分析用超遠心システムに使われている光学系
分析用超遠心システムとは?
分析用超遠心システムは、「遠心中に起こるサンプルの沈降現象を覗くことができる装置」です。データは、ローター内のセル中の各位置での濃度のグラフとして得られます。濃度情報は溶質の光学的吸収または干渉縞の変位として記録されます。
試料となる溶液を上下が光を透過するセルに入れ回転させます。回転数と温度を制御しつつ、タイミングを合わせて光をあてます。セル内の濃度勾配を観察します。さらに時間を追ってスキャンを繰り返すことで経時的な濃度勾配の変化を記録していきます。
2つの光学系 吸収Absorbanceと干渉Interference
測定には2種の光学検出系が利用できます。一つは吸収光学系Absorbanceでもう一つは干渉光学系Interferenceです。
吸収光学系では光源にキセノンフラッシュランプを使い、回転中のセル(対照セルとサンプルセル)に、ある波長(UVや可視光)の光を照射します。数万回転で回っているセルに対してタイミングを合わせて光を当てます。さらにセルの半径方向(回転の中心側から外側の方向)に沿って、スキャンをして各位置でのサンプルによる吸光度を記録します。
干渉光学系には光源にレーザーを用い、2つの小さいスリットでレーザー光を分離し、対照となる溶媒側セルとサンプルが含まれる溶液側セルにそれぞれ照射されます。セルを通過した光が作る屈折率の違いから生じる干渉縞(フリンジ)を、高感度CCDカメラで、セル全体の画像としてとらえ、そこから濃度情報を得ることができます。干渉検出系は吸収を持たないサンプルや高濃度溶液のサンプルに対して有効な検出法になります。
どちらの光学系も一定時間間隔で測定を行い、経時的な沈降パターン変化を得ることができるようになっています。
分析用超遠心機によって得られる基本的な測定値は、数秒(沈降速度法)から数時間(沈降平衡法)の間隔で取得される回転半径方向の濃度分布に関するスキャン結果です。ロータが回転し、サンプルセルが光学検出器の光路を通過する際にスキャンが行われます。
分析用超遠心機に用いられている光学系としては、紫外可視吸光測定計とレイリー干渉計があります。
サンプルセルが光学検出器の光路を通過する際にスキャンが行われます。
紫外可視吸光測定計
分析用超遠心機の検出器として最もよく用いられている吸収光学系(ダブルビーム分光光度計)は、使い方が非常に簡単です。吸収光学系の感度の向上により、希薄すぎて干渉光学系では測定できないサンプルも分析が可能になりました。
吸光度のスキャン結果は、基本的に次の3つのステップにより取得されます。
1.選択したセクターが検出器の光路を通過する際に、190~800 nmの波長を利用できる高輝度キセノンフラッシュランプを照射します。
2.ロータの基部にあるマグネットが発する回転の情報に合わせて、サンプルセルと個々のセクターの検出が順に行われます。
3.サンプルの下にあるスリットを移動させることで、回転半径方向の様々な位置からの測定が可能になっています。
レイリー干渉光学系
この技術は、光が屈折率の高い領域を通過する際に速度が低下するという原理を基にしています。分析用超遠心機に用いられる干渉光学系では、ダブルセクターセルの各セクターの下に1つずつある、2つの並行した細いスリットを単色光が通過します。片方のサンプルセルにはサンプル溶液を、もう片方のサンプルセルには透析平衡状態の溶媒サンプルを入れます。
入射スリットから入り2つのセクターを通過した光波は、干渉を起こして明暗が交互に並ぶ「干渉縞(フリンジ)」のバンドを形成します。サンプルセクターの屈折率がリファレンスよりも高い場合、サンプルの光波がリファレンスの光波よりも遅れることになります。これによって縞の位置は、濃度差に比例してリファレンスポイントから垂直方向に移動します。
干渉光学系の分析用超遠心機では、発色団のシグナルを必要としないため、無色の化合物(多糖類や脂質など)の特性も評価することが可能です。屈折率がリファレンスと異なっていれば、事実上どんな物質でも干渉シグナルが生じるからです。
吸収光学系とは異なり、干渉シグナルには確率的ノイズがほとんどありません。しかし、光学部品へのストレスによって屈折率が変化する可能性があるため、干渉光学系では常にサファイアウィンドウを用いる必要があります。また、干渉光学系において正確な結果を得るためには、慎重なアライメントとフォーカス調整が必要ですが、これらを適切に行うことで長期間安定した状態で使用を続けることができます。