慢性リンパ性白血病
慢性リンパ性白血病(CLL)は、欧米諸国で最も一般的な白血病であり、2017年の世界の白血病症例全体の17. 5%を占めています1。患者の大部分が高齢者で、診断時の平均年齢は約70歳です。CLLの臨床経過は患者によって異なります。病名が示すように、通常は慢性でゆっくり進行し、一部の患者では無症候性ですが、進行性に変わる場合もあります。症候性CLL患者の2%から10%がリヒター症候群を発症しますが2、リヒター症候群に移行すると、より増殖の速いリンパ性腫瘍(通常はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)に形質転換しているため、予後がはるかに悪くなります。
形成
B細胞受容体(BCR)の構成因子である免疫グロブリン(IG)は、CLLの発症機序において重要な役割を果たし、疾患の開始と進行に関与します。すべてのCLLは抗原刺激を経た成熟B細胞に由来し、抗原刺激後に2つの細胞経路のどちらかを進み、M-CLLかU-CLLかに進展します。M-CLLは、T細胞依存性反応を経たB細胞に由来し、IG重鎖可変領域(IGHV)遺伝子に体細胞超突然変異のあるメモリーB細胞が産生される一方、U-CLLはT細胞非依存反応を経たB細胞から生じ、IGHV遺伝子に変異のないB細胞が産生されます3。U-CLLは悪性度が高く、クローン進化を起こす可能性が高いため、これは臨床において有用です3。BCRと微小環境との相互作用は、CLL細胞のさらなる増殖とアポトーシス阻害にも関与しています。2
診断と治療の評価
CLLは定期的な血液検査でリンパ球増加症を認め診断に至るケースが多く、無症候性の患者では、特にその傾向があります。末梢血で5 x 109/Lを超えるモノクローナルB細胞増加が3か月以上続いた場合、確定診断となります4。フローサイトメトリーによるIG軽鎖制限の検出で、クローン性を確認することができます4。
CLLには多数の治療法があります。CLLは多様性のある疾患であるため、通常は一人一人の患者に合わせて治療法が調整されます。根絶が望ましいのは明らかですが、無増悪生存期間の延長も受け入れることのできる治療目標です5。治療が成功しているかを測定する手段として、治療後に残ったがん細胞の数を示す微小残存病変(MRD)のモニタリングが、ますます一般的に実施されています。MRDは、6カラーのフローサイトメトリー、PCR、またはハイスループットシーケンシングで検出可能で、これらすべての手法は、検出に必要な感度10-4を備えています。4
細胞マーカー
フローサイトメトリー解析は、6つのマーカー(CD19、CD20、CD5、CD43、CD79b、CD81)からなるコアパネルで構成されていますが、新しい機器では、CD45、CD3、CD200、CD23、ROR1、CD160 6等のマーカーを加えた8カラーまたは10カラーでの解析が可能です。6
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参考文献
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- Delgado J, Nadeu F et al. (2020) Chronic lymphocytic leukemia: from molecular pathogenesis to novel therapeutic strategies. Haematologica.105(9):2205-2217. doi:10.3324/haematol.2019.236000
- Gaidano G, Foà R et al. (2012) Molecular pathogenesis of chronic lymphocytic leukemia. J Clin Invest. 122(10):3432-3438. doi:10.1172/JCI64101
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- Rawstron AC, Fazi C et al. (2016) A complementary role of multiparameter flow cytometry and high-throughput sequencing for minimal residual disease detection in chronic lymphocytic leukemia: an European Research Initiative on CLL study. Leukemia. 30(4):929-936. doi:10.1038/leu.2015.313