分析用超遠心システムの基礎
溶液中の高分子特性評価のための分析用超遠心システム (AUC)
AUCは、タンパク質だけでなくそれ以外の物質の分子量や流体力学的および熱力学的な特性を証明するための、最も汎用性が高く、厳密かつ正確 な解析装置です。
AUCの技術開発はほぼ一世紀前に遡ります。AUCは…
- 標準物質を必要とせず、さらに支持体を用いない状態でタンパク質を解析できる唯一無二の技術です。
- 精密で正確な解析ができる技術で、同等の測定範囲におけるタンパク質などの物質の特性解析技術の中では、他に匹敵する解析技術はありません。1
- 溶液中でのタンパク質などの分子量決定のゴールドスタンダードです。2
AUCの基礎:沈降速度法と沈降平衡法の2つの測定法
タンパク質複合体などの巨大分子を解析できる他の技術と比較し、AUCでは 分子が天然の状態で存在している溶液条件のもとで、その分子の特性解析が できます。AUCは、様々な種類の溶媒や、幅広い濃度でのほぼすべての種 類の分子や粒子の解析に利用されてきました。研究者が多くの研究課題を解 決するために、満足した課題解決ができる技術はAUC以外にありません。1
AUCには2つの補完的な手法があり、これらの手法を最適に使い分けること で、溶液中の分子の特性を解析することができます。沈降速度法では、非常 に重要な分子サイズやおおよその形状の流体力学的な情報を得ることができ、 一方、沈降平衡法では、溶液中の分子のモル質量、化学量論、結合定数、溶 液の非理想性に関する情報を得ることができます。
More questions? More answers.
AUCによる実験を1回するだけで、研究者は、以下のような疑問の回答を他の補完的な技術と比べてより多く得ることができます。
- 形状 このタンパク質はどのような形状をしているのか?
- 粒子径 このタンパク質粒子はどれくらいの大きさなのか?
- 分子量 溶液中でのこのタンパク質もしくは複合体の分子量はいくらなのか?
- 化学量論 このタンパク質はどのくらいの数のサブユニットが会合しているのか?
- 純度 サンプル中には他の粒子の混入があるのか?
- 分子の挙動 この溶媒中でこのタンパク質はどのような挙動を取っているのか?
- 異質性 このタンパク質は他の分子と結合しているのか?またどのように複合体が構成されているのか?
- タンパク質の凝集 このタンパク質はまだ研究で使用できるような状態なのか?抗体医薬品の製剤として免疫応答反応が期待できる状態なのか?
- 相互作用 このタンパク質は他のタンパク質と相互作用(解離・会合)しているのか?
- 立体構造 このタンパク質はリガンドと結合することで、立体構造が変化するのか?
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【参考文献】
1 Cole JL, Lary JW, Moody T, et al. Analytical Ultracentrifugation: Sedimentation Velocity and Sedimentation Equilibrium. Methods Cell Biol 2008;84:143–79.
2 Berkowitz S, Philo J. Characterizing Biopharmaceuticals using Analytical Ultracentrifugation. In: Houde D, Berkowitz S, editors. Biophysical Characterization of Proteins in Developing Biopharmaceuticals. Amsterdam: Elsevier; 2015. p. 211-260.
分析用超遠心システムとは?
分析用超遠心システム(Analytical Ultracentrifuge、AUC)とは、分離用超遠心機と同様に遠心力を利用して溶液中のタンパク質などの分子 を沈降させつつ、その分子の沈降の様子を内蔵された光学系の検出システムによりリアルタイムに測定できる解析装置です。 2種類の光学系(紫外可視吸光測定計並びにレイリー干渉計)を駆使して、溶液中でのタンパク質の挙動の正確な測定が可能です。また、AUCで 測定したデータを最先端のソフトウェアで解析することで、包括的な結果が得られます。