子の放出を調節する間質細胞など)間の異型シグナル伝達による複雑なコミュニケーションによって、がん細胞の増殖や転移が促進されます8

診断と治療の評価

B細胞リンパ腫とその悪性度は、C-MYC、BCL2、BCL6の発現レベルから推測できる可能性がありますが9、各病型に特異的なバイオマーカーと起源細胞シグネチャーがあるため、診断方法はそれぞれ異なります。

細胞マーカー

National Comprehensive Cancer Networkは、B細胞リンパ腫の初期評価に以下のマーカーを推奨しています。 CD45CD3CD5CD19CD10CD20CD30CD4CD8CD7CD2CD23CD43CD103TdTCD13CD33CD1a細胞質CD3CD22、およびミエロペルオキシダーゼ10

B細胞リンパ腫の病型の識別には、CD5およびCD10が使用できます11

  • CD5+/CD10-:小リンパ球性リンパ腫およびMCL。
  • CD5-/CD10+:濾胞性リンパ腫およびバーキットリンパ腫。MCLはCD10陽性、DLBCLはCD10陰性となる可能性があります。
  • CD5-/CD10-:辺縁帯リンパ腫やWaldenströmマクログロブリン血症などの成熟B細胞リンパ腫。

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参考文献

  1. NHL Subtypes. Leukemia and Lymphoma Society. Retrieved 2 November 2021, from https://www.lls.org/lymphoma/non-hodgkin-lymphoma/nhl-subtypes
  2. Thandra, K.C,. Barsouk, A,. et al. (2021). Epidemiology of Non-Hodgkin’s Lymphoma. Medical Sciences. 9(5). doi: 10.3390/medsci9010005
  3. Vannata B, Zucca E. Primary extranodal B-cell lymphoma: current concepts and treatment strategies. Chinese Clinical Oncology. 2015 Mar;4(1):10. doi: 10.3978/j.issn.2304-3865.2014.12.01. PMID: 25841717.
  4. Küppers, R. Mechanisms of B-cell lymphoma pathogenesis. (2005). Nature Reviews Cancer. 5, 251–262. doi: 10.1038/nrc1589
  5. Singh, R., Shaik, S., et al. (2020). Non-Hodgkin’s Lymphoma: a review. Journal of Family Medicine and Primary Care. 9(4): 1834–1840. doi: 10.4103/jfmpc.jfmpc_1037_19
  6. Valla, K., Flowers, R, C., et al. (2018). Expert Opinion on Investigational Drugs. 27 (6): 513-522. doi: 10.1080/13543784.2018.1482273
  7. Adams, C., Clark-Garvey, S., et al. (2018). Targeting the Bcl-2 Family in B Cell Lymphoma. Frontiers in Oncology. 8: 636. doi: 10.3389/fonc.2018.00636.
  8. Shain, KH., Dalton, WS., and Tao, J. (2015) The Tumor Microenvironment Shapes Hallmarks of Mature B-cell Malignancies. Oncogene. 34(36): 4673-4682.
  9. Salam, D, S, D, A., Thit, E, E., et al. (2020). C-MYC, BCL2, and BLC6 Translocation in B-Cell Non-Hodgkin Lymphoma Cases. Journal of Cancer. 11(1): 190-198. doi: 10.7150/jca.36954.
  10. National Comprehensive Cancer Network. (2021) Clinical Practice Guidelines in Oncology: B-cell lymphomas. Retrieved 2 November 2021 from https://www.nccn.org/guidelines/category_1.
  11. Huan-You Wang and Youli Zu. (2017). Diagnostic Algorithm of Common Mature B-Cell Lymphomas by Immunohistochemistry. Archives of Pathology and Laboratory Medicine. 141 (9): 1236–1246. doi: https://doi.org/10.5858/arpa.2016-0521-RA

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