分析用超遠心システムとは
分析用超遠心システム(Analytical Ultracentrifuge:AUC)とは、分離用超遠心機と同様に遠心力を利用して溶液中のタンパク質などの分子を沈降させつつ、その分子の沈降の様子を内蔵された光学系の検出システムによりリアルタイムに測定できる解析装置です。
2種類の光学系(紫外可視吸光測定計並びにレイリー干渉計)を駆使して、溶液中でのタンパク質の挙動の正確な測定が可能です。また、AUCで測定したデータを最先端のソフトウエアで解析することで、包括的な結果が得られます。
AUCは、タンパク質だけでなくそれ以外の物質の分子量や流体力学的および熱力学的な特性を証明するための、最も汎用性が高く、厳密かつ正確な解析装置です。
AUCの利点
- サンプル回収が可能
- 非破壊分析
- マトリックスフリー
- 最小限のバッファー制約
- 低濃度での検出
- 少ないサンプル容量(最少量:沈降速度法100 μL、平衡法 25 μL)
- 標準サンプルが不要
- 簡便な操作性
分析用超遠心システムの原理
分析用超遠心システムは、「遠心中に起こるサンプルの沈降の様子を測定することができる装置」です。データは、ロータ内のセル中の各位置での濃度のグラフとして得られます。濃度情報は溶質の光学的吸収または干渉縞の変位として記録されます。試料となる溶液を、上下が光を透過するウィンドウに挟まれたセルに入れ遠心します。回転数と温度を制御しつつ、セルが光学検出器の上を通過するタイミングを合わせて光をあて、セル内の沈降の様子(濃度勾配)を測定します。さらに時間を追ってスキャンを繰り返すことで経時的な沈降の様子(濃度勾配)の変化を記録していきます。
2種類の光学系
- 紫外可視吸光測定計
吸収光学系では光源にキセノンフラッシュランプを使い、回転中のセル(対照セルとサンプルセル)に、ある波長(UVや可視光)の光を照射します。数万回転で回っているセルに対してタイミングを合わせて光を当てます。さらにセルの半径方向(回転の中心側から外側の方向)に沿って、スキャンをして各位置でのサンプルによる吸光度を記録します。
- レイリー干渉計
干渉光学系には光源にレーザーを用い、2つの小さいスリットでレーザー光を分離し、対照となる溶媒側セルとサンプルが含まれる溶液側セルにそれぞれ照射されます。セルを通過した光が作る屈折率の違いから生じる干渉縞(フリンジ)を、高感度CCDカメラで、セル全体の画像としてとらえ、そこから濃度情報を得ることができます。干渉光学系は吸収を持たないサンプルや高濃度溶液のサンプルに対して有効な検出法になります。
2種類の解析法
- 沈降速度法

沈降速度法は、タンパク質などの溶質分子がサンプルセルの底に到達するまでの分子の沈降の様子を経時的に測定する時間依存的な解析方法で、最新のAUCのアプリケーションでは最初に選択される手法です。この沈降の様子から、分子量、形状や分散性などの情報を得ることができます。
分かること:
沈降計数 分子量 形状 均一性 分散性
- 沈降平衡法

沈降平衡法は、タンパク質などの溶質分子がサンプルセルの底に沈降しないような低い遠心力で遠心し、分子を平衡状態に到達させてから測定する非時間依存的な解析方法です。遠心を開始すると、サンプルセル内部の溶質分子は沈降と拡散の2つに力によって移動し、分子の濃度勾配ができます。その後、分子の沈降と拡散がちょうど釣り合ったとき、この濃度勾配は収束し、分子は平衡状態となります(上図の左、赤線の状態)。平衡状態のカーブから、検量線によらない分子量を決定することができます。
分かること:
分子量 分散性 相互作用
製品の詳細やカタログ請求、製品デモも行っております。
ご希望がございましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
バイオ医薬品製造における分析用超遠心システムの活用はこちらをご覧ください。