フローサイトメトリーによる造血リンパ腫検査へのClearLLabリンパ球スクリーニングチューブの使用
Wolfgang Kern1, Mike Keeney2 (retired), Joanne Luider3, Evelyn Karl1, Ben Hedley2, Lori Lowes2, Debbie Murphy3, Diana Careaga4, Guoyan Cheng4, Liliana Tejidor4
1Munich Leukemia Laboratory, Munich, DE, Germany,
2London Health Sciences Center, London, ON, Canada,
3Calgary Laboratory Services, Calgary, AB, Canada,
4Clinical Research, Beckman Coulter Inc., Miami, FL, United States
要旨
はじめに
フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピングは、造血器腫瘍の診断に不可欠です。ClearLLab LS* チューブには、CD8-FITC、Kappa-FITC、CD4-PE、Lambda-PE、CD19-ECD、 CD56-PE-Cy5.5、CD10-PE-Cy7、CD34-APC、CD5-APC-A700、CD20-APC-A750、CD3-PB、CD45-Kroがドライ試薬フォーマットで入っています。ClearLLab LSが造血リンパ腫のスクリーニングチューブとして有用であることを立証します。
方法
病理学的細胞ポピュレーションの検出と造血器腫瘍の除外について、自家調製検査法(LDT)と ClearLLab LSの盲検比較を行いました。北米およびヨーロッパの3つの検査室において、各検査室で作製したLDTと、ClearLLab LS パネルを使用し、骨髄(BM)61サンプル、リンパ節(LN)22サンプル、全血(WB)84サンプルの評価を同時に行いました。
結果
LDT による評価で造血器腫瘍が陰性であった 77サンプルは、ClearLLab LSによる評価でも陰性でした(100%一致)。造血器腫瘍および異常ポピュレーションが含まれる90サンプルのうち、ClearLLab LSによる評価で陽性となったものは86サンプルで、LDTでの評価結果と95.6%の一致を示しました。ClearLLab LSで陽性にならなかった4症例のうち、3症例は形質細胞性腫瘍、1症例はCD7の欠失を認める成熟T細胞腫瘍でした。チューブにはCD34が入っているため、サンプルに含まれていた複数の骨髄腫で、芽球細胞を検出しました。
考察
ClearLLab LSスクリーニングチューブによる評価結果は、3つの国際検査室で作製したLDTと一致しました。
はじめに
ClearLLab LSは、白血病およびリンパ腫**(L&L)のマルチカラースクリーニング用チューブで、T細胞、B細胞、およびNK系抗原に結合する12種類、10カラーの抗体で構成されるカクテル試薬です。
抗体は、L&L抗原を単独または特定の共発現パターンで発現するリンパ球サブポピュレーションを検出できる組み合わせになっており、正常サンプル異常サンプルのどちらにも使用できます。
ベセスダ(1)国際コンセンサス勧告では、フローサイトメトリーの適応となる臨床状態として、血球減少症、貧血、白血球減少症、血小板減少症、白血球数の増加(リンパ球増加症、単球増加症、好酸球増加症)、末梢血(PB)、骨髄または体液中の非定型細胞または芽球細胞の存在、形質細胞増加症、単クローン性免疫グロブリン血症、臓器/組織腫大を提示しています。
このような臨床状態では、フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピングにより造血器腫瘍を高感度に検出することができるので、腫瘍細胞が存在しないことを実証するのに有用です。
フローサイトメトリーによって診断情報が得られる場合もありますが、それよりも重要なのは、造血器腫瘍と診断するには、他にどのような補助的検査を実施する必要があるかがわかることです。
ClearLLab LSチューブは、PB、BM、またはLNサンプル中における異常フェノタイプの有無の判断に有用なスクリーニングチューブです。
仮説
ClearLLab LSは、末梢血、骨髄、リンパ節サンプル中の異常ポピュレーションの有無を正しく識別することが可能であり、自家調製検査法による最終診断と同等の精度である。
目的
ClearLLab LSとLDTとの比較を複数の検査室で行い、ClearLLab LSが種類の異なるサンプルで異常ポピュレーションの有無を正確に判断できることを検証する。
材料と方法
Table 1. ClearLLab LSは、DURACloneテクノロジーを用いたドライ試薬フォーマットで提供される12種類、10カラーの抗体カクテルスクリーニングチューブです。
Figure 1. 各検査室のサンプルの内訳。2検査室で、それぞれ56サンプル、1検査室で55サンプルを収集しました。全てのサンプルのうち、42%が正常(疾患なし)で、異常ポピュレーションは58%でした。
Figure 2. ClearLLab LSチューブのサンプル調製と手順。ここに示す手順は末梢血サンプルでの調製手順ですが、骨髄サンプルおよび出血を認めるリンパ節サンプルでも同じです。リンパ節に明らかな出血を認めない場合は、VersaLyse溶血試薬の添加は不要です。
Figure 3. 各検査室で実施した試験のフローチャート。
結果
Figure 4. 異常ポピュレーションの検出または造血器腫瘍の除外について試験を行った167サンプルの内訳は、末梢血サンプルが84、骨髄サンプルが61、リンパ節サンプルが22でした。サンプルは、3つの検査室(北米およびヨーロッパ)で収集し、各検査室が作製したLDTおよびClearLLab LSパネルを用いて同時に評価を行いました。
Figure 5A. 本試験で対象としたT細胞、B細胞、骨髄腫サンプルの内訳。
Figure 5B. 本試験に含まれる悪性サンプル(90サンプル)に占める、急性、慢性、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、形質細胞腫瘍の内訳。
Figure 6A. ClearLLab LSのフェノタイプは、LDTで異常フェノタイプなしと評価されたサンプルと100%一致しました。
Figure 6B. ClearLLab LSおよびLDTによって異常フェノタイプが含まれると評価されたサンプルの一致度は、異常サンプル全体の95.6%です。
おわりに
- LDT で造血器腫瘍が陰性となった77サンプルは、ClearLLab LSでも陰性でした(100%一致)。
- 正常サンプルの結果は、LDTと100%一致しました。
- 造血器腫瘍および異常ポピュレーションを有する90サンプルのうち、ClearLLab LSで陽性となったのは86サンプルでした。
- 異常ポピュレーションを有するサンプルにおけるLDTとの一致度は95.6%でした。
- LDTでは陽性であった4例で、ClearLLab LSでは陽性の結果が得られませんでした。
- ClearLLab LSチューブには形質細胞腫瘍抗原が全く含まれていなかったため、形質細胞腫瘍(3例)が検出されませんでした。
- ClearLLab LSチューブでは成熟T細胞腫瘍(1例)が検出されませんでした。成熟T細胞腫瘍細胞ポピュレーションはCD7を欠失していますが、使用したスクリーニングチューブにはCD7は含まれないためです。
謝辞
本試験の参考文献として使用した全LDTデータの取得および解析を実施してくださったMunich Leukemia Laboratory (MLL)、London Health Sciences Center、Calgary Laboratory Servicesの検査室の皆さんに感謝いたします。
参考文献
- 2006 Bethesda International Consensus recommendations on the flow cytometric immunophenotypic analysis of hematolymphoid neoplasia: medical indications. Davis BH et al. Cytometry B Clin Cytom. 2007;72 Suppl 1:S5.
- CLSI H26-A2 Validation Verification and Quality Assurance of Automated Hematology Analyzers. June 2010.
- CLSI EP05-A3 Evaluation of Precision Performance of Quantitative Measurement Methods; Approved Guideline.
- CLSI EP12-A2. User Protocol for Evaluation of Qualitative Test performance; Approved Guideline - Second Edition. 2008.
- Swerdlow, S, et al. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues 4th Edition. . Lyon : International Agency for Research on Cancer, 2008.
*ClearLLab LS(リンパ球スクリーン)は、EU体外診断用医療機器規則(Regulation (EU) 2017/746)への適合を示すCE-IVDマークを受けていますが、日本国内において、本製品は研究用試薬です。本文書に記載されているベックマン・コールターの製品およびサービスマークは、米国およびその他の国におけるベックマン・コールター, Inc.の商標または登録商標です。
**ホジキンリンパ腫のみに対応