血液細胞
血液の約半分は、酸素の輸送や止血に関与し、免疫系の中心的な役割を担う多様な循環細胞によって構成されています。正常な末梢血では、 総細胞数の約95%を赤血球が占めています。これは血小板の約15倍、白血球のおよそ1000倍に相当します1 。正常な血液細胞の寿命は限られており、白血球で数時間から数日、赤血球では約120日とされています。そのため、身体の必要性に応じて絶えず新しい細胞と置き換えらえます。血液中の各細胞型の割合は、感染や運動、薬剤の影響などに反応して自然に変動します。一方で、異常な細胞数の変化や異形成細胞の産生が起こると、貧血や血液がんなどの血液疾患のほか、血友病などの出血性疾患や、血栓を伴う凝固異常症がみられることがあります。
造血
すべての血液細胞は、「造血」として知られるプロセスによって、造血幹細胞（HSC）から分化・形成されます。HSCは分裂を繰り返す過程で、段階的に系列が決定していきます。系列決定の初期段階の1つでは、骨髄系とリンパ系という、造血前駆細胞（HPC）の2つの主要系統のどちらに分化するかが決定されます2。 骨髄性HPCは、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球、血小板になります。リンパ系HPC由来の細胞には、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、自然リンパ系細胞が含まれ。樹状細胞はどちらの系統からも形成されます3。
造血は、膨大な細胞産生量（1日に産生される血液細胞はおよそ1011-1012個）を維持しながら、生理的な需要に応じて循環中の各細胞型の数を適切に調整する必要があります。このバランスは、増殖因子やコロニー刺激因子をはじめ、HSCの分化に伴う細胞運命を決定する造血微小環境内の様々な要因によって、精密に制御されていると考えられています4。
参考文献
1. MedicineNet. Medical Definition of Complete blood count (March 29,2021). https://www.medicinenet.com/complete_blood_count/definition.htm Accessed January 25,2022
2. Kondo M. (2010) Lymphoid and myeloid lineage commitment in multipotent hematopoietic progenitors. Immunol Rev. 238(1):37-46. doi: 10.1111/j.1600-065X.2010.00963.x.
3. Wu L, Liu,Y-J (2007) Development of Dendritic-Cell Lineages. Immunity 26(6):741-750 doi:10.1016/j.immuni.2007.06.006
4. Dygai AM, Zhdanov VV (2014) Mechanisms of Hematopoiesis Control. In: Theory of Hematopoiesis Control. SpringerBriefs in Cell Biology, vol 5. Springer, Cham. doi:10.1007/978-3-319-08584-5_1
