T細胞急性リンパ芽球性白血病

A急性リンパ芽球性白血病(ALL)は小児に最も多く発生するがんで、2017年の1年間に新たにALLと診断された人は、全世界で64,190人にのぼります1 。ALL は、B細胞ALL(B-ALL)とT細胞ALL(T-ALL)に分類され、ALL全症例に占める割合は、B-ALLの方がT-ALLよりもはるかに多いです。T-ALLは非常に進行の速いがんですが、近年の治療戦略の進歩により、小児患者の予後は大幅に改善されています。残念ながら、成人患者では予後の改善は見られず、T-ALL患者の5年生存率は加齢に伴い大きく低下します2

形成

T-ALLは、血液および骨髄中で未熟なT細胞リンパ芽球が増殖し蓄積する血液悪性腫瘍です。造血リンパ系前駆体に遺伝子異常があると成熟することができず、異常なリンパ芽球や異型細胞が産生され、骨髄や末梢血、その他の組織に蓄積します。これらの異常細胞により骨髄での正常な造血が損なわれるほか、リンパ系に浸潤してリンパ節腫大を引き起こして炎症性メディエーターを放出します。

診断と治療の評価

最初の血液検査で、異常なリンパ芽球が検出されるとT-ALLが疑われますが、骨髄または血液にリンパ芽球が20%以上存在することをもって確定診断となります。形態学的検査、フローサイトメトリー、イムノフェノタイピング、および細胞遺伝学的検査等でさらに詳細な診断・予後検査を行い、患者を層別化します3

Figure 1. 急性リンパ芽球性白血病の顕微鏡写真の例8

従来、治療への応答は形態学的に評価されていました3が、最近では、治療後に残ったがん細胞の数を示す微小残存病変(MRD)測定の精度が高まり、寛解後の療法を選択する際の指標として使用されています。ALLは、このような療法選択のための基本的指標としてMRD測定を採用した最初の腫瘍性疾患です4。MRD測定の最も一般的な方法には、マルチカラーフローサイトメトリー(MFC)を用いた白血病イムノフェノタイピングや、10,000個の正常細胞から1個(10-4)の白血病細胞を検出する、十分な感度を備えたPCRを用いたツール等があります4。例えば、従来のフローサイトメトリーによる8~10カラーを用いたMRD測定では、感度10-4での解析が可能で、サンプルに関する情報を細胞レベルで迅速に得ることができます5

細胞マーカー

白血病の解析は、ほとんどの場合、骨髄の検査を行います。白血病の進行に伴い、骨髄のCD45発現量が増加します。リンパ芽球の骨髄浸潤は、前方散乱および側方散乱を用いた従来のゲーティング法よりも、CD45蛍光と側方散乱のプロットのほうがよく検出できます6。他には、核末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(NuTdT)、cytoplasmic CD3 (cyCD3)、surface-membrane CD3 (SmCD3)、CD2CD4CD5CD7CD8CD1aCD44CD99が表面マーカーとして同定されています67

ベックマン・コールター ライフサイエンスの試薬は、全てが臨床に使用できるわけではなく、国によっては研究用途のみとなる場合があります。 こちらから、シングルカラーの試薬を、規制状況、蛍光色素、アイソタイプ、フォーマット別でご覧いただけます。

フローサイトメトリーを用いた診断に関する詳細は、 こちらからご覧いただけます。

参考文献

  1. Yi M, Zhou L et al. (2020) Global burden and trend of acute lymphoblastic leukemia from 1990 to 2017. Aging. 12(22):22869-22891. doi:10.18632/aging.103982
  2. Guru Murthy GS, Pondaiah SK et al. (2019) Incidence and survival of T-cell acute lymphoblastic leukemia in the United States. Leuk Lymphoma. 60(5):1171-1178. doi:10.1080/10428194.2018.1522442
  3. Terwilliger T, Abdul-Hay M. (2017) Acute lymphoblastic leukemia: a comprehensive review and 2017 update. Blood Cancer J. 7(6). doi:10.1038/bcj.2017.53
  4. Della Starza I, Chiaretti S et al. (2019) Minimal Residual Disease in Acute Lymphoblastic Leukemia: Technical and Clinical Advances. Front Oncol. 9:726. doi:10.3389/fonc.2019.00726
  5. Van Dongen JJ, van der Velden VH et al. (2015) Minimal residual disease diagnostics in acute lymphoblastic leukemia: need for sensitive, fast, and standardized technologies. Blood. 125(26):3996-4009. doi:10.1182/blood-2015-03-580027
  6. Jennings CD, Foon KA. (1997) Recent Advances in Flow Cytometry: Application to the Diagnosis of Hematologic Malignancy. Blood. 90(8):2863–2892. doi:10.1182/blood.V90.8.2863
  7. Ikoma-Colturato MRV, Beltrame MP et al. (2021) Minimal residual disease assessment in acute lymphoblastic leukemia by 4-color flow cytometry: Recommendations from the MRD Working Group of the Brazilian Society of Bone Marrow Transplantation. Hematol Transfus Cell Ther. 43(3):332-340. doi:10.1016/j.htct.2020.09.148 
  8. https://www.istockphoto.com/fr/photo/aiguë-lymphoblastic-leucémie-all-gm481284138-69213451

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