AQUIOS STEM vs Stem-Kit ワークフロー比較
AQUIOS STEMシステムとFC500*による Stem-Kitのワークフローの比較
Authors: Andreas Böhmler, Maja Diemel
Affiliation: Beckman Coulter Germany, Krefeld
このページでは、次の2点についてご紹介します。
- AQUIOS STEMシステムと、フローサイトメーターFC500による Stem-Kitの違い
- AQUIOS STEMシステムの優れた特長
目的
現在、血液がん等のの治療を目的とした造血幹細胞およびその前駆細胞の移植が、世界中で年間9万例以上行われています。
臨床検査室では、時間と人手のかかるユーザー定義による検証をしなくて済むように、CD34陽性細胞計測に市販の試薬キットを使用しています。試薬キットとソフトウエアパッケージのほとんどが、1996年および1998年のISHAGEガイドラインに対応して開発されたもので、その後アップデートされていないため、診断検査を実施する検査室で年々大きくなる、自動化をはじめとする需要が満たされていません。検査室では、持ち込まれる造血前駆細胞(HPC)サンプルの多くが早急な対応を要する緊急処理(STAT)サンプルであり、ルーチンのワークフローは中断せざるを得ません。中断することにより、これらのサンプルが問題を発生した場合、二度手間になり、人的ミスが増える原因となります。CD34陽性 HPCの解析は緊急を要するため、こうした検査室では、HPCサンプルを、通常のルーチンワークフローに組み入れるのが望ましく、サンプリングミスなどのリスクが最小限になるような方法で組み入れることが理想的です。
このケーススタディでは、CD34陽性細胞の自動計測のために新たに開発されたAQUIOS STEMとフローサイトメーターFC500*(ともにベックマン・コールター社製)を用いて、処理時間、手作業時間、検体や結果の整合性に影響を及ぼす可能性のあるミスが起こりやすい工程数を比較しました。
フローサイトメトリーを用いた従来のワークフローの概要
ベックマン・コールター社製のフローサイトメーターFC500用のStem-Kitを含め、フローサイトメトリーを用いるCD34陽性細胞計測ソリューションの多くが、サンプル調製、ワークリストの作成、データレビュー、数値データの集計を手作業で行う必要があります。そのため、ワークフローの処理時間は長く、手作業は増えることになり、さらに熟練のオペレータによる操作が必要でした。
CD34陽性細胞計測をFC500とStem-kitを用いる既存の方法で行うには、オペレータは、装置のアライメントの確認、コントロールの調製後、蛍光の漏れ込みの検証と補正(コンペンセーション)、プロセスコントロールの調製と実行、最終段階である実際の患者やドナーのサンプルの調製と測定を、全て手作業で行わなければなりません。そのうえ、結果として得られたデータを検証し、マニュアルでラボ情報システム(LIS)に送信する必要があります。試薬および精度管理(QC)のログブックは、通常、手書きで記録します。Figure 1は、フローサイトメトリーのマニュアルワークフローの典型的な例です。
Figure 1. フローサイトメトリーのマニュアルワークフローの典型的な例
AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーター**を用いたワークフローの概要
AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーターは、検査結果を得るまでのサンプル調製の大部分を自動で行い、手作業によるサンプル調製工程の多くを排除した自動化システムです。
AQUIOSでCD34陽性細胞計測を行うためのAQUIOS STEMシステムでは、オペレータがシステムに試薬を最初にセッティングし、装置の起動、Flow Check and QC samplesを実行するだけで、その日はいつでも患者の検体を解析できる状態になります。
Figure 2. AQUIOS 全自動クリニカルフローサイトメーターを用いたワークフローの典型的な例
プロトコルの比較
本ケーススタディの目的は、CD34陽性細胞計測のためのAQUIOSフローサイトメーターを評価することと、ベックマン・コールター社製FC500およびStem-Kitを用いる既存の方法とのワークフローを比較することです。本ケーススタディでは、下記のワークフローパラメータの評価を行います。
- 処理時間ー既存法では、最初のサンプル調製から、検査結果が得られるまでの時間を指します。AQUIOS STEMシステムでは、オートローダーにサンプルを設置してから、表示されている最後のサンプルの検査結果が得られるまでの時間です。いずれも、QCにかかる時間は含めません。
- オペレータの作業時間ーメーカーの使用説明書に記載されている検査手順のステップを手作業で実施するのに必要な時間です。
注:タイムポイントは、サンプル調製と解析プロセスを録画して取得し、社内ワークフロー解析ソフトウエアでモデル化しました。
サンプルの処理時間とオペレータの作業時間
ここに示すテストケースは、1サンプル、もしくは10サンプルのバッチの動員末梢血を用い、デュプリケート染色およびネガティブコントロールのサンプル処理を行いました。AQUIOS STEMシステムをStem-KitとFC500を使用する既存の方法と直接比較しました。デュプリケートでの測定とネガティブコントロールで構成される検査時間のデータを示します。
1検体のサンプルでは、サンプル調製から結果が得られるまでの時間に大きな違いを認めませんでした(既存の方法:56分19秒、 AQUIOS:53分54秒、Figure 3A左)。
一方、オペレータによる作業時間は、既存の方法:6分23秒、 AQUIOS:0分20秒と、95%削減することができました(Figure 3A右)。
10サンプルのバッチ(中規模の幹細胞移植センターにおける一日の平均的な取扱量)では、より顕著な差が認められました。サンプル調製から結果が得られるまでの時間は、既存法で2時間30分04秒かかったところ、AQUIOSでは1時間56分54秒に短縮されました(Figure 3B左)。オペレータの作業時間は、既存法では55分44秒でしたが、 AQUIOS STEMシステムでは3分20秒に短縮されました(Figure 3B右)。
手作業の工程では、最初のサンプルのインキュベーションタイム中に次のサンプルをピペッティングするなど、並行して実行できるステップがあるため、10サンプルの総所要時間は1サンプルにかかった時間を10倍した時間よりも短くなっています。
Figure 3. (A) CD34陽性細胞1サンプル、(B) CD34陽性細胞10サンプルを、FC500およびStem-Kitを使用して処理した場合(既存法:灰色のバー)とAQUIOS STEMシステム(赤色のバー)で処理した場合の処理時間とオペレータの作業時間
稼働日に毎日10サンプルを1年間処理すると仮定した場合、AQUIOS STEMシステムでは、検査技師の貴重な時間を毎年100時間節約することができます。また、1日の平均取扱量である10サンプルの処理で、より速く結果が得られることから、陽性細胞計測等のスピードが求められるアッセイを支援できます。
精度管理(QC)における処理時間とオペレータの作業時間
規制環境下では、システム性能は装置設定や実行予定の検査が、適切な精度・プロセス管理によって制御されていなければなりません。Stem-Kit とFC500を使用する既存法とAQUIOSのいずれも、アッセイ済の蛍光粒子(蛍光マイクロスフィア)懸濁液であるFlow-Check Fluorospheresを使って、フローサイトメーターの光学調整と流体工学システムの検証を毎日行いました。目的の解析パラメータを検証するためのプロセス管理として、既存法では、正常血液サンプルに添加した凍結乾燥CD34陽性細胞を使用し、AQUIOS STEMシステムでは、ヒト全血検体の典型的な特徴である溶血、散乱光、抗体発現および抗体染色性を有する安定化したヒト白血球(リンパ球、単球、顆粒球)および赤血球の浮遊液(AQUIOS STEM CD34 Control Cells)を使用しています。
CD34陽性細胞計測にかかるQC手順に必要であった時間の合計は、既存法で2時間02分22秒であったのが、AQUIOSシステムでは1時間09分44秒に短縮されました。QCは患者やドナーのサンプルの測定前に必ず行わなければならないため、1日当たり52分38秒の時間が節約できることは、注目に値します(Figure 4A、左)。稼働日が5日間の週の場合、QC手順だけでも節約できる時間の合計は約4.5時間にもなります(Figure 4B、左)。
QC手順にかかるオペレータの作業時間については、既存法で 1日当たり12分22秒かかっていたところがAQUIOS では1分51秒に短縮され(Figure 4A、右)、QC手順にかかる1週間当たりの節約時間は、合計で52分にのぼりました(Figure 4B右)。
Figure 4. FC500とStem-Kitを用いる方法(既存法、灰色のバー)と、AQUIOS STEMシステム (AQUIOS赤色のバー)の精度管理(QC)手順にかかる処理時間とオペレータの作業時間:(A)稼働日1日当たり、(B)稼働日が5日間の週当たり
まとめ
全ケースのシナリオにおいて、AQUIOS STEMシステムで必要作業時間は、既存法より大幅に少ない結果となりました。5稼働日の週に1日10サンプルの処理を行う典型的な週で、AQUIOS STEMシステムを使用した場合、手作業が約6時間削減するため、検査室は人員をより効率的に配置することが可能になります。さらに、AQUIOS STEMシステムでは、サンプル調製から患者検体による検査結果が出るまでにかかる全体の処理時間が短縮できます。これはCD34陽性細胞測定などのスピードが重視される検査において不可欠な要素です。
AQUIOS STEMシステムは、陽性造血幹細胞とその前駆細胞を「洗浄なし」のサンプル調製プロセスで測定するための定量自動化ソリューションです。このシステムは検体のアプライから検査結果の出力までを手作業無しで処理する自動解析装置として設計されているため、「ロード&ゴー フローサイトメーター」と呼ばれます。この自動化機能が、AQUIOS STEMシステムを、多くのプロセスを手作業で行う必要のある既存法と差別化しています。AQUIOS STEMシステムのオールインワンアプローチで、検査室の時間の削減とワークフローの効率化をお手伝いします。
*届出番号:13B3X00190000018
販売名:サイトミクスFC500シリーズ
一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器)
**届出番号:13B3X00190000048
販売名:AQUIOS全自動クリニカルフローサイトメーター
一般医療機器(特定保守管理医療機器、設置管理医療機器)