

細胞外小胞(EV)の特性評価に超遠心分析法(AUC)を使用する理由
細胞外小胞(EV)は、疾患の診断バイオマーカーとしての大きな可能性を持ち、新規治療法への応用が見込まれることから、注目を集めている研究分野です。しかし、EVに固有の不均一さが、その特性評価を難しいものにしています。
こうした不均一なナノ粒子の純度、粒径分布、形状、カーゴ積載状態などの属性を評価することが重要です。AUCでは1回の実験でこれらのパラメータを測定できるため、特性評価用ツールとして極めて優れた選択肢です。
AUCでEVを解析した場合の利点
AUCでは、サンプルを自然な状態で解析することが可能です。
- 基質やマトリックスとの相互作用がない
- キャリブレーション用標準液が不要
AUCはダイナミックレンジが非常に広く、ペプチドからインタクトなウイルスまであらゆる粒子の特性評価が可能です。測定レンジが広いため、溶液中のさまざまなEVポピュレーションについての詳細な理解や、汚染物質および凝集体の同定が可能となります。
例えば、臍帯由来のEVサンプルには主に4種類の小胞体が含まれており、最も多く含まれている小胞体はサイズが最小(5 S種)のものであることを見出すうえで、AUCは大きな役割を果たしました。
EVの形状を理解する
AUCを使用することで、溶液中に存在する分析対象の形状を理解する手がかりを得ることができます。これにはAUCで測定された拡散係数から算出した摩擦比(f/f0)が用いられます。f/f0は、溶液中の分析物の異方性(または相対的な形状)を表します。
ここでは大部分の粒子の摩擦比は1ですが、これは粒子が球状であることを示しています。f/f0の値が1より大きい場合は、扁平または細長い形状であることを示します。
EVを構成する生体分子の特性評価
AUCを用いてサンプルを複数の波長で測定することによって、EVサンプルの分子量に関する洞察に至る手がかりが得られる可能性があります。多波長AUCは、タンパク質、核酸、脂質、その他の生体分子をその吸収プロファイルに基づいて同定・定量することが可能です。
要約
分析用超遠心機Optima AUCは、EV調製物中に存在する様々なポピュレーションを定量解析によって同定し、内包する分子量と形状に関する重要な洞察を提供します。サンプルの純度についても貴重な情報が得られるため、バッチ間の同等性比較や安定性試験に使用することができます。こうした包括的な特性評価によってEVについての理解を深め、医学、生物学、バイオテクノロジーなど多様な分野においてEVを応用できる可能性を大きく広げることができます。
全ての数値はUltraScan IIIソフトウエアで生成しました。UltraScanを含む他社製解析ソフトウエア製品の分析用超遠心機での使用について、ベックマン・コールターは検証を行っておりません。ベックマン・コールターは、特定の他社製分析ソフトウエアの使用を推奨するものではありません。ベックマン・コールターの分析用超遠心機に適用される保証および性能保証は、他社製ソフトウエアには適用されません。