密度勾配超遠心用ロータ
密度勾配超遠心法には、固定角ロータ、垂直ロータ、近垂直ロータ、スウィングロータを用いることができます。大容量での処理が必要な場合は、ゾーナルロータや連続遠心ロータを用いれば、スケールアップが可能です。
ロータのタイプによる違いを見てみましょう。
スウィングロータ
スウィングロータは、停止時は垂直につり下がっているチューブが、遠心中は水平方向に振り出され、ロータ軸に対して90°の角度になります。ロータ内でチューブの向きが物理的に変わるため、勾配は常に遠心力と同じ方向になります。スウィングロータは、ペレッティングやレートゾーナル遠心法 で特に有用で、沈降経路長が長いことから、粒子をサイズと質量で分離する場合に、乱れのないバンド分布が得られます。
ゾーナルロータ
ゾーナルロータは、ロータボディに直接サンプルを入れて遠心します。レートゾーナル法による密度勾配遠心は、スウィングロータを用いる密度勾配遠心の条件と類似しており、密度勾配を作製して、ロータの回転中にサンプルを上から重層します。勾配の向きは変わりません。
固定角ロータ
固定角ロータでは、遠心チューブはロータ軸に対して一定の角度で保持されます。角度はロータによって異なりますが、通常は垂直から20°~35°の範囲です。スウィングロータと比較して、固定角ロータは分離距離が短いため、より短時間で分離できます。固定角ロータは、最も汎用性の高いロータです。レートゾーナル遠心法を実行する場合は、スウィングロータを用いた場合ほどきれいに分離したバンドは得られませんが、遠心時間を短縮できる可能性があります。また、等密度遠心法では、垂直ロータほどの高い分離能と遠心時間の速さはありませんが、垂直ロータとは異なり、固定角ロータでは効果的なペレッティングが可能です。
垂直ロータ
垂直ロータは全てのロータタイプの中で沈降経路長が最も短いため、遠心時間が最も短いのが特長です。等密度遠心法では、垂直ロータを用いた場合に最も分離能が高くなります。チューブスロットは垂直に固定されており、遠心中は遠心力に対して直角になります。ロータの沈降経路長が短く、kファクタが小さいため、粒子の移動距離が短く、遠心時間の短縮につながります。垂直ロータはペレッティングには使用できません。
近垂直ロータ
近垂直ロータは固定角ロータに類似していますが、軸に対する角度は固定角ロータよりかなり小さく、7°~9°の範囲です。この角度があることで、固定角ロータと同じ様にペレットが形成できますが、分離距離と遠心時間は垂直ロータに近いです。垂直ロータよりも近垂直ロータの方が遠心時間が長くなってしまいますが、近垂直ロータでは汚染物質は沈殿するか浮遊するためコンタミを起こしにくいという理由で、垂直ロータより近垂直ロータが選択される場合があります。
| ロータタイプ | 分離距離 | 壁面効果 | 勾配の方向転換 | 遠心時間 |
| スウィングロータ | 最も長い |
なし |
なし |
最も長い |
| 固定角ロータ | 中程度 |
あり |
あり |
スウィングロータより短く、垂直ロータ・近垂直ロータより長い |
| 垂直ロータ | 最も短い |
あり | あり |
最も短い |
| 近垂直ロータ | 短い |
あり | あり |
短い |
勾配の方向転換
勾配は、常に遠心力と同じ方向になります。ただし、固定角ロータ、近垂直ロータ、垂直ロータでは、ロータが停止している時と遠心分離中とで、チューブ内の勾配の方向が変わります。
表面的には、勾配の向きが変わることはデメリットのように見えるかもしれません。ですが、遠心後に向きが変わる際、分離が広がり、バンド同士がさらに離れるため、回収が容易になる可能性があります。

39 mLチューブの場合、高さが幅の3.5 倍です。このチューブを垂直ロータで使用する場合を例として説明します。
バンド間の溶液量は常に同じであるため、遠心後に停止した時点でのバンド間の距離は、3.5倍に拡大します。対照的に、スウィングロータを使用した場合には、ロータ自体の向きが変わるため密度勾配の向きは変わらず、バンド間の距離は遠心分離機に入っていた状態と同じままです。
壁面効果
遠心中、遠心力は回転軸に90°方向に働きますが、回転軸に対するチューブ壁面の角度は、この角度と同じではありません。
粒子は、まずチューブの壁面に沈降します。その壁面を伝って、粒子がチューブ底面に移動していくのが望ましいのですが、必ずしもそうなるわけではなく、底面に移動していく物質の一部が壁面に吸着してしまいます。
- スウィングロータでは、壁面効果はほとんどありません。さらに、遠心チューブが遠心力と同じ方向を向くため勾配は常に遠心力と同じ方向に維持されるため、分離能がより高くなるという利点もあります。
- ゾーナルロータでは、サンプルがロータの外側壁面に沈降しない限り、壁面効果はありません。
- 固定角ロータ、垂直ロータ、および近垂直ロータを使用する場合、壁面効果が生じる可能性があります。
垂直ロータでは、バンドが沈降物や浮遊成分に接触するのを防ぐことはできません。この問題を解決できるのが、近垂直ロータおよび固定角ロータです。これらのロータの分離距離は垂直ロータとほぼ同じですが、角度のある形状のため、ペレットはチューブ全体に分散するのではなく、バンドの下の外側の側面にペレットとして形成されるか、浮遊成分はバンドの上の内側の側面に集まります。
スウィングロータとゾーナルロータは、チューブ壁面との接触を避けたい密度勾配遠心への使用に適しています。
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