粒子計測の基礎
1. 粒子とは
粒子とは何か?ウェブスター辞典によると、粒子とは「わずかな量または断片」あるいは「何らかのもので、相対的に小さい、または最も小さい個々の部分、あるいは量」のことです。「小さい」という単語は「何らかのもの」に関連しているため、粒子がクオークほどの小さいものであったり、または太陽のように大きなものであったりします。つまり、広大な宇宙においては、太陽はまさに小さな粒子なのです。したがって、粒子を研究している科学や技術分野の範囲は、天体物理学から原子核物理に至るまで、思いつく限りの広さを持っています。そのため、粒子について考えるときは、興味を持っている粒子のタイプを定義しなければなりません。
「微粒子」は、通常、数ナノメートルから数ミリメートルまでの範囲の粒子を指す用語です。粒子は、多種多様な形態で存在することができます。これらの形態は、生体高分子やポリマーにおよび、タンパク質、ヒドロゲル、DNA鎖、ラテックス等の直鎖や網状構造として存在し得るものです。粒子には、無機、金属、または有機の小分子からなる集団、あるいは、場合によっては、マイクロバブルのような均一な空間部分も含まれます。しかし、粒子の最も一般的な形態は、金属酸化物、糖、医薬粉末、塗料、さらにはコーヒーの味を良くするために使われる非乳製品クリーマーなどの大きな容量(バルク材)の一部なのです。

図1.1. 産業用粒子の大きさ
粒子物性評価と粒子計数は、主に図1.1 に示されるサイズ範囲の粒子を調べることに関係しています。このサイズ範囲内で、バルク材と粒子とを区別し得る2つの物性があります。
- 一般的にバルク材の中には、多数の粒子が存在しており、材料が均一ではない場合、個々の粒子が異なる物理的または化学的物性を有する場合があります。これらの粒子の集合挙動は、一般に肉眼で観察可能です。個々の粒子が寄与することで、巨視的性質が誘導されます。粒子の特性がバルク材のすべての粒子について同じである場合、そのバルク材は「単分散(monodisperse)」であると考えられます。バルク材の粒子の全部または一部が目的の物性と異なる性質を有する場合、そのバルク材は「多分散(polydisperse)」であると考えられます。もう1つの用語「分散中断(pausidisperse)」は、少数の異なった群を有するバルク材を説明する際に用いられます。ある群内のすべての粒子は、該当する物性について同一の値を有しています。
- 小粒子の比表面積(単位質量あたりの表面積)は、多くの重要かつユニークな界面現象(例えば、周囲媒体や隣接粒子との表面相互作用)を導くほどの大きな影響力をもっています。密度が2 g / cm3 の球状粒子の場合、直径が1 cmであれば、比表面積は3 cm2 / gとなりますが、直径が10 nmまで減少すると、比表面積が3,000,000cm2 / gまで増加します。この例は、どのようにして粒子の直径が表面積を決定するかについて示しています。同時に、ある粒状系の熱力学や動力学的安定性を次々と決定します。
上述した表面特性は、コロイド粒子にとって特に固有のものです。コロイドという言葉は、「接着剤様の(glue-like)」 を意味するギリシャ語に由来し、接着剤分子が羊皮紙膜を通過しないという観察に基づいて1861 年にトーマス・グラハムによって提唱されました。したがって、コロイド科学は、コロイド単位の大きさに基づいています。多くの物理的特性は、グラハムによって観察されたものに加えて、コロイド系(定義上、大きさが1 μm未満の、少なくとも1つの次元を有するバルク材を含む)によって示されます。一般的に、コロイド粒子は10-9 m から 10-6 m.までの大きさを有します。
2. 粒子計測が関わる分野
前段で述べた通り、粒子計測はコロイド懸濁系、エアゾール、およびエマルジョン塗料は、多くの分野で一般的に使用されており、産業界および学界において広く研究されています。以下は、粒子サンプルが関わる分野について、一部を列記しております。
|
|
|
|
粒子計測は、私たちの社会に深く入り込んでおり、品質や工程管理において、多くの産業で分析ツールとして用いられているのみならず、廃棄物処理、汚染防止、および排出監視の環境産業などのような、一般的に目にすることが少ない分野においても、非常に有用です。バイオテクノロジーなどの新しい産業においては、研究プロセスおよび生産プロセスにおいて、粒子物性分析の重要性が増しています。
3. 粒子の物性評価とは
粒子科学技術が重点的に取り組んでいる領域の1つは、粒子をサイズと濃度で評価することです。粒子の挙動とその物理的パラメーターの多くは、そのサンプル内に存在する粒子のサイズと数に大きく依存しています。
特に、サイズ(ナノメートルからミリメータまで)と形状(球体から多孔性の平板まで)のバリエーションは多岐に渡っており、多くの技術が粒子の物性評価で用いられています。 最新の粒子物性評価技術が開発される以前は、物理的分別方法(例えば、ふるい分け)が唯一の利用可能な評価方法であり、この方法は数十μmより大きな粒子のみに使用可能でした。その上、古典的分別法では、通常いくつかの大きさに粒子分別することしかできず、非常に低い分解能しか有していませんでした。光学顕微鏡法は、これに対する唯一の例外であり、個々の粒子の目視観測が可能な大きさの範囲をμmオーダーにまで広げました。しかしながら、光学顕微鏡検査では、観察する粒子が数十であり、この解析結果のみから溶液状態で存在する数十億から数兆に及ぶ粒子の物性を決定することは非常に難しいと言えます。今日、新たに多くの洗練された技術が利用可能になり、これらを粒子物性評価に用いることが可能です。
4. 粒子のサイズの定義
3次元非球形または非立方形の粒子において、その次元を表すには1つ以上のパラメーターが必要になります。この場合、以下のような疑問が生じます。「粒子の物性を決定させるために、2、3の次元数を調べれば十分だろうか」。この答えは、長方形(次元数が2または3)、」または円柱形(次元数が2)等の規則的な形状を持つ物体については「イエス」です。しかし、現実の世界でよく遭遇する不規則な形状を有する粒子については、2、3程度のパラメーターを用いるだけでは完全な物性評価を行うことはできません。仮に数粒子だけを扱うならば、このパラメーター数でも可能かもしれませんが、粒子全体の次元の物性評価を行うためにはより多くのパラメーターを数値化する必要があります。
粒子全体の物性評価に必要とされるパラメーターをすべて得ることは非常に困難です。しかし、数百万もの粒子を解析する場合、個々の粒子について物性を評価することは実用的ではありません。各々の粒子について指標をもつ場合、1つのパラメーターに着目すべきであり、有用なパラメーターとしてサイズが挙げられます。
粒子のサイズを決定する際に使用する定義は、得られるサイズのデータに影響を及ぼします。サイズを決定する方法は1つしかないと思われるかもしれませんが、実際には、3次元の不規則な形状の粒子サイズを評価するために、数多くの定義があります。最も一般的なサイズの定義は、同等な球面表示(spherical representation)を用います。なぜなら、球体は、大きさを完全に評価するために直径(パラメーター)を必要とする3次元物体だからです。粒子のすべての次元に関する情報を単一の数値に凝縮する場合、この単一の数値には、粒子の形状に関連した歪んだ情報または要約された情報が内在してしまうことを考慮に入れなければなりません。不規則な3次元の形状粒子のサイズを等価な球体に変換するために様々な方法が存在しています。文献でよく使用されるサイズの定義をいくつか挙げて説明します。

図1.2. サイズの定義例
さらに、以下のようなものもあります。
- 同じ最大長の球体
- 同じ最小長の球体
- 同じ重さの球体
- 同じ体積(ヘイウッド径)の球体
- 同じ表面積の球体
- 同じふるい口径の球体
- 同じ沈降速度の球体
等体積球体(ヘイウッド径)は、ほとんどの粒子サイズ測定技術で用いられています。理解すべき重要な点は、この方法を不規則3次元の形状粒子の測定に用いる場合、同体積の球体に換算しているため、球体の直径に結果が影響されます。異なる技術を用いて得られた球径分布または平均径は、実際の粒子の、真の直径と比較し、バイアスや偏差が生じてしまいます。このことは、使用した技術の形状感度とサンプル内に存在する異なる粒子の加重効果に由来します。使う技術によって、大きな粒子をより多く測定したり、小さな粒子をより多く測定したりすることがあります。どちらの結果が正しいと言えるのでしょうか。
5. 正確な粒子サイズを測定するための粒子計測方法とは
同一のサンプルを測定したとしても、各々の粒子物性評価技術の性質により、サンプルの「みかた」が異なります。統計学的な表現で言えば、異なる技術は、異なる「重み係数」で粒子を見ていると言えます。離散的な個々の値を合計することで得られた平均値は、測定信号と粒子との関係を表しています。
異なる技術を使用して粒子サイズを計測したとき、その違いが何であるかを議論することが非常に重要です。電子顕微鏡を用いて粒子を測定する場合、粒子のサイズの平均を得るために、個々の粒子の直径を測定して合計し、粒子の数で合計を割ります。レーザー回折・散乱法を用いて粒子サイズを測定する場合、粒子の面積が最も重要であり、多くの粒子の回折・散乱パターンからサイズに関する平均データが同時に得られます。コールター原理(電気的検知帯法)による測定では、個々の粒子の体積を得て、その結果はヘイウッド径としてレポートされます。ここで、直径がそれぞれ1、2、3、および10ミクロンである4つの球状粒子からなるサンプルがあると仮定してみます。様々な粒子サイズ計測技術で得られた平均値を、表1.1と図1.3に示します。
| 方法 | 平均粒径 (µm) |
| 電子顕微鏡検査 | 4 |
| コールター原理 |
6.37 |
| レーザー回折 |
9.74 |
表 1.2. 計測技術の比較
表1.2. から、異なる技術を用いた場合、平均値が全く異なることがあり得るということが分かります。数の平均値と重量の平均値を比較した場合の差は、数の平均に原因があります。つまり、数の平均値は、最も大きな集団の粒子の値を示しているという事実に起因します。重量の平均値の場合では、平均値はサイズが最大の粒子の方に値が向かい、サイズ分布についても同じことが言えます。このことを鑑みると、数の分散と重量の分布が必ずしも合致する必要がないことがわかります。

図1.3. 種々の粒子サイズ計測技術
実際の粒子計測においては、解像度限界または実用性のため、測定された粒子サイズは常に離散チャネル(別名ビン)に分類されます。各チャネルは、特定の粒子サイズの範囲をカバーしており、例えば、機器が100チャネルを有し、チャネル10、11、および12がそれぞれ5、10、および15 μmと表記されている場合、チャネル11 に分類される粒子の直径は7.5 ~ 12.5 μmの範囲になります。測定結果は、連続した分布曲線として表すことが可能ですが、拡大して表せば、結果はヒストグラムになります。このヒストグラムでは、各チャネルは基準値に中心があり、そのヒストグラムの高端と低端がその基準値とそれに隣接するチャネルの基準値の中間にあります。
上記の解析から、結果を比較するためには、異なる技術から得られる分散・分布を同じ土台(すなわち、同じ加重)に変換する必要があります。しかしながら、このような変換は、問題にしている複数の技術がサイズ範囲全体に渡り、感度が同じであるという仮定に基づいています。感度に差がある場合、同様に表示できたとしても、結果は異なったものになっていることに注意してください。例えば、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置では、大きな散乱角で測定が行われた場合、大きな粒子からの散乱強度が実験的なノイズに埋もれ、検出不可能になります。一方、コールターカウンターで大きなアパチャーを使用した場合、小さな粒子からの信号は、はノイズレベルよりも小さく、測定不能となります。どのようなタイプの変換が成されようとも、異なる2つ技術を用いた2つの測定の結果が完全に一致することはありません。なぜなら、2つの技術には異なるバイアスがあり、実験誤差も含めて変換されることを考慮してください。電子顕微鏡による測定において、平均直径に±3%の誤差がある場合、変換後の集団の誤差が3乗、つまり±27%になります。対照的に、±3%の不確定性が集団ベースの測定に存在する場合、サイズの不確定性はたったの±1.5%となります。質量%から容量%またはその逆への変換も頻繁に行われます。この変換では、すべての粒子が同一の密度を有する場合、2つの分散が同一プロファイルを持つことになります。
6. 測定データの解釈
粒子計測では、サイズ分布の統計的データの解釈に混乱をきたすことが多々あります。多くの例で、平均値、中央値、およびいろいろな形式に関する値は、どの分散(体積または数)を観察するかによって、完全に異なります。この場合、以下のような疑問が生じます。「なぜこのようなことが起こるのか」、「どの値が正しいのか」。結果はいずれも正しいとお答えしています。それぞれのデータが所定の計測に最も関連した情報をレポートしています。
一例として、200個のボールベアリング、20個のおはじき石、および2個のゴルフボールがあると仮定してください。計算すれば、総数は222個になります。この場合、集団全体の90%がボールベアリング、9%がおはじき石であり、そしてゴルフボールがたったの1%になります。しかし、集団全体の体積への寄与を知りたい場合、サンプルにある異なる球すべての体積を測定しなければなりません。この場合、ボールベアリングは総体積の25%、おはじき石は25%、そしてゴルフボールは50%を占めることになります(図1.4を参照)。

図1.4. 個数分布 対 体積分布
個数分布グラフを見る場合は、粒子の集団に目が向けられています。一般に、多くの粉末粉砕物は、大きな断片よりも細かいので、グラフが分散の小さい方向にシフトする傾向にあります(図1.5を参照)。

図1.5. 個数分布
体積分布のグラフでは、より大きな粒子は体積変位が大きいため、曲線はより大きいサイズの方に偏ります(図1.6)。

図1.6. 体積分布
コールター法を用いた粒子計測装置 Multisizer 4e
コールター原理は数千ものサンプル種の解析に使用されています。工業分野においては、インク・トナー、研磨剤、フィルタ、金属、半導体、そして電池分野といった産業における様々な材料粒子サンプルの品質管理、工程管理の部門で、材料の均一性、異物の検出などの目的で広く利用されています。ライフサイエンス分野でも細胞サイクルや病理過程における細胞応答、アポトーシス、幹細胞、低温生物学、海洋生物学、生態学等といった、多くの分野の研究において、細胞数と細胞径の変化を計測するのにコールター原理が用いられています。
