マントル細胞リンパ腫

マントル細胞リンパ腫(MCL)は、進行が速く、まれなタイプの非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、リンパ節濾胞のマントル層外縁に由来する悪性Bリンパ球が原因で発症します。MCLは全NHLの5~7 %を占め、米国での年間発生率は20万人に1人の割合で、その大部分が60~70歳の男性です1

MCLは臨床症状の異なる2タイプに分けられます2

  • ほとんどのケースが古典的MCLまたはリンパ節性MCLで、通常、リンパ節が肥大した後、リンパ管や血液を介して体の他の部位に広がります。
  • 白血病非リンパ節MCLは緩徐進行性であることが多く、血流や骨髄中の脾臓、リンパ球細胞の腫れを生じる場合があります。

形成

MCLは、マントル層での異常なB細胞の産生が特徴ですが、根本的な原因ははっきりとはわかっていません。MCL患者の85%に共通する後天性遺伝子異常として3、11番染色体と14番染色体の間の転座が特定されています。この遺伝子異常はbcl-1遺伝子座の再構成と遺伝子CCDN1の調節不全を引き起こし、リンパ腫細胞における細胞増殖促進タンパク質サイクリンD1の過剰発現をもたらします4 。これが、リンパ節における悪性Bリンパ球の過剰増殖につながると考えられていますが、これ以外にも原因がある可能性が高いと考えらます。SOX-11は、古典的MCLの病因における重要な発がん性転写因子としても浮上しており、サイクリンD1陰性の症例であっても、大多数の患者で過剰発現しています。この転写因子は、MCL細胞の腫瘍増殖を促し、細胞の成熟を妨げ、シグナル伝達経路および転写経路を調節すると考えられています5

診断と治療の評価

MCLは、疾患がIII期またはIV期に進行した後に診断されるケースがほとんどです。MCLと他のNHLとの識別には、リンパ節または患部の切除生検を行い、免疫化学染色でサイクリンD1、SOX-11、CCND1のKi-67値、およびその他のB細胞マーカーを検出します。また、リンパ節の剥離やマントル帯の拡大などの形態学的異形成も、MCL診断に役立ちます6

Figure 1.マントル細胞リンパ腫の顕微鏡写真の例9

MCL国際予後指数(MIPI)では、患者の予後を、年齢、ECOGパフォーマンスステータス(疾患の進行具合を示す指数)、LDH(乳酸脱水素酵素)値、白血球数、およびKi-67陽性率に基づいて、5年生存率が60%の低リスク群、中間リスク群、高リスク群の3グループに分類します7。これらの結果に基づいて、症状を定期的に監視するか、プロテアソーム阻害剤での治療を行います。若年患者には、多剤併用化学療法や同種造血幹細胞移植が行われる場合があります。

細胞マーカー

MCLは、CD19CD20CD22、PAX5、CD79aを強く発現した成熟B細胞表現型の発現を特徴としています。 大多数の症例で、腫瘍細胞はCD5を共発現し、BCL-2、CD43FMC7は陽性、CD23CD10、BCL-6、CD200、LEF1は陰性です8

 

ベックマン・コールター ライフサイエンスの試薬は、体外診断用医薬品と研究用途のみの2種類ございます。抗体検索から、シングルカラー抗体試薬を、規制状況、蛍光色素、アイソタイプ、フォーマット別でご覧いただけます。体外診断用医薬品は、「Regulatory Status」で「Japan IVD」にチェックを入れてご確認ください。

フローサイトメトリー検査が診断にどのように利用できるか知りたいですか? はい!

参考文献

  1. Mantle Cell Lymphoma, National Organization for Rare Disorders. (2021). Retrieved 21 October 2021, from https://rarediseases.org/rare-diseases/mantle-cell-lymphoma/
  2. Swerdlow, S. H., Campo, E., et al (2016). The 2016 revision of the World Health Organization classification of lymphoid neoplasms. Blood. 127(20): 2375–2390. https://doi.org/10.1182/blood-2016-01-643569
  3. Leukemia and Lymphoma Society. (2014). Mantle Cell Lymphoma Facts [pdf] (4th ed., pp. 1-9). Retrieved from https://www.lls.org/sites/default/files/file_assets/mantlecelllymphoma.pdf
  4. R Rimokh, F Berger,. et al (1993). Rearrangement and overexpression of the BCL-1/PRAD-1 gene in intermediate lymphocytic lymphomas and in t(11q13)-bearing leukemias. Blood. 81 (11): 3063–3067. doi: https://doi.org/10.1182/blood.V81.11.3063.3063
  5. Beekman R, Amador V, Campo E (2018). SOX11, a key oncogenic factor in mantle cell lymphoma. Current Opinion Hematology. 25(4):299-306. doi: 10.1097/MOH.0000000000000434. PMID: 29738333.
  6. Lynch DT, Koya S, Acharya U. (2021). Mantle Cell Lymphoma. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. PMID: 30725670.
  7. Hoster E, Dreyling M, et al. (2008) A new prognostic index (MIPI) for patients with advanced-stage mantle cell lymphoma. Blood. 111(2):558–65. doi: https://doi.org/10.1182/blood-2007-06-095331
  8. Veloza L, Ribera-Cortada I., et al. (2019) Mantle cell lymphoma pathology update in the 2016 WHO classification. Annals of Lymphoma. 3:3
  9. https://www.shutterstock.com/de/image-photo/pleural-fluid-cytology-showing-involvement-by-1665700435

Leukemia and Lymphoma

お問い合わせ