B細胞急性リンパ芽球性白血病

急性リンパ性白血病(ALL)に罹患している人の数は、全世界で64,200人に上ります(2017年)1。この疾患はB細胞ALL(B-ALL)とT細胞ALL(T-ALL)の2種類に分類されますが、全体の75%をB-ALLが占めます2。また、小児がんで最も多いのもこのがんです3。一般的に小児患者は治療への反応が良く、予後は良好ですが、成人患者では寛解後の再発率が高く、全生存率は小児に比べて低いです4。この違いは、成人患者には、フィラデルフィア染色体などに染色体異常があることが原因で、治療への抵抗性、併存疾患の発症率が上がることに起因します2。近年の治療プロトコルおよび検査の進歩により、B-ALL全患者の転帰はおおいに改善しています2, 5

形成

リンパ球は骨髄の造血幹細胞から発生し、その後、成熟してリンパ球になります。成熟は段階的に進み、通常、細胞シグナル、転写因子の活性化、ポジティブ/ネガティブセレクションにより、適切に管理されます6。B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)は、遺伝子異常によりリンパ球に分化できずにがん化した細胞が、アポトーシスを回避し無制限に増殖することで発症します。6, 7。正常リンパ球がクローン増殖した腫瘍性リンパ球に置き換わり、その腫瘍性リンパ球が、骨髄、末梢血、髄外部位に蓄積し2, 6、正常な白血球、赤血球、血小板の割合が減ってしまいます8

診断と治療評価

初期診断では、通常は骨髄全細胞中5%程度しか存在しないリンパが20%以上検出された場合、B-ALLと診断されます。さらに詳しい診断検査や治療計画の指針とするため、形態学的検査、フローサイトメトリー、イムノフェノタイピング、細胞遺伝学的検査が行われる場合もあります2

B-ALLの治療は、一般的に、誘導療法、強化療法、集中療法、維持療法の4つのステージに分けられます。治療の評価は近年飛躍的に進歩し、微小残存病変(MRD)の評価は、治療効果の測定や療法選択のため、様々なステージでルーチンに行われます9。MRD評価法には、マルチパラメータのフローサイトメトリー(FCM)、PCR、次世代シーケンシングなどを用いたものがあり、全て、評価に必要な感受性と特異性を有します。FCMは通常、骨髄サンプルで行われ、治療開始前に患者のベースラインの免疫フェノタイプを確立しておくことが重要です9。そうすることで、がんが再発しても、骨髄を再度FCMで解析し、治療前の細胞パネルと比較することができます。

細胞マーカー

MRDをFCMで検出する場合、CD19CD10CD20CD34CD38CD45が重要な細胞マーカーであることが複数の研究で同定されています。これらのバックボーンマーカーに加え、CD66cCD123CD73をCD30410と共に用いた場合、感度が向上することもわかっています。CD22およびCD58をその他のマーカーと組み合わせて使用した研究も行われています9

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参考文献

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  2. Terwilliger T, Abdul-Hay M. (2017) Acute lymphoblastic leukemia: a comprehensive review and 2017 update. Blood Cancer J. 7 (6). https://doi.org/10.1038/bcj.2017.53
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  4. Rowe JM. (2010) Prognostic factors in adult acute lymphoblastic leukaemia. Br J Haematol. 150(4):389-405. doi:10.1111/j.1365-2141.2010.08246.x
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  10. Theunissen P, Mejstrikova E et al on behalf of the EuroFlow Consortium. (2017) Standardized flow cytometry for highly sensitive MRD measurements in B-cell acute lymphoblastic leukemia. Blood. 129 (3): 347–357. doi: https://doi.org/10.1182/blood-2016-07-726307

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