ClearLLab 10Cパネルマーカーとその組み合わせ

Mike Keeney London Health Sciences Centre, Victoria Hospital, London, ON, Canada, and Sandra Hernandez Beckman Coulter Life Sciences, Miami, FL 33196

はじめに

フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピングは、血液腫瘍の診断、分類、病期分類、およびモニタリングに不可欠なツールです。フローサイトメトリー装置の性能が大幅に進歩したことに加え、非常に多様な抗体や蛍光色素が利用できるようになったことで、さまざまな正常細胞集団の同定および表現型異常を検出する能力が向上しました。

ClearLLab 10C*パネル は、10カラーの、乾燥させたドライ抗体試薬4本で構成されるアッセイです。各チューブには、T細胞、B細胞、NK細胞、骨髄系細胞の抗原に結合する抗体が調製されています。 ClearLLab 10Cパネルは、2006年のベセスダコンセンサス会議による推奨事項に従い、特定の細胞系統に反応する抗体が含まれています。抗体は、目的とする抗原を単独または特定の共発現パターンで発現する白血球サブポピュレーションを同定できる組み合わせになっており、正常サンプルおよび造血器腫瘍(慢性白血病、急性白血病、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、骨髄異形成症候群 [MDS]、骨髄増殖性腫瘍 [MPN])を有するか、疑われる患者のサンプルの両方に使用できます。 ClearLLab 10C *パネル に含まれる試薬の種類とその組み合わせは、臨床症状2に適切に対応するためのガイドライン 1 に基づいて、検体に存在するすべての主要な細胞集団に反応し3、 主な造血細胞集団全て(正常な細胞集団、がん化した集団の両方)を包括的に同定できるよう、選択されています1-10。 サンプル中の正常細胞は内部参照として機能し、特定の細胞集団でマーカーが予想よりも明るいか暗いかを判断するために使用します。パネルには、バックボーンマーカーと冗長マーカーが含まれているため、チューブ間のポピュレーションの追跡、データの統合、予期しない結果が出た場合のトラブルシューティングが容易です。このパネルでは、各チューブにCD45CD34のバックボーンマーカーが含まれています。 CD45は、一貫したゲーティングが行えるよう、4本のチューブ全てに使用されています。 CD34CD45 弱陽性を組み合わせることで、細胞が造血幹細胞起源であることを確認できます。M1チューブ、M2チューブのCD13パネルおよびHLA-DRパネル等には、他の冗長マーカーが含まれています。 CD10CD19はリンパチューブと骨髄チューブに含まれています。骨髄チューブに含まれるCD19は、t(8:21)転座を有する急性骨髄性白血病(AML) で異常に発現するため、特に有用です2CD7は、AMLにおけるCD7の異常発現を検出するために、T細胞チューブおよびM1細胞チューブに含まれています。 CD200は、B細胞腫瘍、特に非定型CLLマントル細胞リンパ腫の鑑別診断に有用であり、CD23に代えてB細胞チューブに加えられています11

パネルには、成熟マーカーと未成熟マーカーのどちらも含まれるため、効率が向上するだけでなく、チューブ内すべての細胞を識別することが可能です。パネルの構築では、有益な免疫表現型を検出するため組み合わせて使うことができるチューブを各細胞系統で開発することに重点を置いています。

1Pacific Blue. 2APC-Alexa Fluor 700. 3APC-Alexa Fluor 750.

以下のケーススタディは臨床試験データから得た症例についてのものですが、ClearLLab 10C*パネルの有用性がよくわかります。

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ケーススタディ

慢性リンパ性白血病の診断後、10年間無治療経過観察の85歳男性。フォローアップの通院で、貧血と骨痛を訴えました。全血球数(CBC)検査と、骨髄吸引および生検による形態学的検査を行いました。さらに、骨髄吸引サンプルで、ClearLLab 10C* パネルを使用したフローサイトメトリーによるイムノフェノタイピングを行いました。

フローサイトメトリー検査を実施し、骨髄吸引および生検による形態学的検査の結果より早く、2時間以内に結果が出ました。主要マーカーの結果は以下のとおりです。

Figure 1a: 主要マーカー:リンパ球:赤、B細胞:オレンジ、単球:緑、顆粒球:青、CD45:薄紫。

CD19+細胞の集団(オレンジ)dim/negativeCD20CD10 neg、 CD5 pos/dim、CD200 bright、CD38 neg、 lambda+。既知のCLLに起因する慢性リンパ性白血病集団と一致しています。

Figure 1b: CD45 dim集団(紫)は、CD20 dim/negative、CD19CD5CD10は陰性。 CD38が強い陽性であるため、CD34も陽性になっています。ですがこの症例では、CD45 dim集団が各チューブ内でAPCと反応していると考えられます。 CD45 dim集団の軽鎖の発現は、解釈ができませんでした。

Figure 2: B細胞(オレンジ)は、B細胞チューブで見られたのと同様、CD45 dimの集団(紫)は、CD56を除くすべてのT細胞マーカーが陰性です。

Figure 3: CD45 dimの集団(紫)はCD13およびHLA-DRに陽性です。

Figure 4: CD45 dim の集団(紫)は、CD117弱陽性、CD13陽性、CD38強陽性です(矢印)。

Figure 5: 骨髄吸引液のH&E染色では、主に小リンパ球(オレンジの矢印)と形質細胞と思われる塊(紫の矢印)が認められます。下部中央の細胞は、巨核球です(緑の矢印)。

Figure 6: 骨髄吸引液のH&E染色の高出力フィールド(x100)。小リンパ球(オレンジの矢印)と形質細胞(紫の矢印)がはっきりと見えます。

考察

長期無治療経過観察の低悪性度慢性リンパ性白血病の85歳男性が定期フォローアップにおいて骨痛を訴え、寝汗と過去1か月間の体重減少を報告した症例について考察します。フローサイトメトリーでは、予想された通り、CLL集団にCD19+、CD5+、 CD20の弱い発現、モノクローナル性のlambdaの弱い発現が認められました。 CD45 dim集団はCD38+++、 HLA-DRCD56CD13が陽性、 CD20は dim/negativeでした。他のB細胞、T細胞、骨髄系細胞のマーカーは陰性で、軽鎖発現は解釈できませんでしたが、フォローアップ検査では、細胞質染色でkappa陽性が認められました。骨髄中に20%を超える血漿細胞が認められた形態学的検査結果を併せて考慮すると、この症例では、既知のCLLに、骨髄腫につながる別のクローンが発生しています。

注: CLL集団はlambda軽鎖を発現し、形質細胞集団はkappa軽鎖を発現していたことから、低悪性度CLLから骨髄腫に進行したのではなく、2つの異なる疾患が併発している状態であることが確認されました。

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おわりに

フローサイトメトリーによるイムノフェノタイピングは、血液悪性腫瘍の存在を明らかにしたり、病変が存在していないことを実証するのに役立つ高感度なツールです。 ClearLLab 10Cパネル は、マルチパラメータのイムノフェノタイピングによる細胞集団の定性的同定を目的とした試薬です。この試薬は、慢性白血病、急性白血病、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)および 骨髄増殖性腫瘍(MPN)等の造血器腫瘍が疑われる血液学的異常を呈する患者の鑑別診断に補助的に使用します。結果の解釈は、病理学者等の専門医が他の臨床所見や検査所見と併せて評価しなければなりません。

パネル設計に関するウェビナーを見る

参考文献

  1. 2006 Bethesda International Consensus Recommendations on the Immunophenotypic Analysis of Hematolymphoid Neoplasia by Flow Cytometry, Cytometry 2007 72B:S14-22.
  2. WHO 2008 Classification of Tumours of Hæmatopoietic and Lymphoid Tissues, 4th Edition, 2008, IARC Press.
  3. The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms. Swerdlow SH, et al. Blood. 2016;127:2375-90.
  4. The 2016 revision of the World Health Organization classification of myeloid neoplasms and acute leukemia. Arber DA, et al. Blood 2016 127:2391-2405.
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  6. 2006 Bethesda International Consensus recommendations on the immunophenotypic analysis of hematolymphoid neoplasia by flow cytometry: recommendations for training and education to perform clinical flow cytometry. Greig B, Oldaker T, Warzynski M, Wood B. Cytometry B Clin Cytom. 2007;72 Suppl 1:S23-33.
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  9. 2006 Bethesda International Consensus Conference on Flow Cytometric Immunophenotyping of Hematolymphoid Neoplasia. Stetler-Stevenson M, Davis B, Wood B, Braylan R. Cytometry B Clin Cytom. 2007;72 Suppl 1:S3.
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  11. Diagnostic Usefulness and Prognostic Impact of CD200 Expression in Lymphoid Malignancies and Plasma Cell Myeloma, Alapat D, Coviello-Malle J, Owens R, Qu P, Barlogie B, Shaughnessy JD, Lorsbach RB, American Journal of Clinical Pathology, Volume 137, Issue 1, 1 January 2012; 93-100.

本試薬は研究用です。診断には使用できません。

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