環境性疾患
環境性疾患とは、不健康な環境や有害な環境要因に直接起因する疾患です。こうした要因には、有毒化学物質や放射線への曝露、大気汚染や水質汚染、ならびに衛生設備が不十分な環境が含まれます。
世界保健機関(WHO)が2016年に発表した報告書1によると、不健康な環境下での生活や労働が原因で死亡する人は毎年1200万人を超えると推定されており、その主な要因として、大気汚染が挙げられています。
環境性疾患の種類
これまでの報告では、100種類以上の疾病や傷害が、環境要因に起因すると指摘されています1。これらの疾患や傷害は一般に以下のように分類されます。
- 感染症および寄生虫疾患
- 新生児疾患および栄養不良関連疾患
- 不慮の外傷
- 故意の外傷
- 非感染性疾患(NCD)
NCDs(特に心臓病、がん、慢性呼吸器疾患)は環境性疾患の代表的なものの一つであり、主要な死因の一つとなっています。
心臓病
心臓病は、心臓の構造に影響を及ぼす疾患の総称です。いくつかの種類があり、代表的なものとして以下が挙げられます。
- 冠動脈疾患および血管疾患
- 不整脈
- 構造的心疾患
- 心不全
心臓病の原因としては、生活習慣要因(食生活や運動不足など)や基礎疾患(高血圧や高コレステロール血症など)がよく知られていますが、環境要因も原因となります。屋内や屋外の大気汚染、間接喫煙、職場や家庭で使用される化学物質はすべて、心臓病の原因となります。
がん
がんは、異常な細胞集団が増殖・分裂し、全身に広がる疾患で、放射線(太陽からの紫外線など)、アルコール、タバコの煙、食品に含まれる化学物質、大気汚染などの環境要因や有害因子によって引き起こされます。
以下を含め多くの物質が、人間の健康に影響を与える可能性の高い発がん物質です。
- ベンゼン(原油に含まれる天然成分で、白血病の原因として知られている物質。)
- ラドン(天然の放射性ガス。肺がんとの関連が指摘されている物質。)
- すす(木材やプラスチックなどの炭素含有物質の燃焼によって生じる副産物。皮膚がん、肺がん、食道がん、膀胱がんとの関連が指摘されている物質。)
- アスベスト(断熱材や自動車用ブレーキなどに使用されてきた繊維状の耐熱材料。中皮腫、肺および喉頭がんにとの関連が指摘されている物質。)
慢性呼吸器疾患
慢性呼吸器疾患(CRD)は、気道や肺のさまざまな部位に影響を及ぼす疾患です。代表的な肺疾患には、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺がんがあります。
呼吸器疾患の原因として最も一般的な環境要因は、喫煙、屋内および屋外の大気汚染、アレルゲン、ならびに職業上曝露される有害因子があります。
健康的な環境の維持
環境が原因で生じる健康問題や疾患を減らすには、国際的な連携による取り組みが必要です。全世界で死者の20%以上が環境要因に関連しているという現状1において、やるべきことはたくさんあります。
各国政府は、環境の改善と最終的な疾患予防を目的として、ターゲットを絞った戦略や具体的な介入策の実行を続けています。この介入策には、以下のようなものがあります。
- 低炭素エネルギー技術へのアクセスの拡大
- 調理における固形燃料への依存削減
- 禁煙法の制定
- 水の供給と水質の改善、ならびに衛生施設へのアクセス向上
- アスベストの使用禁止
- 職場における発がん性物質の段階的排除
参考文献
- Prüss-Üstün, Annette, Jennyfer Wolf, Carlos Corvalán, Robert Bos, and Maria Neira. Preventing disease through healthy environments: a global assessment of the burden of disease from environmental risks. World Health Organization, 2016.