AUCデータを活用した細胞培養法の最適化
はじめに:既存のAAVの生産方法では、1リットルあたり最大1,013コピーのウイルスゲノム(VG)を得ることができます。ここでは、追加の栄養因子を増殖培地に加える(流加培養プロセス)ことでウイルスベクターの生産効率を20倍高めた、Joshiらの研究をご紹介します。超遠心分析法(Analytical Ultracentrifuge:AUC)のデータは、異なる増殖条件におけるウイルスキャプシドの中空粒子(empty)/完全粒子(full) 比率およびパッケージング効率を評価するために使用されました1) 。
AUCデータによる品質評価
流加培養バイオリアクターによる生産収率の向上
流加培養法は細胞培養液に追加の栄養因子を加えることによって、細胞密度の最大化と細胞1個が生産するウイルスゲノムコピー数の両方を向上する手法です。
AUCデータによりゲノムパッケージング効率(キャプシドのempty/full比率)を解析することができるため、従来法と流加培養法によるウイルス生産効率を比較することができます。
AUCデータによるウイルス粒子パッケージング効率の解析
AUC沈降速度法は、ウイルス粒子のfull/empty 比率を評価できる業界標準の手法です。低密度/標準バイオリアクター(パネル1)と高密度/流加培養バイオリアクター(パネル2)で生産した治療用遺伝子が搭載された生物活性のあるウイルス粒子の割合をAUCの解析データで比較すると、ウイルス粒子の割合が同じであったことが分かります。
AUCデータ解析による流加培養の増殖条件の最適化
遺伝子治療薬を商業規模で安定生産するためには、ウイルス収率を最大化するための培養条件の最適化が不可欠です。流加培養による高密度での細胞増殖は、商業規模での細胞培養の最適化戦略のひとつです。流加培養法で生産したウイルス粒子についてはパッケージング効率とゲノムの完全性が検査されます。AUCによる解析はAAVキャプシドのパッケージング効率を評価できる有用な手段です。
まとめ
このケーススタディでは、ウイルスベクターの生産効率を向上させるために細胞増殖条件を最適化する際、AUCを用いたウイルスベクターのempty/full 比率およびパッケージング効率の評価が重要であることを示しています。
参考文献:
1) This case study illustrates the importance of AUC in optimizing cell growth conditions for maximum efficiency in viral vector production. Ref: Joshi et. al. Mol Ther. Methods Clin Dev. 2019 Feb 16;13:279-289
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