コールター原理(1954~1955)

1940年代後半の米国海軍との契約期間中、Wallace H. Coulterは、インピーダンス測定を利用して粒子の数およびサイズを計測する技術を開発しました。この技術は主として、導電性液体中に懸濁された細胞が小さな開口部を通過する際の電気伝導度の変化を測定することにより、血液細胞の数を迅速に計測するために開発されました。現在では、自動セルカウンターの98%以上にこの技術が組み込まれており、コールター原理と呼ばれています。また、この技術は過去の75年間において、数千に及ぶ産業用粒子材料の特性評価にも使用されてきました。コールターカウンターの概略図

この原理を利用した弊社の装置システムは、コールターカウンター装置と呼ばれています。このコールター原理を利用して、薬剤、顔料、フィラー、トナー、食物、研磨剤、火薬、粘土、鉱物、建築資材、塗料、金属、フィルター素材などの多様な試料の分析が行われてきました。この手法を利用することで、電解質溶液に懸濁可能であればあらゆる粒子状物質を測定することができます。通常、測定可能な粒子の直径は0.4 µm以上1,600 µm以下です。この技術を利用したと言及されている資料は、8,000本以上に上ります。

コールターカウンター装置では、壁面に小さな開口部のあるチューブを、粒子を懸濁させた低濃度の電解質溶液を含むビーカーに浸漬させます。開口部のあるチューブの内側と、このチューブの外側とビーカーの内側の間には2つの電極を設置し、電場を加えて電解質により電流路を形成します(図1)。その後、電極間のインピーダンスを測定します。開口部により、「センシングゾーン」と呼ばれる領域が形成されます。電解質溶液に低濃度で懸濁させた粒子をこの開口部に通すことで、これらの粒子の数を計測できます。粒子が開口部を通過すると、粒子の浸漬体積と同等の電解質の体積がセンシングゾーンから移動します。これにより、開口部のインピーダンスが短い期間だけ変化します。この変化は、電圧パルスまたは電流パルスとして測定できます。パルスの高さは、感知された粒子量に比例します。粒子密度が一定であると仮定すると、パルスの高さは粒子の質量にも比例します。この手法は、開口部テクノロジーとも呼ばれています。

カウンターとパルス高アナライザ回路を用いて、開口部を通る粒子の数と体積を測定できます。開口部を通過する液体の体積を正確に制御し測定できれば、試料の濃度を測ることも可能です。パーティクルカウンターおよびサイズ測定装置である、Multisizer™ 3 and 4などの最新のコールターカウンター装置では、パルスはパルス高やパルス幅、タイムスタンプ、パルス面積など各パルスを表す主要なパラメータによりデジタル化され保存されています。これらのパラメータにより、ノイズと実際のパルス、さらに通常のパルスと、粒子が開口部を通過した際にさまざまな理由で生じる歪んだパルスをより適切に区別できます。パルスが時系列順に並べられていれば、保存したパルスを用いて測定期間における試料の変化をモニタリングできます。実際には、多くの場合粒子の体積は、相当する球径により表されます。測定した粒子の体積(またはサイズ)を使用して、粒度分布を求めることができます。

コールターカウンター装置では粒子の個数およびサイズの測定速度は最大10,000個/秒であり、一般的な測定にかかる時間は1分以内です。サイズ測定の精度は1%以上です。一般的な開口部のサイズは20~2000 µmです。それぞれの開口部では、公称直径の2~80%のサイズの粒子を測定できます。このため、全体として0.4~1600 µmのサイズの粒子を測定可能です。ただし、この技術で分析できる粒子は、電解質溶液に適切に懸濁可能なものに限られます。このため、サイズの上限は、砂の場合は500 µmとなりますが、タングステンカーバイド粒子では75 µm程度となります。さらに、サイズの下限は、主に開口部自体で生じる電気ノイズにより制限されます。最適な開口部を選択できるかどうかは、測定対象の粒子に左右されます。測定対象の試料の大部分が30:1の直径サイズ範囲に含まれる粒子で構成されている場合には、最適な開口部を選択できます。たとえば、30 µmの開口部では、直径がおよそ0.6~18 µmの粒子を測定可能です。140 µmの開口部で測定できる粒子は、直径が2.8~84 µmのものです。測定対象の粒子のサイズが、単一の開口部で測定可能なサイズ範囲を超えている場合、2つ以上の開口部を使用する必要があります。全体的な粒度分布は、測定結果を重ね合わせることで得られます。

粒度分布分析の最大分解能

コールター原理による測定では、容器からの液体の抽出時に粒子が開口部を通過すると、粒子の浸漬体積と同等の電解質の体積がセンシングゾーンから移動します。これにより、開口部の抵抗が短い期間だけ変化します。この抵抗の変化は、電圧パルスまたは電流パルスとして測定できます。パルスの数および振幅を測定することで、粒子の個数および各粒子の体積に関する情報が得られます。

測定中に検出したパルスの個数は測定した粒子の個数に相当し、パルスの振幅は粒子の体積に比例します。この測定は単一粒子計測プロセスであるため、あらゆる特性評価技術で達成可能な最高の分解能が得られます。粒子の直径は電圧または電流の測定分解能で測定可能であり、現在の電子技術では非常に精度良く測定することができます。分布幅の測定精度は、単一粒子の精度になります。

このような分解能の高さにはさまざまな利点がありますが、最もはっきりとした利点は、粒度分布の詳細を表示できることです。粒度分布の測定では、表示形式が累積的か示差的かによらず、通常の分布には事前設定されたサイズ範囲のデータ点が数百個含まれます。各データ点はビンと呼ばれます。すべての粒子が測定対象となるため、各ビンは特定のサイズ範囲に含まれる粒子が集まったものになります。分布の広がりに応じて全体のサイズ範囲をより細かい目盛りの合わせて再設定し、分布の詳細を表示することができます(つまり、より狭いサイズ範囲を含むよう各ビンを事前に設定できます)。

他の利点としては、2つの粒子を細かく区別できることや、分布からより正確な統計値を算出できることなどが挙げられます。下図では、弊社のMultisizer 4で測定した試料をさまざまなサイズ範囲で表示しています。右の図ではパルスのデータをより細かなビンに分類し直して、分布の詳細を表示しています。

デジタルパルス処理

コールター原理を用いた計測装置では、粒子が開口部を通過することにより生じた電気抵抗の変化を、高速電子回路を用いて測定します。検出した信号は、毎秒数百万回という速度で瞬時にデジタル信号化されます。このデジタル信号は、すべてのパルスについてパルスパラメータ(測定時刻、パルスの高さや幅など)という形で記録されます。ほとんどの測定では粒子の個数または粒度分布を求める必要があるため、記録したパルス高は較正係数により粒度に変換され、事前設定されたサイズのビンのいずれかに入れられます。粒子の粒度分布および個数は、測定したパルスすべてを累積したものです。記録したパルスパラメータはすべて、全範囲をカバーする標準の粒度分布以外の用途にも使用可能です。これらのパラメータは減算するか、並べ替える(つまり、特定の用途に応じて異なる処理を施す)ことができます。たとえば、分布のあらゆる詳細を示すように粒度分布を拡大する必要がある場合には、より狭いサイズ範囲を選択し、全パルスを並べ替えてより細かなビンに入れることができます。また、パルスの高さ(またはサイズ)を時系列順に並べ替え(サイズ分布の幅が狭いサンプルの場合)、測定中のサンプルの変化をモニタリングすることもできます。他には、パルス高をパルス幅の関数としてプロットし、粒子の形状に関する情報を得ることも可能です。

粒子は、開口部を通過する際に抵抗を生じさせます。粒子が大きいほど高い抵抗が生じ、電圧が大きくなります。電圧のスパイクはそれぞれ、細胞のサイズに正比例しています。今日のヘマトロジーアナライザーはすべて、何らかの形でコールター原理に依存しているのです。

Wallace&Joseph Coulter兄弟

高速自動血球計数器および細胞サイズ測定装置

  最初のコールターカウンターの図 

コールターが1953年に特許出願したモデル 

最初の商業版のコールターカウンター 

最初のコールターカウンターの手書き広告原案 

コールターカウンターモデルF

コールターカウンターモデルF 

人間のものよりも小さく極めて数が多いヤギの赤血球を計数するため、コールターカウンターモデルFを使用した手法が考案されました。25匹のヤギから血液サンプルを採取し、開口部が100 μmおよび70 μmのチューブを用いて細胞数を計測するとともに、各サンプルの一部について目視による計数も行われました。手作業での計数と比較した場合にどちらの開口部の方が結果の精度および再現性が高いかを特定するため、測定値の統計分析を行ったところ、開口部が100 μmのチューブでの計測結果と手作業での計測結果に有意な違いはないことがわかりました。

この技術は、医療業界で血液検査の科学的手法を一変させるほどの商業的な成功を収めました。赤血球、白血球、そして血小板が、血液に含まれる有形成分の大半を占めています。抗凝固処理した人間の全血を等張食塩水で希釈しコールター原理を適用すると、全血を構成するさまざまな細胞の個数とサイズを測定できます。1954年、(Wallaceと弟のJoseph R. Coulterが開発した)コールターカウンターのモデルAの発売に伴い、血液検査にコールター原理が初めて商業的に応用されました。

それから10年以内に、米国の文字通りすべての病院のラボラトリーにコールターカウンターが導入されました。今日のヘマトロジーアナライザーはすべて、何らかの形でコールター原理に依存しているのです。