Multisizer 4eを用いたライフサイエンス研究
細胞径や細胞の体積は、細胞サイクル、浸透圧調節、細胞死、発症機序、その他の生物学的研究における細胞の品質評価において重要なパラメータです。Multisizer 4eは、コールター原理を用いて細胞径や細胞の体積の変化をリアルタイムに検出できるため、細胞の品質評価に広く使用されています。データ比較とグラフィカルサマリ機能により、経時的な研究プロセスが容易になります。
セルカルチャーの増殖に最適なパラメータの選択し、増殖や目的物質が培地に与える影響を研究するためには、培地中の細胞濃度を正確かつ迅速に求めることが重要です。
直径が10 μmのアパチャーは200 nmという小さな細胞内小器官を検出できるため、ミトコンドリアやリポソーム研究の新たな可能性を拓きます。
コールター原理を用いた細胞分析はこちらのページでも詳しくご紹介しています。
アプリケーション
- 再生医療研究
- 細胞治療(がん免疫療法)研究
- 微生物学
- 海洋生物学
- 細胞生物学
主な特長
- 200 nm ~ 1,600 μmの粒子の測定が可能
- サンプルの細胞数、濃度、細胞径を正確に測定
- コールター原理は、微生物・細胞の体積を正確に測定することができる細胞の品質評価法
- 細胞塊(スフィア、スフェロイド)、細胞内小器官(オルガネラ)のカウント
- 平均細胞径の変化をリアルタイムに検出
- サンプル粒子の平均粒子径と大きさが著しく異なる粒子を一つ一つ検出(細胞凝集の検出)
ライフサイエンス研究領域のアプリケーション例
コールター法を用いた細胞のサイズ分布、個数・サイズ・体積変化を解析することで、多くの貴重な情報を得ることができます。ライフサイエンス研究の対象となるサンプルは、細菌、微生物、細胞内小器官、細胞と多岐におよび、全てがコールター法で測定できる対象です。ここでは、コールター法を用いた代表的な測定例を紹介します。
細菌・真菌・酵母菌類
Multisizer 4e は、0.2 μmを測定下限値とした個数カウント、サイズカウントが可能なため、黄色ブドウ球菌、大腸菌、そして乳酸菌などの平均粒子径1 μm前後の細菌類を計測することが可能です。さらに、コールター原理は、わずかなサイズ差を識別したり、正確な個数を計測することが可能なことから、わずかなサイズ差からの菌種の識別や、単位容量当たりの菌数計測、フィルトレーション後の菌数計測も可能です。
詳細は、アプリケーションノート「コールターカウンターを用いた薬剤耐性菌の測定」をご覧ください。

(平均粒子径:1.007 μm)

(平均粒子径:MRSA 1.022 μm, VRSA 1.088 μm)
シアノバクテリア・プランクトン類
シアノバクテリア(Cyanobacteria)は、クロロフィルを光合成色素として持つ単細胞の原核光合成微生物で、近年は、有用物質やバイオ燃料の大量生産のために産業利用が検討されている微生物です。これらの生産の産業化のために、細胞増殖の最適な条件の検討に、細胞サイズと細胞数が重要なパラメータとなります。また、貝類の中でも、食用、環境浄化用途など、付加価値の高い貝類は、幅広く養殖されている海産物で、効率的な繁殖のために、給餌に利用されるプランクトンのサイズと濃度評価に、Multisizer 4e を利用することが可能です。
詳細は、アプリケーションノート「Multisizer 4eを用いた二枚貝の育成繁殖のための分析」をご覧ください。



細胞治療用の細胞評価
細胞療法の一つであるCAR-T 細胞療法は、白血球の一種であるT 細胞へ遺伝子(CAR)を導入することにより樹立したCAR-T 細胞を用います。CAR-T 細胞が標的となるがん細胞を認識し、自身の免疫システムを活性化することでがんを攻撃します。T 細胞は活性化、増殖刺激により細胞の体積が大きくなることが知られています。この性質がCAR-T 細胞にも保持されている必要があります。Multisizer 4e により細胞の体積を計測することでCAR-T 細胞作製時の品質を評価することが可能になります。

再生医療用の三次元培養細胞(スフェロイド)品質評価
スフェロイドは、数千個の細胞同士を凝集させ3 次元培養によって立体的に構築された細胞塊で、再生医療や固形癌に対する薬効評価に利用される組織です。幹細胞由来細胞によるスフェロイドを作製して、Multisizer 4e を用いて細胞塊の体積を測定することで、再生医療に用いるスフェロイドの品質評価をします。

株化細胞由来スフェロイドを作成し、個数、大きさ、体積を評価しました。スフェロイドの形成が維持された状態では150 μm以上の大きさを維持できますが、維持されない場合にはスフェロイド径およびその体積が減少します。Multisizer 4e を使用することで、二次元画像では得られない三次元のスフェロイドの状態を評価できます。

顕微鏡下で観察したときに丸いスフェロイドで観察されても(上部イメージ図)、スフェロイド内に空隙が生じている場合(下部イメージ図)、Multisizer 4e は正確に体積を計測可能であるため、顕微鏡では観察が難しい三次元のスフェロイドの状態を体積から観察できます。
本件に関連する アプリケーションノート「スフェロイドのサイズのコントロールと製品化へのサポート」でも、Multisizer 4eを用いたスフェロイドのサイズ測定に関してご紹介しております。ぜひご覧ください。
その他アプリケーション
- アプリケーションノート「Multisizer 4eによる脂肪細胞サイズの精密測定」
コールター原理(電気的検知帯法)で肥満症患者と健常者の脂肪細胞の大きさの違いを検出 - インタビュー記事「水田土壌細菌の菌体計測における コールターカウンターの有用性」
東京大学大学院農学生命科学研究科の増田先生が取り組まれている研究テーマと、菌数計測におけるMultisizer 4eの有用性をお伺いしました。 - インタビュー記事「iPS細胞由来ナチュラルキラー細胞の大量製造法開発における コールター原理の有用性」
株式会社ヘリオス 倉知様が取り組まれているiPS細胞由来ナチュラルキラー細胞の大量製造の開発と、iPS細胞スフェロイド粒度制御におけるMultisizer 4eの有用性ついて伺いました。
コールター法を用いた粒子計測装置 Multisizer 4e
コールター原理は数千ものサンプル種の解析に使用されています。工業分野においては、インク・トナー、研磨剤、フィルタ、金属、半導体、そして電池分野といった産業における様々な材料粒子サンプルの品質管理、工程管理の部門で、材料の均一性、異物の検出などの目的で広く利用されています。ライフサイエンス分野でも細胞サイクルや病理過程における細胞応答、アポトーシス、幹細胞、低温生物学、海洋生物学、生態学等といった、多くの分野の研究において、細胞数と細胞径の変化を計測するのにコールター原理が用いられています。