急性骨髄性白血病

急性骨髄性白血病(AML)は、遺伝子異常のタイプ、細胞系統(赤血球系、巨核球系、単球系)、芽球細胞の成熟度などの病理学的因子が多様な形態を示す、不均質な疾患です。世界保健機関(WHO)は、予後の予測と治療の指標とすることを目的として、病理学的特徴に基づき、AMLを4つの主要なタイプと、さらに細かなサブタイプに分類しています。AMLの年齢標準化罹患率は10万人あたり1. 54件で、有病率は、すべての年齢層、性別、民族で、0.6〜11.0です1, 2 診断技術や治療薬は進歩したものの、AMLは依然として予後不良の疾患であり、全生存率はわずかに15〜30%です。しかし、同種幹細胞移植や免疫療法などの新しい治療法による生存率の改善が期待されます。

形成

AMLは、骨髄中で造血前駆細胞(骨髄芽球)があらかじめ決められた健康な細胞に分化できず、骨髄に骨髄前駆細胞が蓄積することで発症します。正常な血液細胞が作られないため、全身性の汎血球減少症を引き起こし、日和見感染症や出血の形で、突然かつ重篤な臨床症状をもたらします3

AMLの発症機序は、造血幹細胞の遺伝子コードの変化に起因します。FLT3、NPM1、DNMT3A、IDH1、IDH2、TET2、RUNX1、p53、NRAS、CEBPA、WT1などの遺伝子変異が、AMLの発症と促進に関連することがわかっています4

診断と治療の評価

AMLは、形態学的検査(Fig.1)、組織化学検査、免疫表現型検査、および骨髄組織で実施されるDNA配列決定検査に基づいて、診断とリスク層別化を行います。骨髄芽球数が20%以上であり、細胞質染色によってミエロペルオキシダーゼ陽性のアウアー桿体が観察され、核型解析で遺伝子変異が検出された場合、AMLと診断されます。治療は主に化学療法であり、患者固有の要因とAMLのタイプに基づいて、誘導療法と維持療法を行います5

Figure 1. 急性骨髄性白血病の顕微鏡写真の例9

AMLは再発率が非常に高く、根治はまれであるため、細胞計数と細胞遺伝学的検査で微小残存病変のモニタリングを行うことが重要です4。 AMLが再発する主な原因は、白血病幹細胞(LSC)が媒介する薬剤耐性です。LSCは無制限に自己複製し、さらに多くの芽球を産生するため、疾患が悪化します6

細胞マーカー

骨髄芽細胞は、 CD13CD33CD34等、正常な幼若骨髄細胞にも存在する抗原因子を発現しています。AMLの形態学的サブタイプと、がん化している前駆細胞の系統は、細胞マーカーが単球系(CD4CD14CD11b)、赤血球系(CD36CD71)、 巨核球系(CD41a、CD61)のどれかでわかります7 定量的RT-PCRで、再発患者のLSCマーカー(CD34、CLL-1、TIM-3、BMI-1)を検出できます6

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参考文献

  1. Dong, Y., Shi, O et al. (2020) Leukemia incidence trends at the global, regional, and national level between 1990 and 2017. Exp Hematol Oncol 9(14). https://doi.org/10.1186/s40164-020-00170-6
  2. Deborah P Lubeck, Mark Danese et al. (2016) Systematic Literature Review of the Global Incidence and Prevalence of Myelodysplastic Syndrome and Acute Myeloid Leukemia. Blood 128 (22): 5930. doi: https://doi.org/10.1182/blood.V128.22.5930.5930
  3. Vinay Kumar, Abul K. Abbas, Jon C. Aster. (2021). Robbins Basic Pathology. 9th edition. Elsevier Saunders. 444-445.
  4. Kantarjian, H., Kadia, T et al. (2021). Acute myeloid leukemia: current progress and future directions. Blood Cancer J. 11(41). https://doi.org/10.1038/s41408-021-00425-3
  5. Schiffer CA, Stone RM. Morphologic Classification and Clinical and Laboratory Correlates. In: Kufe DW, Pollock RE, Weichselbaum RR. (2003). Holland-Frei Cancer Medicine. 6th edition. Hamilton (ON): BC Decker. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK13452/
  6. Saultz, J. N., & Garzon, R. (2016). Acute Myeloid Leukemia: A Concise Review. Journal of clinical medicine. 5(3), 33. https://doi.org/10.3390/jcm5030033
  7. Darwish, N. H., Sudha, T et al. (2016). Acute myeloid leukemia stem cell markers in prognosis and targeted therapy: potential impact of BMI-1, TIM-3 and CLL-1. Oncotarget. 7(36): 57811–57820. https://doi.org/10.18632/oncotarget.11063
  8. Ding, Y., Gao, H et al. (2017). The biomarkers of leukemia stem cells in acute myeloid leukemia. Stem cell investigation. 41(9). https://doi.org/10.21037/sci.2017.02.10
  9. Based on https://media.istockphoto.com/photos/micrograph-of-acute-myeloid-leukemia-picture-id614122970?s=612x612

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