CD34陽性細胞数測定の国際ガイドライン

AQUIOS STEMシステム -CD34陽性造血幹細胞とその前駆細胞数の測定に関する国際ガイドラインへの対応

Dr. Andreas Böhmler

幹細胞などのレアイベント計測は、施設間、および施設内の正確性と精密性(再現性)が問題となる可能性があるため、CD34陽性造血幹細胞とその前駆細胞の測定は、クリニカルフローサイトメトリー検査の中で厳しい規定がある検査の一つです。ここでは、一般的に用いられる4つの国際ガイドラインおよび標準法が規定するCD34陽性細胞数測定の重要項目と技術的詳細をまとめ、AQUIOS STEMシステムを用いたCD34陽性細胞数測定が、このような要件にどう対応し検査室の認定を支援するかを説明します。

 

各種ガイドライン

ISHAGEガイドライン Ph. Eur.(英語) FACT - JACIE(英語) NetCord - FACT(英語)

動員末梢血幹細胞とその前駆細胞(PBSC)移植の増加を背景に、1996年、Sutherland et al.は、正確で施設間精度の高い、簡便かつ高感度なメソッドを提供することを目的に、国際血液療法・移植学会(ISHAGE)と協働で、CD34陽性細胞測定の基準を示しました。その結果、策定されたISHAGEガイドラインは、すぐにフローサイトメトリーを用いた造血幹細胞およびその前駆細胞のCD34陽性細胞測定のゴールドスタンダードとなりました1

1998年、Keeney et al.により、1996年のガイドラインに、ビーズによる絶対数測定の導入、死細胞を除外するための死細胞検出用試薬7-ADDと固定剤を含まない溶血試薬を追加した改訂版が公表されました2。この改定により、基本プロトコルはシングルプラットフォーム化されました。この「死細胞検出用試薬を使用したシングルプラットフォームのISHAGEガイドライン」は、20年以上たった今なお、ほぼ変更されないままとなっています。国際的規制機関、国家規制機関、地方規制機関の多くが、CD34陽性細胞測定に関して、ISHAGEプロトコルの重要項目と技術的詳細を採用しています。欧州連合(EU)における医薬品の品質管理のための唯一の参考文献である欧州薬局方(Ph. Eur.)もその一つです3。 ISHAGEガイドラインとは異なり、欧州薬局方の基準は、欧州代表者会議が Convention on the Elaboration of a European Pharmacopoeia に従って採択した薬事法であり、EU加盟国に対して法的拘束力を持ちます。

幹細胞前駆細胞移植の基準は、細胞治療に関する国際認定機関(Foundation for the Accreditation of Cellular Therapy:FACT)、 国際細胞・遺伝子治療学会(ISCT)と欧州血液骨髄移植学会(EBMT)の合同認定委員会(Joint Accreditation Committee of ISCT and EBMT、the European Society for Blood and Marrow Transplantation:JACIE4)より公表されています。さらにNetCord-FACTが策定した基準は、臍帯血由来の造血幹細胞前駆細胞の使用に関するガイドラインを定めています5

 

AQUIOS STEMシステム

AQUIOS STEMシステムは、AQUIOS STEMソフトウエア、AQUIOS全自動クリニカルサイトメーター*、AQUIOS STEM試薬キット、AQUIOS STEM CD34コントロール細胞、Flow-Check Fluorospheresで構成されており(Table 1)、Table 2 「System Parameters」に示す様々な検体種のCD34陽性およびCD45陽性細胞の計測が行えます。

AQUIOS STEMシステムは、自家移植または同種造血幹細胞移植の準備段階の患者、あるいは自家移植または同種造血幹細胞移植のための造血幹細胞の動員あるいは採取を行うドナーにおいて、Table 2に示す細胞ポピュレーションの検出および測定に使用する定量的アッセイです。適用可能な検体種および抗凝固剤の詳細はTable 2をご覧ください。

Table 1. AQUIOS STEMシステムの構成品

装置 概要
AQUIOS全自動クリニカル
フローサイトメーター*
AQUIOS全自動クリニカルフローサイトメーター
ソフトウエア
AQUIOS STEMソフトウエア CD34陽性細胞計測のための自動ゲーティングアルゴリズムを備えたAQUIOS CL用ソフトウエアです。AQUIOS STEMソフトウエアQCモジュールで、ベックマン・コールターの施設間品質保証プログラムであるeIQAPにアクセスできます。ここから、ラボの精度管理データとピアグループによる比較レポートが入手できす。
試薬
AQUIOS STEM試薬キット、
50テスト
AQUIOS STEM試薬キットは、CD45-FITC/CD34-PEマウスモノクローナル抗体試薬、ネガティブコントロール(CD45-FITC/CD34-CTRL)、絶対数計測試薬(AQUIOS STEM-Count Fluorospheres)、死細胞検出用試薬(7-AAD)、溶血試薬(AQUIOS STEM Lysing Solution)で構成されます。
コントロール細胞、2レベル、
各15テスト
AQUIOS STEM CD34コントロール細胞は安定化したヒト白血球コントロール検体で、AQUIOS STEMシステムで、CD34およびCD45パラメータの検証に使用します。各キットには、CD34陽性細胞数が約10細胞/µL(レベル1)と30細胞/µL(レベル2)の2つの異なる濃度レベルのCD34が入っています。
Flow-Check Fluorospheres,
3x10 mL
Flow-Check Fluorospheresは蛍光ビーズの懸濁液で、機器の光学および流路の確認に使用します。

Table 2. AQUIOS STEMシステムパラメータ

検体種 抗凝固剤 キット/パラメータ
K2EDTA K3EDTA ヘパリン ヘパリン
ACD-A
混合液
ACD-A CPD AQUIOS Stem
試薬キット
全血(WB) X X X       CD34 パーセント
CD34 絶対数
CD45 絶対数
動員全血(MB) X X X      
非凍結または
融解骨髄(MB)
X X X X    
非凍結または
融解検体種(AP)
      X X  
非凍結または
融解臍帯血(CB)
        X X

本製品速報では、上述したガイドラインに規定されるCD34陽性細胞測定の要件をまとめ、検査室の認定を支援するため、AQUIOS STEMシステムがこのような要件にどう対応しているかを説明しています。本文書中で取り上げたカテゴリや要件は全てを網羅したものではなく、CD34陽性細胞測定手順の技術的側面に焦点を当てたものになっています。一般の検査室や施設に適用されるガイドラインおよび基準のその他の側面や、精度管理要件については考察していません。

 

CD34陽性造血幹細胞とその前駆細胞解析の国際ガイドラインおよび基準

お客様の研究室に適用される全ての注意義務標準に適合するよう、本製品速報の「References」に示したガイドラインおよび基準、ならびに、適用される地方条例、国内法令、国際法令の全文をご確認ください。

 

References

  1. Sutherland DR, Anderson L, Keeney M, Nayar R, Chin-Yee I: The ISHAGE guidelines for CD34+ cell determination by flow cytometry. International Society of Hematotherapy and Graft Engineering. J Hematother. 1996 Jun;5(3):213-26.
  2. Keeney M, Chin-Yee I, Weir K, Popma J, Nayar R, Sutherland DR: Single platform flow cytometric absolute CD34+ cell counts based on the ISHAGE guidelines. International Society of Hematotherapy and Graft Engineering. Cytometry. 1998 Apr 15;34(2):61-70.
  3. EDQM Council of Europe: European Pharmacopoeia (Ph. Eur.). 10th Edition 2019-2022. Website: https://pheur.edqm.eu/home
  4. Foundation for the Accreditation of Cellular Therapy (FACT), Joint Accreditation Committee – ISCT and EBMT (JACIE): International standards for hematopoietic cellular therapy product collection, processing, and administration. 8th Edition, Version 8.1, 2021. Website: http://www.factwebsite.org/
  5. Foundation for the Accreditation of Cellular Therapy (FACT): NetCord-FACT international standards for cord blood collection, banking, and release for administration. 7th Edition, 2019. Website: http://www.factwebsite.org/
  6. Whitby A, Whitby L, Fletcher M, Reilly JT, Sutherland DR, Keeney M, Barnett D: ISHAGE protocol: are we doing it correctly? Cytometry B Clin Cytom. 2012 Jan;82B:9-17.

 

AQUIOS STEM試薬は研究用試薬です。

*届出番号:13B3X00190000048
 販売名:AQUIOS全自動クリニカルフローサイトメーター
 一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器

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