GMPに準拠した製薬用水のリリース試験
医薬品の製造には、様々な原料が必要となります。バイオ医薬品/医薬品の製造においておそらく最も多く使用されている原料は水です。製薬用水の品質は、精製水(PW)および注射用水(WFI)に関する管理項目や管理基準について国際調和をはかり、各国の薬局方で規定されております。
各国の薬局方では、PWおよびWFIに関して、以下の4つの重要な品質項目のに基準を満たすよう求められています。
- 全有機体炭素(TOC)
- 導電率
- 導電率は、微生物を制御するために飲用水に添加される塩素など、処理後の水に残る可能性のある無機残留物の指標です。
- ベックマン・コールターのPAT700は、水処理施設においてTOCおよび導電率の両方をオンラインで測定できます。(注)PAT700は、2019年6月28日に、変更された第十七改正日本薬局法第二追補一般試験法「2.51導電率測定法」にある純水測定時の二重温度補償には対応しておりません。
- 微生物のコンタミネーション
- 微生物を完全に排除することはほぼ不可能であるため、微生物が水処理システム内で増殖するのを防ぐことが目標となります。TOCの測定値は微生物数の測定ではなく、微生物の餌となりうる水中有機物質の測定です。目標とするのは、有機物質の量を低く保ち、微生物の増殖を抑えることです。
- 微生物の増殖を抑制するための水の滅菌法として一般的なのは、熱およびオゾンを用いた方法です。国際製薬技術協会(ISPE)が発行しているOzone Sanitization of Pharmaceutical Water Systemsの手引きには、水処理システムにおける微生物数をコントロールするためのオゾンの使用に関する指針が記載されています1。
- 水中エンドトキシン
- エンドトキシンは、微生物の細胞壁に含まれている物質です。PWおよびWFI製造の原水として用いられる飲料用水中には、微生物が存在します。この水を滅菌するためにろ過すると、微生物はフィルタを通過する際にせん断され死滅します。しかし、エンドトキシンを含む微生物の細胞壁の一部は、フィルタを通過して水処理システムに侵入します。
- 医薬品とともにエンドトキシンが注射されると、患者さんに危険が及ぶ可能性があります。免疫機能が低下している患者さんに医薬品が投与されることも多いため、健康に害する可能性もあります。患者さんの安全を確保するために、医薬品製造に使用する精製水からエンドトキシンを確実に除去できるよう厳密にコントロールする必要があります。
バイオ医薬品/医薬品製造では2種類の水が使用されています。
- 精製水 (PW)
- 精製水は、飲料用水にさまざまなろ過および処理を段階的に行うことで製造されます。バイオ医薬品の製造だけでなく、化学合成によって製造される低分子医薬品の製造においても、注射剤、粉剤または錠剤の製造過程で用いられます。精製水を医薬品製造に用いるには、上に示した4つの重要な品質パラメータについて基準を満たさなければなりません。
- PW製造に関する薬局方の要件は以下のとおりです。
- イオンおよび有機化合物に基づいた純度の要件を満たし、微生物汚染から保護されていること
- 原水を、脱イオン化、蒸留、逆浸透、またはその他の適切な精製プロセスで処理していること
- 飲料用水の水質に季節変動による影響があっても、信頼性/一貫性をもって適切な品質の水を製造できるよう、精製水製造システムがバリデーションされていること
- 常温条件下で運用されているシステムの場合は、モニタリングおよび頻回の滅菌処理を行うことで微生物量をコントロールすること
- 注射用水 (WFI) –
- 注射用水は、精製水にさらに追加の処理を行って精製したものです。すべての生物由来医薬品に加え、化学合成によって作られる低分子医薬品のうち、注射によって投与される製剤に使用されます。注射によって体内に投与されるバイオ医薬品は、身体が備えている防御機構をバイパスして直接血流または組織に到達するため、特に高いレベルの清浄度が必要とされます。
- 最終製剤に微生物のコンタミネーションが生じないよう、注射用シリンジに充てんする際には、0.2 µmのフィルタに製剤を通過させ、混入したあらゆる微生物を再度除去することで純度を確保します。また、空気や製造スタッフから汚染を受ける可能性を低減するために、注射剤はクリーンルーム環境で製造します。
- WFI製造に関する薬局方の要件は以下のとおりです。
- WFIは、精製水のすべての要件に加え、水中に存在が認められることの多い細菌性エンドトキシンに関する仕様を満たすこと
- 医薬品製造のために現場で作製されるWFIに対しては、有機体炭素(TOC)および水導電率の試験を適用すること
- USP <1231>の定めるWFIの基準(10 cfu/100 mL)を超えた場合には、使用に適さないものとする
- 導電率およびTOCの試験をオンラインで実施することにより、コンタミネーションリスクを回避できるうえ、すぐに解析結果を得ることができ、リアルタイムでコントロール/介入を行うことが可能になる
参考文献
- Good Practice Guide: Ozone Sanitization of Pharmaceutical Water Systems, ISPE. July, 2012. https://ispe.org/publications/guidance-documents/ozone-sanitization-pharmaceutical-water-systems
Water Release Testing Products

ANATEL PAT 700
精製水/注射用水の全有機炭素および導電率のオンラインモニタリングに関する薬局方の要件の準拠に役立つよう、特化した設計